12星座全体の運勢

「呑み込むべき“寒九の水”を問う」 

2021年を迎えて最初の新月は1月13日にやぎ座の第三デカン(20から29度)で起こります。やぎ座の現実主義に水星の知性が加わるため、この新月では特に物事の本質を見抜く客観性が冴えわたっていくでしょう。 

二十四節気では1月5日より「小寒」に入ります。いわゆる「寒の入り」と言われ、冬至で「一陽」を得ることでかえって陰気が強まり、ますます冷えが厳しくなっていく頃合いとされています。そして、今回新月が起こる1月13日は寒の入りから9日目の「寒九」にあたり、昔からこの日の水(寒九の水)は特別な力が宿るとされ、餅をつくにも、お酒を造るにも、薬を飲むにも、珍重されてきましたが、この特別冷たい水こそが薬にも力にもなるという発想は、まさに今回の新月のテーマとも言えます。 

すなわち、人間が経験しうるもっとも純粋な自由というのは、厳しい規律や掟を受け入れ、従うことでこそ実現可能になるということ。さながら寒い時期ほど、一年を通して温度変化の少ない地下水さえもがあたたかく染み入るように感じられるように。あなたの人生に力を与え、解放させてくれるだけの「冷たさ=厳しい現実やその枠組み、ルール等」とは何か、それをいかに取り入れていけるかが今期 は問われていきそうです。

蠍座(さそり座)

今期のさそり座のキーワードは、「助け合いとしての贈与」。

蠍座のイラスト
他人との出会いこそが、人間を動物ではなく人間らしく作り変えていくのだとしたら、「共にある」ことは人間存在の本質にかかわる重要な営みですが、資本主義の浸透しきった世界で生きている私たちは、ともすると見返りや対価など行為に際して経済合理性を前提に考えてしまう癖がついてしまっているように思います。 
 
しかし今西仁司の『交易する人間』によれば、そうした資本主義的交換ないし市場的交換というのは、贈与体制を解体することで初めて歴史的に登場してきたのであり、贈与体制がほぼ完全に歴史的敗北をみるのは、たかだか十九世紀の中葉でしかないのだそうです。 
 
それこそが「近代」への歴史的転換であり、「私的所有」体制への一元化だった訳ですが、それはなにより、生産者と生産手段(特に土地と自然)のささやかな分離から生じたのだ、と。 
 
今西は私的所有体制または資本主義の出現は歴史的に理由があったし、それを逆転することはできないと断った上で、「資本主義が浸透する(寄生する)市場経済は、人間(個人と集団のすべて)の現実的な生活の基盤を根底から破壊する傾向がある」のだと警鐘を鳴らします。 
 
では、そうした破壊的作用を克服するにはどうすればいいのか。今西はマルセル・モースの言葉を引用しながら、「受け取るのと同じ程度に与えるなら、すべてがうまくいくであろう」という贈与倫理の復活に期待しつつも、それがどのように可能となるか、という問いに関しては依然として誰も答えをうまく用意できないままであるとも述べています。 
 
今期のさそり座もまた、誰か何か(自然や土地)と「共にある」ことの豊かさをどうしたら取り戻し、分離や断絶を結びなおしていくことができるかが、改めて問われていきそうです。 


参考:今西仁司『交易する人間(ホモ・コムニカンス)贈与と交換の人間学』(講談社学術文庫) 
12星座占い<12/27~1/9>まとめはこちら
<プロフィール>
應義塾大学哲学科卒。卒業後は某ベンチャーにて営業職を経て、現在西洋占星術師として活躍。英国占星術協会所属。古代哲学の研究を基礎とし、独自にカスタマイズした緻密かつ論理的なリーディングが持ち味。
文/SUGAR イラスト/チヤキ