12星座全体の運勢

「花時へ立ち返る」 

いよいよ3月20日に「春分」を迎え天文学的にも春となり、その後はじめての満月が3月29日にてんびん座8度(数え度数で9度)で形成されていきます。 

今回のテーマは「触発されること」。たとえば、過去の偉大な芸術や文学作品の洗練された様式に触れることは、瞑想と同じような効果があるのではないでしょうか。いずれにせよ、混沌とした社会の中で新しい価値をさがそうとして迷っている時には、まずもって原点に立ち返ることが重要です。 

ちょうど、この時期の季語に「花時」という言葉があります。古くから、花と言えば桜。ですから、普通は「花時」といえば、桜の花が美しく咲いているあいだのことを言うのですが、とはいえ、私たちは桜が咲く前からいつ咲くかと心待ちにしたり、散り始めてからの方がより風情を感じたりと、それぞれにとっての「花時」を持っていたように思います。 

松尾芭蕉の「さまざまな事思ひ出す桜かな」という俳句のように、その時々に刻まれた思い出は、桜を見るたびに何度も蘇ってくるもの。もしかしたら、ひとりひとりの心の中に、「花時」という特別な時間軸があるのかも知れません。 

その意味で、今期は自分のこころをもっとも触発してくれるような「花時」に立ち返っていけるか、そこでしみじみとしていけるかということが、大切になってくるはずです。 

山羊座(やぎ座)

今期のやぎ座のキーワードは、「古代の哲学者たちのように」。

山羊座のイラスト
「風の時代」という言葉がひとり歩きして、どうも占星術における風=思考機能という定義からだいぶかけ離れた社会展望がそこかしこで語られているような状況が生まれていますが、いずれにせよ現時点で確実に言えることは、これからの「風の時代」ますます「自分なりに考えてみる」ことの重要性や緊急性は増していくだろうということ。 
 
そうした「自分なりに考えてみる」の最も古典的な元型は「哲学者」という人種でしょう。とはいえ、最初の哲学とされるタレスや、占星術におけるエレメントの考え方のルーツともなっているエンペドクレスなど、ソクラテス以前の“古代ギリシャの哲学者たち”は、現代における「哲学者」という言葉のイメージとはかけ離れた、ひとりひとりが一宗を興すほどの宗教家であり、実践家でもありました。 
 
彼らは「神」というチート概念を用いずにこの世界の成り立ちを説明するモデルを、自分なりに編み出していった人びとでもあった訳ですが、そんな“古代の哲学者たち”と現代のそれとの違いについて、ルーマニア出身の思想家シオランは、『思想の黄昏』の中で次のように極めて辛辣な筆致で述べています。 
 
古代の哲学者たちと現代の哲学者たちとを分かつもの――きわめて明瞭な相違であり、そして後者にとってはきわめて都合の悪い相違であるが――は、後者が仕事机で、書斎で哲学したのに対して、前者が庭園で、市場で、あるいはどこかは知らぬ海岸を歩きながら哲学したことに由来する。」 
 
そして現代の哲学者たちよりも怠惰な古代の哲学者たちは、長いあいだ横になっていたものだ。というのも、彼らは霊感が水平にやってくることを知っていたからである。そんなわけで、彼らは思想の来るのを待っていたのである。現代の哲学者たちは読書によって思想を強制し、挑発する。そういう彼らの姿からは、瞑想の無責任性なるものの歓びをいまだかつて知ったこともなく、そのさまざまの観念を企業家はだしの努力をもって組織したのだ、という印象を抱かせられる。」 
 
こうしたシオランの言にひと言加えさせてもらうならば、古代の哲学者たちと現代の哲学者たちとを分かつものに「闇の深さ」の体験も挙げられるのではないでしょうか。書斎や読書で哲学が可能なのは、電気が発明され普及していったためであり、それが精神に与える影響もまた想像以上に大きかったのではないかと思います。 
 
今期のやぎ座もまた、いっそ自分が古代の哲学者たちになったつもりで、「霊感が水平にやってくること」、「思想の来るのを待」つことに徹してみるといいでしょう。 


参考:エミール・シオラン、金井裕訳『思想の黄昏』(紀伊国屋書店) 
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<プロフィール>
應義塾大学哲学科卒。卒業後は某ベンチャーにて営業職を経て、現在西洋占星術師として活躍。英国占星術協会所属。古代哲学の研究を基礎とし、独自にカスタマイズした緻密かつ論理的なリーディングが持ち味。
文/SUGAR イラスト/チヤキ