12星座全体の運勢

「何かが“やってくる”まで」 

二十四節気でみると10月23日の「霜降」と11月7日の「立冬」のちょうど中間にあたる10月31日の深夜におうし座満月を迎えていきます。 

 霜降とは、これまでと明らかに空気が変わって、露が凍って霜になり始める頃合いで、「立冬」はいよいよ冬の到来ですが、今回の満月もまさに時代の移り変わりを体感していくような特別なタイミングとなっていきそうです。 

 というのも、今回の満月は牡牛座の天王星と正確に重なっているから。天王星は「既存の構造からの逸脱と変革」の星ですが、これは今年から来年へ向けて既に起きつつある大きな流れを象徴する雰囲気の根底にあるもの。そして、今回のテーマは「予測不可能なものの到来」。 

 将来に備え、ただ現実的なコストを算出したり、リスク回避に励んだり、身を固めていくだけでは、何かが決定的に足りない。ただし、その「何か」というのは、日常という固いアスファルトがめくれるように、これまで疑われることなく固定化されてきた文脈にずれが生じなければ、けっして到来することはありません。 

 その際、鍵となってくるのは、ちょっとした違和感をスルーせずに育てていくこと。月がまんまるに膨らみきっていくまでは、分かりやすい解答を求めたり、そこに安住するのではなく、「あえて」「今さら」「あらためて」というひと手間や余計なプロセスを大切にしてみるといいでしょう。 

山羊座(やぎ座)

今期のやぎ座のキーワードは、「順応と縁を切れ」。

山羊座のイラスト
米中の対立がいよいよのっぴきならない状況へと進もうとしているなか、大統領選への注目が集まっているアメリカですが、いわゆる「アメリカ精神」を改めて理解していく上で、19世紀初めに生まれ、勃興期のアメリカを代表する思想家であったエマーソンほど重要な人物はそうはいないでしょう。 
 
「アメリカ精神」を体現しているとされる論文『自己信頼』などを見ていくと、その率直さや物言いのストレートさに多くの日本人はいまだ面食らうはずですが、例えば彼は次のように述べます。 
 
いま生きていることだけが役に立ち、かつて生きたことは無用のものだ。落ち着いてしまうと、とたんに能力を失う。能力が生まれるのは、過去から新しい状態へ移る瞬間である。」 
 
こうした生命的な働きを、おそらく、古いものを大切にする習慣が先祖の昔からDNAに染みついているようなところのある日本人にとって、過去のさまざまな価値を否定するものとしてひどく反発を覚え、ある種の怖れさえ感じるのではないでしょうか。 
 
エマーソンは「おのれを外に求むるなかれ」を銘句にしていますが、ここでの「おのれ」とは、まさに「過去から新しい状態へ移る瞬間」の<今ここ>にある私のことであり、逆に言えば新しい状態への移行を迎えることができなければ、私は存在しないも同然なのです。 
 
こうした精神の在り様は、ともすれば病的な強迫観念のようにもなりかねませんが、エマーソンはさらに論を展開し、「人間でありたい者は、誰でも、順応と縁を切れ」あるいは「君自身の精神の損なわれぬ本来の姿以外には神聖なものは何もない」と力強く説いていくあたりはさすがと言えます。 
 
とはいえ、今期のやぎ座の人たちであれば、こうした止まったら死んでしまうマグロやサメのような「アメリカ精神」について、少なからず共感を覚え、場合によっては大いに糧にしていくことができるはずです。 


参考:エマーソン、酒本雅之訳『エマソン論文集 上・下』(岩波文庫) 
12星座占い<10/18~10/31>まとめはこちら
<プロフィール>
應義塾大学哲学科卒。卒業後は某ベンチャーにて営業職を経て、現在西洋占星術師として活躍。英国占星術協会所属。古代哲学の研究を基礎とし、独自にカスタマイズした緻密かつ論理的なリーディングが持ち味。
文/SUGAR イラスト/チヤキ