12星座全体の運勢

「風通しのよい真実味」

11月7日の「立冬」を過ぎると、木枯らしが吹き始め、日に日に冬めいてくるようになります。 

まだまだ晩秋の装いが色濃く残っている時期でもありますが、「雪中花(せっちゅうか)」の異名をもち、雪の中でも香り高い水仙が咲き始めるのもこの頃。そんな中、11月15日に迎えていく今回のさそり座新月のテーマは「真実を告げること」。 

それは世間一般や他者のリアリティーへ順応することや黙認することを拒んで、自分本来の波長にとどまり、自分のことを正確に認識してもらうよう、相手や周囲に要求していくこと。 

平安時代末期に中国より渡来した水仙は、室町時代になって一休禅師が『狂雲集』で「美人ノ陰ニ水仙花ノ香有リ」とエロティックなもののたとえに詠んだことで知られるようになりましたが、和歌にはほとんど詠まれていません。それは都からはるかに遠い辺鄙な海辺や岬などにひっそりと咲いていたから。 

しかしこれからの時代、このように水仙に例えて真実を語る人たちの存在は、ますます隠しきれないものとなり、互いにゆるやかに連帯しては離れ、つながっては適切な距離をとり、といったことを繰り返していくでしょう。そして今回の新月は、多くの人にとって、そうした風通しのよい関係性へと近づいていくための大切な一歩となっていくはずです。

蟹座(かに座)

今期のかに座のキーワードは、「小さな鐘」。

蟹座のイラスト
宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』の主人公で貧しい少年ジョバンニが敬愛する人物として、カンパネルラという名前の少年が出てきます。彼は溺れた友人を救うために死んでしまうのですが、ジョバンニは彼とともに銀河鉄道に乗って宇宙旅行をしていくのです。 
 
ここで思い起こされるのは、ルネサンス期に生きた同じ名前の哲学僧トマーゾ・カンパネッラです。彼は学生時代にはガリレオと交友があったそうですが、何と言っても近世ユートピア思想の先駆である『太陽の都』(1623)の作者として知られています。 
 
カンパネッラは、地球も星も宇宙もすべて感覚を有していると見なすとともに、そのなかに住む人間がいかに卑小であるかを説き、人間の慢心を戒めているのですが、例えば「自惚れに対する素晴らしき発見」という詩には次のようにあります。 
 
自惚れは信じやすき人間をして、万物も星もそれらがわれらより強く美しきものにも拘わらず、感覚も愛も有せざるものと信じさせ、ただわれらのためにのみ回転すと信じさせり」 
さらに、われら以外のものはすべて野蛮で無知にして、神はわれらのみを眺め給うと信じさせ、かつまた、神は僧職にあるもののみを救うと信じさせしめり。かくして、各人はただ自己のみを愛するに至れり」 
 
宮沢賢治は熱心な日蓮宗徒でもありましたから、こうしたカンパネッラのきびしい自己批判にも少なからず感化されたのでしょう。なお、カンパネッラとはイタリア語で「小さな鐘」を意味する言葉ですが、その慎ましい響きも含めて、作者の宮沢賢治もまた、実際にカンパネッラという名の人物に敬愛の念を抱いていたのかも知れません。 
 
今期のかに座もまた、宮沢賢治やカンパネッラのような宇宙感覚や生命感覚のなかに、何かしら響いてくるものがあるはずです。 例えば、自分を愛するということが、そのまま同時に、誰かと共に在り、響きあっていくということでもあるような。そんな在り方に開かれていきたいところです。
 

参考:カンパネッラ、坂本鉄男訳『太陽の都・詩篇』(現代思潮新社) 
12星座占い<11/1~11/14>まとめはこちら
<プロフィール>
應義塾大学哲学科卒。卒業後は某ベンチャーにて営業職を経て、現在西洋占星術師として活躍。英国占星術協会所属。古代哲学の研究を基礎とし、独自にカスタマイズした緻密かつ論理的なリーディングが持ち味。
文/SUGAR イラスト/チヤキ