12星座全体の運勢

「花時へ立ち返る」 

いよいよ3月20日に「春分」を迎え天文学的にも春となり、その後はじめての満月が3月29日にてんびん座8度(数え度数で9度)で形成されていきます。 

今回のテーマは「触発されること」。たとえば、過去の偉大な芸術や文学作品の洗練された様式に触れることは、瞑想と同じような効果があるのではないでしょうか。いずれにせよ、混沌とした社会の中で新しい価値をさがそうとして迷っている時には、まずもって原点に立ち返ることが重要です。 

ちょうど、この時期の季語に「花時」という言葉があります。古くから、花と言えば桜。ですから、普通は「花時」といえば、桜の花が美しく咲いているあいだのことを言うのですが、とはいえ、私たちは桜が咲く前からいつ咲くかと心待ちにしたり、散り始めてからの方がより風情を感じたりと、それぞれにとっての「花時」を持っていたように思います。 

松尾芭蕉の「さまざまな事思ひ出す桜かな」という俳句のように、その時々に刻まれた思い出は、桜を見るたびに何度も蘇ってくるもの。もしかしたら、ひとりひとりの心の中に、「花時」という特別な時間軸があるのかも知れません。 

その意味で、今期は自分のこころをもっとも触発してくれるような「花時」に立ち返っていけるか、そこでしみじみとしていけるかということが、大切になってくるはずです。 

水瓶座(みずがめ座)

今期のみずがめ座のキーワードは、「動物のまなざし」。

水瓶座のイラスト
夜道をひとり、なんとなく心許なく感じながら歩いているとき、目の前に突然何かが飛び出してくる。幽霊か?いや獣だ(こんな現れ方は獣にしかできない)。暗闇に光る二つの目。思わず目が合う……。ただ、それはよく見たら猫だった。なーんだ。ただしばらくしてから、その一瞬の邂逅が最近の他のどんな出来事よりも鮮明な印象を自分の中に残していたことに気が付く―。 
 
そんな経験をしたことはないだろうか。猫のところは、犬でもタヌキでもオコジョでもいい。ここで大事なのは、もしかしたら人間が支配する世界も、獣が支配する世界もないのではないかという考えです。 
つまり、「あるのはただ、移り変わり、かりそめの支配、機会、逃走、そして出会いだけ」かも知れないということ。 
 
そう述べたのは、フランスの思想家ジャン=クリストフ・バイイであり、彼は『思考する動物たち』という著書の中で、例えばラスコーの壁画に描かれたような、人間と動物との聖なる絆のネットワークにおいて「具現化されていたぞくぞくするような絆は、半透明になり、ほとんど消えつつある。だが、私たちが少しでも注意を払って、彼らが存在し、動いているのを見さえすれば、どの動物もみな記憶の保有者であることが分かるだろう。記憶とは、動物にも私たちにもあずかり知れぬものだが、そこには動物という種と私たち人間との軋轢が刻み込まれている」と書いています。 
 
ここでバイイが語ろうとしているのは、人間から動物へ、動物から人間への侵犯についてではなく、そのわずかな接触からなる接近であり、そうした接近において起きてくる人間中心主義の解体についてです。 
 
そこで明らかになるのは、「私たちの生きている世界が他の生物たちから見られているということ」。バイイはさらに続けてこう結んでいます。 
 
可視の世界は生き物たちの間で共有されている。そして、そこから政治が生まれるかもしれない―手遅れでなければ。」 
 
今期のみずがめ座もまた、そうした太古からそこにいた先行性をもった存在としての動物に、自分なりの接近を通して開かれていくことになるかも知れません。 


参考:ジャン=クリストフ・バイイ、石田和男・山口俊洋訳『思考する動物たち』(出版館ブック・クラブ) 
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<プロフィール>
應義塾大学哲学科卒。卒業後は某ベンチャーにて営業職を経て、現在西洋占星術師として活躍。英国占星術協会所属。古代哲学の研究を基礎とし、独自にカスタマイズした緻密かつ論理的なリーディングが持ち味。
文/SUGAR イラスト/チヤキ