12星座全体の運勢

「断ち切るための旅に出よう」 

今年は6月21日に太陽の位置が最も高くなる夏至を迎え、夜も最も短くなったなかで、6月25日にはやぎ座3度(数えで4度)で満月を形成していきます。 

今回の満月のテーマは、「運命的な旅の始まり」。すなわち、慣れ親しんだ居場所やこれまで繰り返してきた習慣から離れ、あるいは、習慣そのものが変わってしまうような機会に応じていくこと。 

ちょうど6月の末日には各地の神社で「夏越の祓(なごしのはらえ)」が行われます。これは一年の折り返しに際して半年分の穢れを落とし、これから過ごす半年間の無病息災を祈願する行事なのですが、その際、多くの場合、「茅の輪くぐり」といって神社の境内に建てられた茅(かや)製の直径数メートルほどの大きな輪をくぐっていくのです。 

そして、旅の始まりには、往々にしてこうした「禊ぎ」の儀式を伴うもの。例えば、ジブリ映画『もののけ姫』の冒頭でも、主人公アシタカはタタリ神から受けた呪いを絶つために、まず髪を落としてから、生まれ育った村を去り、はるか西に向けて旅立っていきました。 

ひるがえって、では私たちはどんな汚れを落とし、その上で、どちらに旅立っていけばいいのでしょうか? 

おそらくそれは、アシタカがタタリ神に鉄のつぶてを撃ち込んだ真相を知ろうとしていったように、いま自分が苦しんでいる状況の根本に何があって、何が起きており、その震源地の中心に少しでも近づいていこうとすることと密接に繋がっているはず。 

今回の満月では、いま自分はどんなことを「もうたくさんだ」と感じているのか、そもそも何について知れば「こんなこと」は起きないですむのか。改めて考えてみるといいかも知れません。 
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天秤座(てんびん座)

今期のてんびん座のキーワードは、「野性味のある豊かさ」。

天秤座のイラスト
香港という都市は現在は中間人民共和国の統治下にありますが、150年以上もイギリスの植民地支配下にあった影響で、面積は狭くても高度に都市化かつ発展しており、高層アパートがおそらく世界最高密度で建てられている一方で、住民の経済格差も世界最大であり、正式な許可なく黙認されている「屋上建築物」が半世紀以上も存在しており、今後も少なくとも半世紀以上は存続すると言われています。 
 
屋上家屋と言えば、マンガ『美味しんぼ』の主人公が雑居ビルの屋上に置かれた小屋に住んでいたのが有名ですが、香港の場合はそれが大規模な「街」レベルで存在し、そこに低所得層や移民が集まっている。 
 
そんな香港の屋上家屋の生活を写真と図面と文章で紹介している『香港ルーフトップ』を見ていると、家屋の材料にはレンガやトタン、角材、ビニールシート、ベニヤ板、ロープなどさまざまな素材が使われていて、それらがあり合わせで調達されてきたことが分かります。 
 
本書に日本語版解説を寄せている大山顕は、そうして近代建築の上に、きわめて原始的な建築が乗っている様子について、「まるで建築史の地層が逆転したような光景」だと表現しており、「近代以前の香港の街並みが、下から生えてきた近代のビルによって空中に持ち上げられ保存されているように見えないだろうか」とも述べています。 
 
香港の屋上家屋には、こうした風景としての面白さに加え、何より日本社会からはとうに失われつつある「(家屋が)住み手によって改変されていく」高い自由度と、そこに入り込む偶然性によってつくり出され、さまざまな文脈を経て生み出される野性的な豊かさが存在しているように思います。 
 
日本語では「屋上屋を架す」という言葉は無駄なことをする喩えとして使われますが、現代社会に失われてしまったのは、そうした無駄や猥雑さをあっけらかんと楽しむ余裕や余地なのかも知れません。 
 
今週のてんびん座もまた、ショッピングやグルメ情報ばかりによって構成された観光ガイドには決して載らないような、独特のカオスな香りをみずからの生活に取り入れてみるといいでしょう。 


参考:ルフィナ・ウー+ステファン・カナム、GLOVA訳『香港ルーフトップ』(PARCO出版) 
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<プロフィール>
應義塾大学哲学科卒。卒業後は某ベンチャーにて営業職を経て、現在西洋占星術師として活躍。英国占星術協会所属。古代哲学の研究を基礎とし、独自にカスタマイズした緻密かつ論理的なリーディングが持ち味。
文/SUGAR イラスト/チヤキ