12星座全体の運勢

「何かが“やってくる”まで」 

二十四節気でみると10月23日の「霜降」と11月7日の「立冬」のちょうど中間にあたる10月31日の深夜におうし座満月を迎えていきます。 

 霜降とは、これまでと明らかに空気が変わって、露が凍って霜になり始める頃合いで、「立冬」はいよいよ冬の到来ですが、今回の満月もまさに時代の移り変わりを体感していくような特別なタイミングとなっていきそうです。 

 というのも、今回の満月は牡牛座の天王星と正確に重なっているから。天王星は「既存の構造からの逸脱と変革」の星ですが、これは今年から来年へ向けて既に起きつつある大きな流れを象徴する雰囲気の根底にあるもの。そして、今回のテーマは「予測不可能なものの到来」。 

 将来に備え、ただ現実的なコストを算出したり、リスク回避に励んだり、身を固めていくだけでは、何かが決定的に足りない。ただし、その「何か」というのは、日常という固いアスファルトがめくれるように、これまで疑われることなく固定化されてきた文脈にずれが生じなければ、けっして到来することはありません。 

 その際、鍵となってくるのは、ちょっとした違和感をスルーせずに育てていくこと。月がまんまるに膨らみきっていくまでは、分かりやすい解答を求めたり、そこに安住するのではなく、「あえて」「今さら」「あらためて」というひと手間や余計なプロセスを大切にしてみるといいでしょう。 

蠍座(さそり座)

今期のさそり座のキーワードは、「“暗点”と“負性”へのまなざし」。

蠍座のイラスト
コロナの「以前、以後」の話が盛んにされたり、特集に組まれたりといった場面において、「以前の世界へ元通りになることへの希望」が語られることが、だんだん少なくなってきたように感じます。 
 
そのこと自体がいいことなのか、悪いことなのかはいったん脇に置いて、以前に起きた「水俣病」という決定的な人災について、故郷の美しく豊かな海と命を奪われた人たちの思いを方言のままにつづった『苦界浄土』を書いた作家の石牟礼道子にあてて、詩人で社会活動家の谷川雁がつづった言葉をここで引用してみたいと思います。 
 
「<水銀以前>の水俣を、あなたは聖化しました。幼女の眼で、漁師の声で、定住する勧進の足で。(中略)もはやそれはあなたの骨髄にしみとおっている性癖で、私にはしょっちゅう狐のかんざしごときものが見えて辟易しますけれども、趣味の問題はいたし方もない。それが<水俣病>の宣伝にある効果を与えたのも事実です。しかし患者を自然民と単純化し、負性のない精神を自動的にうみだす暮らしが破壊されたとする、あなたの告発の論理には<暗点>がありはしませんか。小世界であればあるほど、そこに渦巻く負性を消してしまえば錯誤が生じます。なぜなら負性の相克こそ、水俣病をめぐって沸騰したローカルな批評精神の唯一の光源ですから。」 
 
確かに、石牟礼は化学工業メーカーによって有機水銀が垂れ流される以前の水俣を、幼い少女のまなざしや漁師などの声によって美しく描き、また狐のかんざしや妖怪など、自然と人間とが調和を保った仕方で暮らしていた頃のリアルを浮かび上がらせるのですが、それはノスタルジックな幻想であり、水銀が垂れ流される以前にもそこに住んでいる人間はたくさん問題を抱えていたのではないか。谷川は、そう言っているのです。 
 
もちろん、手探りで現場の人々と話し合いながら作品をつくり、運動を展開していった石牟礼に明らかな非がある訳ではありません。批評的かつ怜悧な洞察の人である谷川と、具体的かつ凄まじい語り部である石牟礼とでは、単に方法が違うのでしょう。 
 
ただ今期のさそり座にとっては、谷川のように、人々が見過ごしがちな論理の“暗点”や精神の“負性”に着目した上で、コロナ以後の人間の生き方を模索するほどの怜悧さを持つことは、大いに人生の指針になっていくはずです。 


参考:『谷川雁コレクションⅡ 原点の幻視者』(日本経済評論社) 
12星座占い<10/18~10/31>まとめはこちら
<プロフィール>
應義塾大学哲学科卒。卒業後は某ベンチャーにて営業職を経て、現在西洋占星術師として活躍。英国占星術協会所属。古代哲学の研究を基礎とし、独自にカスタマイズした緻密かつ論理的なリーディングが持ち味。
文/SUGAR イラスト/チヤキ