12星座全体の運勢

「風通しのよい真実味」

11月7日の「立冬」を過ぎると、木枯らしが吹き始め、日に日に冬めいてくるようになります。 

まだまだ晩秋の装いが色濃く残っている時期でもありますが、「雪中花(せっちゅうか)」の異名をもち、雪の中でも香り高い水仙が咲き始めるのもこの頃。そんな中、11月15日に迎えていく今回のさそり座新月のテーマは「真実を告げること」。 

それは世間一般や他者のリアリティーへ順応することや黙認することを拒んで、自分本来の波長にとどまり、自分のことを正確に認識してもらうよう、相手や周囲に要求していくこと。 

平安時代末期に中国より渡来した水仙は、室町時代になって一休禅師が『狂雲集』で「美人ノ陰ニ水仙花ノ香有リ」とエロティックなもののたとえに詠んだことで知られるようになりましたが、和歌にはほとんど詠まれていません。それは都からはるかに遠い辺鄙な海辺や岬などにひっそりと咲いていたから。 

しかしこれからの時代、このように水仙に例えて真実を語る人たちの存在は、ますます隠しきれないものとなり、互いにゆるやかに連帯しては離れ、つながっては適切な距離をとり、といったことを繰り返していくでしょう。そして今回の新月は、多くの人にとって、そうした風通しのよい関係性へと近づいていくための大切な一歩となっていくはずです。

獅子座(しし座)

今期のしし座のキーワードは、「積み重ねの不思議」。

獅子座のイラスト
日本史上でも指折りの哲学者として世界的にも評価されている西田幾多郎は、「絶対矛盾的自己同一」などの言葉遣いの難解さのためか、国内ではその思想的可能性はいまだ十分に評価が定まっていませんが、彼が遺した書簡に目を向けてみると、思想だけでなくその人柄の奥深さにも気付かされます。 
 
西田は50歳で長男を、55歳で妻を亡くした他、若くして亡くなった娘を何人ももつなど、家族に多くの病人を抱えて長いあいだ苦労してきた人でしたが、学生時代からの終生の友であった山本良吉へ57歳の時に書いた手紙の中で、歳月の積み重ねの不思議について次のように述べています。 
 
人間といふものは時の上にあるのだ。過去といふものがあつて私といふものがあるのだ。過去が現存してゐるといふ事が又その人の未来を構成してゐるのだ」 
 
彼は続けて、それを特に妻が7,8年前に倒れた時に深く感じたと言い、「自分の過去といふものを構成してゐた重要な要素が一時なくなると共に自分の未来といふものもなくなつた様に思はれた」という切実な感想を記しています。 
 
明治維新や文明開化の号令からの流れと軌を一にするべく、当時(あるいは今でもなお)“過去に縛られず未来に開かれて生きる”ことこそ自らの自由意志によって人生を切り開く、あるべき近代人の姿なのだと考えられていたことを思えば、西田という人が時代的潮流に惑わされることなく、ただひたすら徹底的におのれの人生や体験をもとに思索を深めていったのだということが改めてよく分かるのではないでしょうか。 
 
今期のしし座もまた、そんな西田のようにどうしたら世間に早く広く評価されるかではなく、まず自分にとっての真実を何度も何度も掘り下げていくことを大事にしていきたいところです。 
 

参考:『西田幾多郎全集 18』(岩波書店) 
12星座占い<11/1~11/14>まとめはこちら
<プロフィール>
應義塾大学哲学科卒。卒業後は某ベンチャーにて営業職を経て、現在西洋占星術師として活躍。英国占星術協会所属。古代哲学の研究を基礎とし、独自にカスタマイズした緻密かつ論理的なリーディングが持ち味。
文/SUGAR イラスト/チヤキ