12星座全体の運勢

「いのちの感触」

一年で最も太陽の力が弱まる時期である冬至を過ぎた最初の満月は12月30日に、しかも月の力が最も強まるかに座で迎えていきます。 

この満月のキーワードは、「ふれる」。あるいは、“知ること”をめぐる繊細な探求と、いのちあるものを理解することにおける半永久的なつかみどころのなさ。 

「琴線にふれる」という言葉が、心の奥に秘められた感じやすい心情を刺激し感動や共鳴を与えることを言うように、「ふれる」という体験はただちに相互的な関わりのきっかけとなり、個人という枠を超えて溢れだし、包み込むいのちの感覚につながっていくところがあります。 

しかし、これが「さわる」という言葉になった途端、人間的なあたたかみは消え失せて、ただモノとして確かめたり、操作したりといった一方的な関わりが思い起こされるはず。 

かつては日本では元日の朝に、一番に汲み取った「若返る水」を供えて神棚に供える風習があり、これは月に関連する最も古い伝承に基づくものでした。 

月というのは、本来私たちの中のもっともデリケートな部分であり、いつだって懐かしく心そそられる、生命の根源としてそこにあります。おおみそかの前日、年内最後の満月にはぜひとも自分自身や身近な人のやわらかな部分とふれあうような感覚を思い出し、新しい年に備えてみるといいでしょう。 

山羊座(やぎ座)

今期のやぎ座のキーワードは、「偶然の美学」。

山羊座のイラスト
哲学史の中でも「偶然」ということについて突き詰めて考察した著作を残した稀有な人物である九鬼周造は、偶然性の基本構造に芸術的な美の起源を見出していました。 
 
「ポール・ヴァレリーは一つの語と他の語との間に存する「双子の微笑(sourires jumeaux)」ということを云っているが、語と語との間の音韻上の一致を、双子相互間の偶然的関係に比較しているのである。」(『偶然性の問題』) 
 
これは例えば、小野小町の「花の色は移りにけりないたづらに わが身世にふるながめせしまに」という歌の「ふる(降る/経る)」「ながめ(長雨/眺め)」のような掛詞(かけことば)を想定してみると分かりやすいでしょう。 
 
偶然の音の重なりというによってまったく異なる意味の概念性が出会い、結びつけられていくことで出来上がる妙にも通じていきます。 
 
偶然ほど尖端的で果て無い壊れやすいものはない。そこはまた偶然の美しさがある。偶然性を音と音との目くばせ、言葉と言葉の行きずりとして詩の形式の中に取り入れることは、生の鼓動を詩に象徴することを意味している」(同上) 
 
音韻と意味とのあいだの「行きずり」の出会い、その「あわい(間/淡い)」において、はかなさだけでなく唯一性を見ようとしたのが九鬼の偶然論の本質であったように思います。 
 
今期のやぎ座もまた、ふと生じる邂逅や、一瞬の内に重なり、そしてまた離れていくような偶然的関係における“ふれあい”を大切にしていきたいところです。 


参考:九鬼周造『偶然性の問題』(岩波文庫) 
12星座占い<12/13~12/26>まとめはこちら
<プロフィール>
應義塾大学哲学科卒。卒業後は某ベンチャーにて営業職を経て、現在西洋占星術師として活躍。英国占星術協会所属。古代哲学の研究を基礎とし、独自にカスタマイズした緻密かつ論理的なリーディングが持ち味。
文/SUGAR イラスト/チヤキ