12星座全体の運勢

「心の奥底の実感を」 

4月20日に太陽がおうし座へ移り、二十四節気の「穀雨」に入ると、稲の苗もすくすくと伸びていき、いよいよ緑したたる季節へ。そんな中、4月27日にさそり座7度(数え度数8度)で満月となります。 

今回のテーマは「内面の静けさ」。すなわち、これから初夏にかけて存分に生命を燃やし、またそれに必要な備えや人手を取り入れていくべく、ますます賑やかな季節を迎えていくにあたって、今回の満月が「本当にそれでいいの?」と自分自身に最終確認をとっていく期間となるのだということ。 

ちょうど、この季節に使われる季語に「霞(かすみ)」があります。これは水蒸気の多い春に特有の、たなびく薄い雲を総称してそう呼ぶのです。麗らかな春の日にふと動きをとめて、水筒の麦茶でも飲みながら、遠くの霞を眺めているうちに、ふっと何かを思い出したり、妙な気持ちになったことがあるという人も少なくないのではないでしょうか。 

そうして周囲の音が一瞬遠くなったように感じられた時、既存の手垢のついた言葉では形容することのできなかった微妙な感情や、名状しがたい衝動がこころの表面によみがえり、急になまなましく感じられてきたり、実感が追いついてきたり。あるいは、春の夜空に浮かぶ霞たなびく朧月を眺めている時、ふと心のどこかにひっかかっていた違和感が鮮烈に立ち上がってきたり。 

今期はそんな風に、ゆっくりと、ないし、しみじみと心の奥底の実感を浮き彫りにしていくべく、自分のこころやからだと静かに向きあっていく時間を持っていきたいところです。 

乙女座(おとめ座)

今期のおとめ座のキーワードは、「それ以前の不安」。

乙女座のイラスト
20世紀が戦争の時代と呼ばれたように、21世紀は不安の時代と呼ぶことができるかも知れません。現実世界の不安に耐えられなくなった人びとが、安住できる世界観を求め、それらしい言説や流行に吸い寄せられていく……。 
 
詩人の野村喜和夫は、そうした時代の気分のようなものを21世紀に入る直前の1999年に刊行された『狂気の涼しい種子』という詩集の中で、既に打ち出していました。次に紹介するのは、「症例ササ Ⅰ(非常口)」という詩の冒頭です。 
 
私はササ/きみもササ 
この奇妙な名において共同の/からだの非常口のようなものはささやく 
ひとりでも群れてね/ひとりでも群れたら/抱かれてあげる 
月とともにふくらみ/発芽する血と記号の雫(しずく) 
ササきみはササ/ササ私もササ」 
 
おそらく、自分の精神状態の揺れのようなものを表わしたいのだと思いますが、この人がなぜ、そんなに不安なんだろうと考えると、それはどこまでも難しいのです。 
 
一つ一つの暗喩がどういう不安からきているのかは、わかるような、わからないような仕方で、あくまで靄(もや)の向こう側にあって、ただ少しの不安感だけが伝わってくるのです。きっと、この詩人にとっては「どういう」という形で問われる事実よりも、それ以前の不安の方が大切だったのでしょう。 
 
今期のおとめ座もまた、そうした湿ってもいなければ、カラカラに乾いている訳でもないような、「それ以前の不安」という直接的で原初的な感情を、自分なりに吐き出してみるといいかも知れません。 


参考:野村喜和夫『狂気の涼しい種子』(思潮社) 
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<プロフィール>
應義塾大学哲学科卒。卒業後は某ベンチャーにて営業職を経て、現在西洋占星術師として活躍。英国占星術協会所属。古代哲学の研究を基礎とし、独自にカスタマイズした緻密かつ論理的なリーディングが持ち味。
文/SUGAR イラスト/チヤキ