12星座全体の運勢

「心の奥底の実感を」 

4月20日に太陽がおうし座へ移り、二十四節気の「穀雨」に入ると、稲の苗もすくすくと伸びていき、いよいよ緑したたる季節へ。そんな中、4月27日にさそり座7度(数え度数8度)で満月となります。 

今回のテーマは「内面の静けさ」。すなわち、これから初夏にかけて存分に生命を燃やし、またそれに必要な備えや人手を取り入れていくべく、ますます賑やかな季節を迎えていくにあたって、今回の満月が「本当にそれでいいの?」と自分自身に最終確認をとっていく期間となるのだということ。 

ちょうど、この季節に使われる季語に「霞(かすみ)」があります。これは水蒸気の多い春に特有の、たなびく薄い雲を総称してそう呼ぶのです。麗らかな春の日にふと動きをとめて、水筒の麦茶でも飲みながら、遠くの霞を眺めているうちに、ふっと何かを思い出したり、妙な気持ちになったことがあるという人も少なくないのではないでしょうか。 

そうして周囲の音が一瞬遠くなったように感じられた時、既存の手垢のついた言葉では形容することのできなかった微妙な感情や、名状しがたい衝動がこころの表面によみがえり、急になまなましく感じられてきたり、実感が追いついてきたり。あるいは、春の夜空に浮かぶ霞たなびく朧月を眺めている時、ふと心のどこかにひっかかっていた違和感が鮮烈に立ち上がってきたり。 

今期はそんな風に、ゆっくりと、ないし、しみじみと心の奥底の実感を浮き彫りにしていくべく、自分のこころやからだと静かに向きあっていく時間を持っていきたいところです。 

牡牛座(おうし座)

今期のおうし座のキーワードは、「はかない刺繍」。

牡牛座のイラスト
気軽に見れるネット上の動画コンテンツの増加や、性風俗サービスの多様な展開に伴って、現代社会においてセックスに対する偏見はなんとなく薄まったように思われがちですが、考えようによっては過剰に理想化され過ぎてしまって、より偏狭で、不自然なものになっているのではないでしょうか。 
 
性(セクシャリティ)は大いなる生命活動を代表するものですが、だからこそ、人間に限らず欲望を抱いた動物たちの形態と行動様式は途方もない多様性をもっており、本来単なる効率的な魅了や生殖に還元しえるものではありません。 
 
例えば、西欧の人間中心主義への反省から、動物たちへの哲学的な分析を重ねてきた思想家のジャン=クリストフ・バイイは、ニューギニアとオーストラリア北部のコヤツクリ科の鳥のオスが、周辺のくずを拾い集めてほとんど芸術的なまでの小さな箱庭を作ってメスを誘惑する習性を取りあげて次のように述べています。 
 
生きる意志は、食糧や性的パートナーを探す時期に最も強くなるが、実は動物を混乱させ、ひどい目にあわせもする。それは、出来あいの答えを提供するのではなく、たくさんの作業(障害の克服、計略の練り直し、通り道の再開削など)を通して、絶えざる問いかけとなって現れる。動物がまだ多く生存する場所に足を踏み入れた途端に私たちがいつも感じる、あの絶えず忙しそうな感じ、休みなく活動しているという印象は、そこから来る。まるで私たちの周りのいたるところで、生命が自らを探索しながらざわついているかのようだ。」 
 
つまり、コヤツクリ科の鳥のオスにとって、求愛行動は単なる美しい儀式などではなく、いつでも不意に何か不測の緊急事態が現われ得る、果てしない悩みの種であるかも知れず、潜在するリスクの海の中でたまたま何事もなく表出したものが、はかない刺繍のように人間側に見えているに過ぎないのだと考えられるだろうと。 
 
いずれにせよ、動物というのは同一の種であっても、大人数で行う二人三脚のようにいっせいに歩調を合わせて歩んでいくものではなく、星のように散らばり、きらめきながら、てんでばらばらな方向を向いて冒険を試みていくものです。 
 
今期のおうし座もまた、そんな定型から外れた動きと、たえざる問いかけとを、自身の性(セクシャリティ)に取り戻していくことになるでしょう。 


参考:ジャン=クリストフ・バイイ、石田和男・山口俊洋訳『思考する動物』(出版館ブック・クラブ) 
12星座占い<4/18~5/1>まとめはこちら
<プロフィール>
應義塾大学哲学科卒。卒業後は某ベンチャーにて営業職を経て、現在西洋占星術師として活躍。英国占星術協会所属。古代哲学の研究を基礎とし、独自にカスタマイズした緻密かつ論理的なリーディングが持ち味。
文/SUGAR イラスト/チヤキ