12星座全体の運勢

「春一番を察知する」 

2月3日に「立春」を迎え、まだまだ寒さは厳しいものの梅のつぼみがほころび始め、少しずつ春の香りがひろがっていこうとしているなか、2月12日にはみずがめ座で新月が形成されていきます。 

今回のみずがめ座新月のテーマは「徹底的に空気を読み、それに応える」。 

古来より、季節というのはただ待っていれば自動的にやってくるものではなく、東からやってくる風が春を連れてくるものと考えられてきました。そして、立春から春分までに吹く最初の南風を「春一番」と言いますが、この場合、それは物理的な風というよりも、ぐっと気温をあげてこの世界を住みやすいものにしてくれる新たな希望の到来であり、その気配のこと。 

春一番が吹いても、またすぐに冷たい風が吹いて寒くなるのですが、それでも春二番、春三番と同じような風が吹くたびに、春は少しずつこの世界に招かれてくるはず。 

ますます混迷を極め、暗澹たる思いが立ち込めるように思える世相において、たとえかすかなものであれ希望の光となるような流れがどこから射し込んでくるのか。新月に向かっていく今期においては、自分個人の幸せや願望の成就というより、そうした「どんな世界になってほしいのか?」という社会的な願いに焦点をあてて、その兆しや可能性を追求していきたいところです。 

獅子座(しし座)

今期のしし座のキーワードは、「大狂気がなくては生きていけない」。

獅子座のイラスト
もはやマンガを子供向けのものと限定して考える人は世間でも少数派だろうとは思いますが、そうしたジャンルとしてのマンガという話ではなく、作者の頭の中身を絵とセリフと自由なコマ割りで表すことのできるマンガという表現形式に注目して、そこに他の形式ではうまく表現できない特殊な問いを読者に突きつける可能性を見出した人に哲学者の永井均がいます。 
 
彼は『マンガは哲学する』という本のまえがきで次のように述べています。 
 
私がマンガに求めるもの、それはある種の狂気である。現実を支配している約束事をまったく無視しているのに、内部にリアリティと整合性を保ち、それゆえこの現実を包み込んで、むしろその狂気こそがほんとうの現実ではないかとい思わせる力があるような大狂気。そういう大狂気がなくては、私は生きていけない。その狂気がそのままその作者の現実なのだと感じたとき、私は魂の交流を感じる。それゆえ、私がマンガに求めているものは哲学なのである」 
 
例えば、『ブラックジャック』には手塚マンガ特有の作者登場手法があります。第七話「幸運な男」はスラム出身の貧乏なアラビア人の男がブラックジャックに整形してもらって裕福な日本人になりすますのですが、いざ日本に来てみるとその日本人の実家は破産しており、息子を頼ろうとする母親一人が残っているだけ。はじめのうちはそんな母親をうざったく思っていた彼も、次第に情が移っていくのですが、最後にはじつはその母親も財産狙いのニセモノだったことが分かって、男は故郷に帰って人生をやり直そうとします。 
 
その最後の場面で、空港へ行くと、ブラックジャックが来ている。男がどうしてわざわざ来てくれたのかと聞くと、ブラックジャックは「わたしの出番が少ないからさ…、フフフ…」と背中を読者に向けて答えるのである。 
 
どうだろう、実際の人生でもし昔の知り合いから久しぶりに電話がかかってきたとして、どうしたのかというあなたの問いに、「いやあ、出番が少なかったから」なんて言ってハッとさせてくれたら、さぞかしその瞬間、哲学的な深度がグッと深まることでしょう。 
 
今期のしし座もまた、自分の人生のコマ割りの中に、作者の意図した登場シーンが入り込んでくるところを想像してみるところから始めてみるといいでしょう。 


参考:永井均『マンガは哲学する』(講談社+α文庫) 
12星座占い<1/24~2/6>まとめはこちら
<プロフィール>
應義塾大学哲学科卒。卒業後は某ベンチャーにて営業職を経て、現在西洋占星術師として活躍。英国占星術協会所属。古代哲学の研究を基礎とし、独自にカスタマイズした緻密かつ論理的なリーディングが持ち味。
文/SUGAR イラスト/チヤキ