12星座全体の運勢

「白紙にかえす」

「暑さ寒さも彼岸まで」の秋分直前の9月17日に、おとめ座で新月を迎えていきます。

夏のにぎわいが遠のき、秋らしくなるにつれ、次第に風が透き通っていくように感じられてくる頃合いですが、そうした時に吹く風を昔から「色なき風」と呼んできました。

中国から伝わった五行説によると、秋の色は白。日本人は、その白を、「色無き」と言い換えた訳です。本来は華やかさがないという意味でしたが、言い換えられていくうちに、しみわたるような寂寥感を言い表すようになっていったのだそうです。

そして、今回のおとめ座新月のテーマは「初心に返る」。能の大成者である世阿弥の「初心忘るべからず」という言葉と共に知られる「初心」は、普通に考えられているような“最初の志”のことではなく、自分が未熟であった頃の“最初の試練や失敗”の意ですが、これは試練に圧倒されたり、失敗の前に膝をついたりしたことのない者には、本当の成功はいつまでもやってこないのだということを指します。

そうした失敗や挫折を不当だとか、相手や世間が悪いと思い込むのではなくて、そこから人間としての完成に近づくための新たな挑戦が始まるのだと気付くこともまた「初心」なのです。人生には幾つもの初心がある。そんなことに思い至ることができた時には、きっと心のなかをとびきりの「色なき風」が吹き抜けていくはず。

水瓶座(みずがめ座)

今期のみずがめ座のキーワードは、「ふと思い出されてくるもの」。

水瓶座のイラスト
「日本人の多数が、もとは死後の世界を近く親しく、何かその消息に通じているような気持を、抱いていた。」

敗戦直前に書き上げられ、敗戦後に出版された柳田國男の『先祖の話』の一節です。多数の人々が死に直面する太平洋戦争のさなか、日本人の死後や霊魂の観念がもともとどのようなものであったかを解明せんと書かれた本書では、日本の神は先祖神に由来するという大胆な仮説が立てられました。

著者は庶民の生活文化の中で、死後や霊魂の問題が家の継承や先祖崇拝と結びつけられてきた旨について、四つの観点に整理した上で次のように述べています。

第一には死してもこの国の中に、霊は留まって遠くへは行かぬと思ったこと、第二には顕幽二界の交通が繁く、単に春秋の定期の祭だけでなしに、いずれか一方のみの心ざしによって、招き招かるることがさまで困難でないように思っていたこと、第三には生人の今はの時の念願が、死後には必ず達成するものと思っていたことで、これによって子孫のためにいろいろの計画を立てたのみか、更に再び三たび生まれ代わって、同じ事業を続けられるもののごとく、思った者の多かったというのが第四である。

ただこの説は十分に客観的な根拠を持っておらず、柳田以降忘れ去られ、社会の表面からも消え去っていきましたが、約10年前の東日本大震災などを受けて、もう一度検討されるべき死生観の一伝統として再浮上してきているように思います。

同様に、今期のみずがめ座もまた、そうしていつの間にか忘れ去られていた伝統や結びつきを改めて思い出していくこと。あるいは、今の自分に必要な形で受け継いでいくことがテーマとなっていくでしょう。


参考:柳田國男「先祖の話」(角川ソフィア文庫)
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<プロフィール>
慶大哲学科卒。学生時代にユング心理学、新プラトン主義思想に出会い、2009年より占星術家として活動。現在はサビアンなど詩的占星術に関心がある。
文/SUGAR イラスト/チヤキ