12星座全体の運勢

「飛び地へとアクセスしていくこと」

6月21日には372年ぶりの夏至の日食(新月)がありましたが、7月22日からの「大暑」に前後する7月21日にはそれに続き蟹座での2度目の新月を迎えます。

今回の新月は「取り込まれるべき大きな物語」がテーマだった前回の新月に対するフォローアップ的な位置づけにあり、この一カ月のあいだに土星が山羊座へ戻り“試練や課題”が明確になってきた状況において、改めてこれからその中で生きていきたい世界や価値観を選びなおしていく軌道修正のタイミングなのだと言えるでしょう。

その際、意識していきたいのが「直感に従って選ぶ」ということ。もしいまあなたの前に二つないし複数の選択肢があるなら、以前の自分であれば無意識的にこっちを選んでいたなという“自分が逃げ込みがちな”選択肢(しかし長い目で見れば破綻が明らかな)ではなく、一見奇妙に見えたり、これまでの現実の延長線上から外れたところに現れた“飛び地”的な(したがってほとんど孤立した)特異点、すなわち未知の領野へアクセスするような選択肢を選んでいきたいところです。

蠍座(さそり座)

今期のさそり座のキーワードは、「必要な狂気」。

蠍座のイラスト
身も心も倦怠感に襲われてすべてのやる気が起こらず、家の中でさえ妊娠中のカバのようにのろのろとしか歩けない…。

もし今あなたがそんな状況にあって、この不活発な状態を反転させるエネルギーを欲しているのなら、セルバンテスの『ドン・キホーテ』のことを思い出されたい。

主人公のドン・キホーテは寝るのも忘れて騎士物語を読みふけった結果、みずから諸国を遍歴する騎士になりきって、さっそうと冒険に出かけていく。そこでは、平凡な道端の旅籠は銀の尖塔が立ち並ぶお城へと様変わりし、巨人の群れに見立てられた風車は槍を向けられる。彼は明るく元気はつらつにあらゆることにのぞみ、従者の忠告もどこふく風。

そもそも遍歴の騎士の生涯には数々の危険と不幸がついてまわるものだが、また、それゆえにこそ、遍歴の騎士は今すぐにでも国王や皇帝にでもなれる立場にあるのだ

そしてそんなドン・キホーテと冒険を続けるうちに、従者のサンチョ・パンサの心境にも変化がおきてきます。

誰もが一生の終わりに、いやでも迎えなきゃならねえ死ってやつをのぞけば、どんなことにも救いの手だてはあるもんだ

もちろん、ドン・キホーテの冒険はそれ自体がひとつの妄想であり、狂気にすぎません。ただ、物語の言葉はときに現実の社会とぶつかっていくための強力な武器となり、生きる糧にもなるのです。

今期のさそり座もまた、まず妄想や想像力を手だてに自分なりの冒険を試みていくといいでしょう。


出典:セルバンテス、牛島信明訳『ドン・キホーテ 前編』(岩波文庫)
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<プロフィール>
慶大哲学科卒。学生時代にユング心理学、新プラトン主義思想に出会い、2009年より占星術家として活動。現在はサビアンなど詩的占星術に関心がある。
文/SUGAR イラスト/チヤキ