12星座全体の運勢

「<新しい日常>への通過儀礼」

暦の上では秋が始まる「立秋」を過ぎて最初の新月を迎えるのが8月19日。それは、暑さが落ち着く「処暑」すなわち太陽が乙女座に入る直前、体感的にも夏の終わりを感じさせてくれる蜩(ひぐらし)の鳴く獅子座終盤あたりで起きていきます。

そんな今回の新月のテーマは、「新しい日常へ」。それはどこか空々しく響いてしまう上からの号令によってみな一斉に同じところから始まるものではなく、あくまでここしばらくの悪戦苦闘や悶え苦しむ期間をやっとの思いで抜け出した結果、流れ着いた先で自分がもうすでに新しい日常に立っていることを後から実感していくはず。夢から醒めた後の起き抜けの朝のひとときのようにおごそかに、しかし、確かにこれまでとは決定的に違う世界にいるという確信を胸に、新たな門出の仕度を整えていきましょう。

「もはや夜はなく、<救い主である神>が人間たちを照らすが故に、ランプや太陽の光は要らなくなる」(『ヨハネ黙示録』第二十二章、5節)

この場合の<神>とは、他でもない自分自身であり、あるいは古い自分を先導する新しい自分のことなのだと思います。

魚座(うお座)

今期のうお座のキーワードは、「焦りをほぐす」。

魚座のイラスト
『変身』や『城』などの不条理小説などで知られるプラハ生まれの作家カフカは、小説だけでなくアフォリズム集も残していますが、その「罪、苦悩、希望、真実の道についての考察」というタイトルの通り、人間がなめうるあらゆる辛酸についてのカフカなりの言及が記されています。

たとえば<喜び>についても、彼の手にかかれば「この人生におけるさまざまな喜びは、生そのものの喜びではなくて、われわれがより高い生へと上昇することに対して抱く不安である」と、一気にそのイメージを書き換えられてしまうのです。

ただ、ここで注目しておきたいのは彼が<罪>について言及している箇所で、「人間のあらゆる過ちは、すべて焦りからきている。周到さをそうそうに放棄し、もっともらしい事柄をもっともらしく仕立ててみせる、性急な焦り」と述べた上で、次のように続けるのです。

人間には二つの主要な罪があり、他の罪はすべてこれらに由来する。すなわち焦りと投げやり。人間は、焦りのために楽園から追われ、投げやりのためにそこへ戻れない。が本当は、ただ一つの大罪、焦りがあるだけかもしれない。焦りのために楽園を追われ、焦りのために戻れないのだ

これは現代人全般に対しての警句とも言えますが、特に今期のうお座にとっては耳の痛い言葉となるかも知れません。慌ただしく目の前の仕事や目先の関心を追い続けるのではなく、いったんペースを落として、呼吸を整えること。

そうして自身の中の「性急な焦り」をいったん解きほぐしていけるかどうかが、今後のうお座が向かっていく先を決めていくように思います。


出典:カフカ、飛鷹節訳「罪、苦悩、希望、真実の道についての考察」(『カフカ全集3』、新潮社所収)
12星座占い<8/9~8/22>まとめはこちら
<プロフィール>
慶大哲学科卒。学生時代にユング心理学、新プラトン主義思想に出会い、2009年より占星術家として活動。現在はサビアンなど詩的占星術に関心がある。
文/SUGAR イラスト/チヤキ