12星座全体の運勢

「飛び地へとアクセスしていくこと」

6月21日には372年ぶりの夏至の日食(新月)がありましたが、7月22日からの「大暑」に前後する7月21日にはそれに続き蟹座での2度目の新月を迎えます。

今回の新月は「取り込まれるべき大きな物語」がテーマだった前回の新月に対するフォローアップ的な位置づけにあり、この一カ月のあいだに土星が山羊座へ戻り“試練や課題”が明確になってきた状況において、改めてこれからその中で生きていきたい世界や価値観を選びなおしていく軌道修正のタイミングなのだと言えるでしょう。

その際、意識していきたいのが「直感に従って選ぶ」ということ。もしいまあなたの前に二つないし複数の選択肢があるなら、以前の自分であれば無意識的にこっちを選んでいたなという“自分が逃げ込みがちな”選択肢(しかし長い目で見れば破綻が明らかな)ではなく、一見奇妙に見えたり、これまでの現実の延長線上から外れたところに現れた“飛び地”的な(したがってほとんど孤立した)特異点、すなわち未知の領野へアクセスするような選択肢を選んでいきたいところです。

獅子座(しし座)

今期のしし座のキーワードは、「魔法の秘密」。

獅子座のイラスト
言いしれぬ恐怖がひたひたと心の平衡を侵していく感覚というのは、いったん感じ始めるとなかなかそれを食い止めるのに難儀するものですが、『何かが道をやってくる』という小説の主人公で、13歳になったばかりの二人の少年ウィルとジムにとってのそれは、ある日町にやってきたサーカス一座でした。

日本でも大正末期から昭和初期には、サーカスというと「人さらいの話」がイメージされていました(もちろん現在ではそんなことはありません)が、そんなどこか怪しげで魔術的な古き良きサーカスのイメージを引き継いだ邪悪なサーカス団「クガー・アンド・ダーク魔術団」の<刺青男>は、彼らを奇形人間に改造してサーカスの団員にしようと、容赦なく着実に近づいてくるのです。

「どこに隠れている? BoysのBの棚かな? Adventure(冒険)のAの棚かな? Hidden(秘密)のHの棚かな?……Terrified(助けて)のTの棚かな?」

けれど、町の図書館長を務め、二人の少年の話を唯一信じてくれたウィルの父親が物語の強烈な秘密を暴いたとき、もう少しで怪しい霧に飲みこまれそうになっていた彼らは間一髪のところで危機を逃れます。

そうして恐怖を一掃する原動力となった魔法の秘密は、じつは誰もが簡単にできる何気ない振る舞いにあり、ただ大人になるといつの間にかその回数も減っていき、何より思いきりしなくなってしまうものでもありました。

13歳という子どもと大人のはざまの時期にある彼らにとっては、まさにこの物語は人生の分水嶺であり、その点においては今のしし座にも同じことが言えるでしょう。

では、それが日々から減ってぎこちなくなってしまうと恐怖が勢いを増し、こちらを取り込んでしまうところまで増幅するような“振る舞い”とは一体どんなものなのでしょうか。

今期のしし座はひとつ最近自分の顔から減ってしまっているものはないか、真剣に考えてみるといいかも知れません。


出典:レイ・ブラッドベリ、大久保康雄訳『何かが道をやってくる』(創元SF文庫)
12星座占い<7/12~7/25>まとめはこちら
<プロフィール>
慶大哲学科卒。学生時代にユング心理学、新プラトン主義思想に出会い、2009年より占星術家として活動。現在はサビアンなど詩的占星術に関心がある。
文/SUGAR イラスト/チヤキ