12星座全体の運勢

「結びつきつつある流れを感じとる」 

7月6日に二十四節気の「小暑」を迎えると、暦の上ではもう「晩夏」に入っていきます。とはいえ、まだ大部分の地域では梅雨明けがいつになるかが気になっている中、7月10日にはかに座18度(数えで19度)で新月を形成されていきます。 

そうした今回の新月のテーマは、「むすびのはたらき」。社会のさまざまな領域で分断が進行している現代において、自立と孤独を余儀なくされた個人同士が生産的に結びついていくためには、ただ雑に、あるいは、無理やりくっつけようとしても、なかなかうまくいかないという事態が、“ごくありふれた光景”となってしまっているように思います。 

たとえば、七夕に織姫と彦星が結ばれるのも、天の川という乗り越えるべきハードルがあったればこそであり、そこではいわば天の川が「むすびのはたらき」をしているのです。それはすなわち、関係性に分離や試練などの神話的要素を呼び込むことであったり、もう少し具体的に言えば、時間をかけて温められてきた“なにかがそこで産まれそうな雰囲気”であったりするのではないでしょうか。 

ちょうど温かい風を意味する夏の季語が、梅雨の始めには「黒南風(くろはえ)」、中頃には「荒南風(あらはえ)」、そして終わり頃には「白南風(しろはえ)」と呼び方を変えていくことで、梅雨明けにそのパワーを全開にする太陽(炎帝)の到来を心待ちにしていくように。 

今期はまさに、そうして暗くどんよりと感じられた風が、次第に軽くなり、白い光を放つ風となって、他ならぬ自分の日常に流入してくる時期であり、私たちもそこで自分のなかで結びつきつつある何かを全身で感じ取っていくことがテーマとなっていくでしょう。 
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牡牛座(おうし座)

今期のおうし座のキーワードは、「霊性」。

牡牛座のイラスト
全体の運勢にかいた「むすびのはたらき」とは、言ってみればスピリチュアリティの次元の話ですが、禅を世界的に広めたことで知られる鈴木大拙は、その主著『日本的霊性』の中で、スピリチュアリティの訳語として「霊性」という言葉を用いつつ、特定の宗教の教理に縛られず、体験的に把握される宗教的な人間の本性として定義づけていました。 
 
『日本的霊性』が出版されたのは戦争末期の昭和19年(1944)のことで、大拙は当時盛んに唱えられていた「日本精神」という時代迎合的な言葉に反発して、それでは捉えられないものとして霊性という言葉をあえて使ったのでした。 
 
中でも第五編は「金剛経」という題で、インドの経典や中国の禅が中心に取り上げつつ、禅特有のロジックについて延べられているのですが、と同時に、ここは大拙の霊性論の本質にかかわる非常に重要な位置づけともなっているように思います。 
 
これを延べ書きにすると、「仏の説き給う般若波羅蜜というのは、すなわち般若波羅蜜ではない。それで般若波羅蜜と名づけるのである」。こういうことになる。これが般若思想系の根幹をなしている論理で、また禅の論理である。また日本的霊性の論理である。ここでは般若波羅蜜という文字を使ってあるが、その代わりにほかのいろいろの文字を持って来てもよい。これを公式的にすると、 
 AはAだというのは、 
 AはAでない、 
 故に、AはAである。 
これは肯定が否定で、否定が肯定だということである。」 
 
つまり、霊性のはたらきもまた、論理的には「AはAでない、故に、AはAである」という矛盾を必ず含んでいて、通常の日常的な言葉とはまったく異ったものであるということ。 
 
たとえば、Aのところに「光」という言葉を入れてみると「光は闇である(光ではない)、故に、光は光なのだ」となりますし、「女」を入れれば「女は男である(女ではない)、故に、女は女なのだ」となる訳ですが、こういうことを実際に経験されている方は少なくないのではないでしょうか。 
 
ただ、大拙は霊性のはたらきというものを、そうした個人的体験に委ねるだけでなく、それを論理として組み上げることで、ひとつの強靭な思想にしていこうとしたのです。

今期のおうし座もまた、そうしてみずからの霊性的体験を言語化して、自分なりに試行錯誤してみるといいでしょう。 


参考:鈴木大拙、『日本的霊性 完全版』(角川ソフィア文庫) 
12星座占い<6/27~7/10>まとめはこちら
<プロフィール>
應義塾大学哲学科卒。卒業後は某ベンチャーにて営業職を経て、現在西洋占星術師として活躍。英国占星術協会所属。古代哲学の研究を基礎とし、独自にカスタマイズした緻密かつ論理的なリーディングが持ち味。
文/SUGAR イラスト/チヤキ