12星座全体の運勢

「飛び地へとアクセスしていくこと」

6月21日には372年ぶりの夏至の日食(新月)がありましたが、7月22日からの「大暑」に前後する7月21日にはそれに続き蟹座での2度目の新月を迎えます。

今回の新月は「取り込まれるべき大きな物語」がテーマだった前回の新月に対するフォローアップ的な位置づけにあり、この一カ月のあいだに土星が山羊座へ戻り“試練や課題”が明確になってきた状況において、改めてこれからその中で生きていきたい世界や価値観を選びなおしていく軌道修正のタイミングなのだと言えるでしょう。

その際、意識していきたいのが「直感に従って選ぶ」ということ。もしいまあなたの前に二つないし複数の選択肢があるなら、以前の自分であれば無意識的にこっちを選んでいたなという“自分が逃げ込みがちな”選択肢(しかし長い目で見れば破綻が明らかな)ではなく、一見奇妙に見えたり、これまでの現実の延長線上から外れたところに現れた“飛び地”的な(したがってほとんど孤立した)特異点、すなわち未知の領野へアクセスするような選択肢を選んでいきたいところです。

牡牛座(おうし座)

今期のおうし座のキーワードは、「世界の優しい無関心」。

牡牛座のイラスト
「きょう、ママンが死んだ」という一文から始まるカミュの『異邦人』では、保険会社に勤める平凡なサラリーマンである主人公ムルソーが、母の死後に友人の女性関係のいざこざに巻き込まれ、殺意のなかった人物をたまたま殺してしまう。

そして裁判の最後で殺人の動機を訊かれたムルソーは、「太陽が眩しかったから」という有名なセリフを吐く訳ですが、ここでは彼は徹底的に受け身の人物として描かれています。つまり、社会や世界に能動的に関わることに何の意味も見出せない、とめどない虚無感のかたまりとして。

けれどムルソーはその後、相変わらず社会道徳に無関心なまま、かと言って神に頼る訳でもなく、自分ひとりの力で死の恐怖を克服し、「世界の優しい無関心」に心を開くことで、ついにみずからの「幸福」を確認します。

ここにおいて、意味のない人生を意味のないまま引き受けることにした主人公の不条理は、ひとつの出発点となり、主人公の人生はどこにたどり着くかは分からないけど、とりあえず先に向かって走り出した「異邦人」のそれとなったのです。

そして、こうしたたぐいの疾走感こそ、今のおうし座に必要なものなのではないでしょうか。つまり、ついそこに捕らえられ、取り込まれがちな自意識の外へと走りだすこと。つながっているから優しいのではなく、つながっていないからこそ優しい。そういう種類の優しさを、みずから選んでいくこと。


出典:アルベール・カミュ、窪田啓作訳『異邦人』(新潮文庫)
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<プロフィール>
慶大哲学科卒。学生時代にユング心理学、新プラトン主義思想に出会い、2009年より占星術家として活動。現在はサビアンなど詩的占星術に関心がある。
文/SUGAR イラスト/チヤキ