12星座全体の運勢

「雪が花に変わるとき」

11月22日の「小雪」を過ぎれば、もう雪の季節。「一片飛び来れば一片の寒」と言うように舞いくる寒さに本格的に備え始めるこの頃には、こたつを導入したり暖房を入れ始める人も増えてくるはず。 

そして11月30日には、静かに深まってゆく冬の夜に双子座の満月を迎えていきます。今回のテーマは「緊張の中にあるゆるみ」。精神を鋭敏に研ぎ澄ましていくなかで訪れる一瞬の静けさ、そして平穏。それは瞑想の境地が深まったときの感覚にも似ています。初めは雑念ばかりが浮かんで、かえって心が騒がしく感じたり、眠くなってしまったりしていたのが、自然と頭が消えて胴体だけになったように感じてきて、意識は活動しているのに、何かを「志向する」ことなしにいられる「非思考」状態に入っていく。 

禅ではこれを「自分自身の『私』を忘れる」とか「非思量」などと言うそうですが、それはどこか「風花」というこの時期の季語を思わせます。風花とは風に運ばれてちらちらと舞う雪のかけらのことですが、あっけないほどのはかなさで消えていく雪片に、ひとつの花を見出していくのです。それはすべてのものに命があると考えていた日本人が、厳しい冬の訪れにも愛おしむような気持ちを向けていたことの何よりの証しでしょう。 

今回の満月でも、集中力を高めて厳しい現実や人生の課題(雪片)と向かい合っていくことで、そのなかに隠された恵みや喜び(花)を見出していくことができるかどうかが問われていくはず。 

獅子座(しし座)

今期のしし座のキーワードは、「生活を詩にすること」。

獅子座のイラスト
労働者に必要なのは、パンでもバターでもなく、美であり、詩である」。 
 
ユダヤ人女性思想家シモーヌ・ヴェイユ(1909~1943)の言葉です。彼女は、労働の意味だけでなく、芸術の本質についても、この宇宙を統御している二つの力「重力と恩寵(おんちょう)」という独自の用語によって、同名の断章集の中で何度も繰り返し考察していました。 
 
彼女の言う「重力」とは、物体の重力にも似た”こころの惰性的で功利的な働き”のことであり、それに対して「恩寵」とは、”こころの単なる自然な働きを超えたもの”を指し、「光」とも言い換えられています。 
 
例えば、彼女は「グレゴリオ聖歌のひとつの旋律は、ひとりの殉教者の死と同じだけの証言」をしており、それは「重力のすることを、もう一度愛によってやり直す」という"二重の下降運動”こそ、「あらゆる芸術の鍵」なのだと述べた上で、次のように言い切るのです。 
 
「情熱的な音楽ファンが、背徳的な人間だということも大いにありうることである。だが、グレゴリオ聖歌を渇くように求めている人がそうだなんてことは、とても信じられない」、と。 
 
彼女は、労働者たちには「その生活が詩になること」こそ必要なのであり、「ただ宗教だけが、この詩の源泉となることができる」こと、また「宗教ではなく、革命こそが民衆のアヘンである」と強調していました。 
 
彼女の生きたのは二十世紀前半でしたが、彼女の「労働者から詩が奪われていることこそ、あらゆる形での道徳的退廃の理由なのだ」といった指摘は現代人においても、ますます重要になってきているように思います。 
 
今期のしし座もまた、自身の生活がどれだけ重力に支配されているか、また、恩寵を迎え入れるだけの渇望や真空状態にどれだけ敏感になれているか、改めて振り返ってみるといいでしょう。 
 

参考:シモーヌ・ヴェイユ、田辺保訳『重力と恩寵』(ちくま学芸文庫) 
12星座占い<11/15~11/28>まとめはこちら
<プロフィール>
應義塾大学哲学科卒。卒業後は某ベンチャーにて営業職を経て、現在西洋占星術師として活躍。英国占星術協会所属。古代哲学の研究を基礎とし、独自にカスタマイズした緻密かつ論理的なリーディングが持ち味。
文/SUGAR イラスト/チヤキ