12星座全体の運勢

「結びつきつつある流れを感じとる」 

7月6日に二十四節気の「小暑」を迎えると、暦の上ではもう「晩夏」に入っていきます。とはいえ、まだ大部分の地域では梅雨明けがいつになるかが気になっている中、7月10日にはかに座18度(数えで19度)で新月を形成されていきます。 

そうした今回の新月のテーマは、「むすびのはたらき」。社会のさまざまな領域で分断が進行している現代において、自立と孤独を余儀なくされた個人同士が生産的に結びついていくためには、ただ雑に、あるいは、無理やりくっつけようとしても、なかなかうまくいかないという事態が、“ごくありふれた光景”となってしまっているように思います。 

たとえば、七夕に織姫と彦星が結ばれるのも、天の川という乗り越えるべきハードルがあったればこそであり、そこではいわば天の川が「むすびのはたらき」をしているのです。それはすなわち、関係性に分離や試練などの神話的要素を呼び込むことであったり、もう少し具体的に言えば、時間をかけて温められてきた“なにかがそこで産まれそうな雰囲気”であったりするのではないでしょうか。 

ちょうど温かい風を意味する夏の季語が、梅雨の始めには「黒南風(くろはえ)」、中頃には「荒南風(あらはえ)」、そして終わり頃には「白南風(しろはえ)」と呼び方を変えていくことで、梅雨明けにそのパワーを全開にする太陽(炎帝)の到来を心待ちにしていくように。 

今期はまさに、そうして暗くどんよりと感じられた風が、次第に軽くなり、白い光を放つ風となって、他ならぬ自分の日常に流入してくる時期であり、私たちもそこで自分のなかで結びつきつつある何かを全身で感じ取っていくことがテーマとなっていくでしょう。 
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魚座(うお座)

今期のうお座のキーワードは、「重さを愛する」。

魚座のイラスト
恋愛にしろ仕事にしろ、結局「ここにいるのは誰でもよかったんだよな」と感じたり思ったりすることは、珍しいことではないでしょう。たまたまその席が空いていたから自分が座っただけで、そこには何の必然性もなければ、意味もない。そうして、ただ無意味の連続としての人生を私たちは生き、死んでいくのだと。 
 
けれど、一方で私たちはそんなことには耐えられない、という思いも抱えています。かけがえのない自分でありたいし、自分の人生にも何かしらの意味があってほしいし、自分にしかやり遂げられないことをやって死んでゆきたい、と。 
 
ミラン・クンデラの恋愛小説『存在の耐えられない軽さ』は、そのタイトルが示す通り、私たちが「かけがえのない誰か」になることがいかに重くて、苦しくて、面倒なことかを読者に問いかけていくのですが、その中で、カレーニンという犬と飼い主で夫を思う一途な女性であるテレザとの関係を考察したこんな文章があります。 
 
人間と犬の愛は牧歌的である。そこには衝突も、苦しみを与えられるような場面もなく、そこには、発展もない。カレーニンはテレザとトマーシュを繰り返しに基づく生活で包み、同じことを二人から期待した。 
もしカレーニンが犬ではなく、人間であったなら、きっとずっと以前に、「悪いけど毎日ロールパンを口にくわえて運ぶのはもう面白くもなんともないわ。何か新しいことを私のために考え出せないの?」と、いったことだろう。このことばの中に人間への判決がなにもかも含まれている。 
人間の時間は輪となってめぐることはなく、直線に沿って前へと走るのである。これが人間が幸福になれない理由である。幸福は繰り返しへの憧れなのだからである。」 
 
確かに人間はあらゆることに飽きてしまうし、永遠に「満たされる」ということを知らない存在です。その意味では、作者の云う通り、男なんかよりも犬を愛している方がよっぽど幸せになれるのかも知れません。 
 
とはいえ、たとえ不幸であったとしても、「かけがえのない存在」を選んでしまう人間を、作者はけっして笑いはしないでしょう。面倒でも、葛藤したとしても、やっぱり何者かであろうとしてしまう人間味そのものを、この小説はどこか深いところで肯定しているように思います。 
 
今期のうお座もまた、恋愛であれ仕事であれ、そうした面倒や葛藤をあえてみずから抱え込んでみるのも悪くないでしょう。 


参考:ミラン・クンデラ、千葉栄一訳『存在の耐えられない軽さ』(集英社) 
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<プロフィール>
應義塾大学哲学科卒。卒業後は某ベンチャーにて営業職を経て、現在西洋占星術師として活躍。英国占星術協会所属。古代哲学の研究を基礎とし、独自にカスタマイズした緻密かつ論理的なリーディングが持ち味。
文/SUGAR イラスト/チヤキ