12星座全体の運勢

「何かが“やってくる”まで」 

二十四節気でみると10月23日の「霜降」と11月7日の「立冬」のちょうど中間にあたる10月31日の深夜におうし座満月を迎えていきます。 

 霜降とは、これまでと明らかに空気が変わって、露が凍って霜になり始める頃合いで、「立冬」はいよいよ冬の到来ですが、今回の満月もまさに時代の移り変わりを体感していくような特別なタイミングとなっていきそうです。 

 というのも、今回の満月は牡牛座の天王星と正確に重なっているから。天王星は「既存の構造からの逸脱と変革」の星ですが、これは今年から来年へ向けて既に起きつつある大きな流れを象徴する雰囲気の根底にあるもの。そして、今回のテーマは「予測不可能なものの到来」。 

 将来に備え、ただ現実的なコストを算出したり、リスク回避に励んだり、身を固めていくだけでは、何かが決定的に足りない。ただし、その「何か」というのは、日常という固いアスファルトがめくれるように、これまで疑われることなく固定化されてきた文脈にずれが生じなければ、けっして到来することはありません。 

 その際、鍵となってくるのは、ちょっとした違和感をスルーせずに育てていくこと。月がまんまるに膨らみきっていくまでは、分かりやすい解答を求めたり、そこに安住するのではなく、「あえて」「今さら」「あらためて」というひと手間や余計なプロセスを大切にしてみるといいでしょう。 

天秤座(てんびん座)

今期のてんびん座のキーワードは、「古い自分を捨てる」。

天秤座のイラスト
『椅子がこわい』という本は、ある日ベッドで目覚めた直後に耐えられないほどの激痛に襲われた著者・夏樹静子の腰痛放浪記です。 
 
もちろん、すぐに病院の整形外科にかかったもののどうにもならず、鍼灸医、産婦人科、温泉療法、手かざし療法から祈祷まで、あらゆる手を打ったものの治らず、発病して2年後ほどたつと、ほとんど仕事ができなくなったばかりか、不治の病であると思うようになったそうです。 
 
次第に絶望感めいたものが心に食い込んで、「死」に取りつかれていくのですが、それがいよいよ終盤に差し掛かったところで、著者自身でも信じられない結末を迎えていきます。 
 
それは心療内科の平木英人医師からの「あなたの大部分を占めている夏樹静子の存在に病気の大もとの原因があると思います」という診断から始まりました。著者はすぐに「元気になれるなら夏樹を捨ててもいいくらいです」と答えましたが、平木医師は即座に「元気になれるなら、といった取引はありえない。無条件で夏樹をどうするか、結論が出たら私に話してください」と告げ、それでも煮え切らない著者に「夏樹静子を捨てなさい。葬式に出しなさい」と最終通告をしてきたのです。 
 
バカバカしいものだと思った著者も、頑として譲らない平木医師に根負けして、ついにベストセラー作家である「夏樹静子」との決別を決意した、その直後。嘘のように激痛が消え、それから二度と腰痛は起こらなかったそうです。 
 
言葉で書けば「心身症」の一言で終わってしまう話なのですが、物理的な痛みが自分の作り出したものに過ぎなかったという体験は、実際のところいまだに著者自身でさえ信じられないものであるはずです。 
 
10月でてんびん座のシーズンが過ぎ去る今期のてんびん座もまた、著者のような仕方でとまではいかなくても、なんらかの仕方で古びれてすっかり硬直してしまった自分と決別することがテーマとなっていくでしょう。 
 

参考:夏樹静子、『椅子が怖い』(文春文庫) 
12星座占い<10/18~10/31>まとめはこちら
<プロフィール>
應義塾大学哲学科卒。卒業後は某ベンチャーにて営業職を経て、現在西洋占星術師として活躍。英国占星術協会所属。古代哲学の研究を基礎とし、独自にカスタマイズした緻密かつ論理的なリーディングが持ち味。
文/SUGAR イラスト/チヤキ