12星座全体の運勢

「死に寄り添う生」

8月7日の「立秋」はまさに真夏の盛りですが、日本の伝統的な季節感では夏がピークに達するときに秋がスタートし、人びとは小さな秋の兆しを探し始めてきたのです。そして、そんな立秋直後の8月8日にしし座の新月を迎えていきます。 

今回の新月は土星(体制、課題)と天王星(転覆、改革)と二等辺三角形を形成するため、今年一年を通じて進行していく既存の権威やこれまで機能してきた体制側の自己防衛や無意識の視野狭窄を破壊して再構築プロセスにかなり直結していくものとなるでしょう。 

その上であえてそれを端的にテーマ化するなら、「死に寄り添う生の在り方を探る」といったものになるように思います。例えばこれは、これまでのように社会を強固で一枚岩的な現実に統合せんとしてきた近代的な考え方においては、死は完全な敵であり、それに対して断固として立ち向かうか、徹底的に視界から排除されるべきものだった訳ですが、超高齢化が進展するポスト成長時代のこれからは、老いのプロセスの中で、徐々に死を受け入れ、和解し同化していく中で、生と死のゆるやかなグラデーションを取り戻していくことが求められていく、ということともリンクしてくるはず。 

ちょうど芭蕉の句に「閑(しづか)さや岩にしみ入る蝉の声」という句がありますが、短い一生ながら懸命に鳴いている蝉とその声はまさに「いのち」の象徴であり、一方で、奥深い山の池のほとりで苔むして黒々としている「岩」とは「死」の象徴とも言えるのではないでしょうか。 

そして、蝉の声が岩に「しみ入る」というのは、まさに意識の静寂のさなかで「生と死」が融合し、その連続性を取り戻していく宇宙的とも言える世界観を表現したもの、とも解釈できます。今期の私たちもまた、そんな句のように、死を敵と考えたり、排除するのではなく、どうしたら和解していけるか、また、個人的なものであれ社会的なものであれ、死とは何かをいかに問い直していけるかが問われていくように思います。 
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山羊座(やぎ座)

今期のやぎ座のキーワードは、「弱さゆえにこそ」。

山羊座のイラスト
日本人の平均寿命も80年を超えた現代では、「限られた時間の中でどれくらい強く生を燃焼させるか」という問いの立て方はもはや時代遅れなのかもしれません。 
 
とは言え、現在のコロナ禍において自分たちの生き死にに大きく関わるようなことさえも、自分たちで決定することができないという状況にあって、やはりそのような問いを地で生きた者、すなわち、いい意味で「わがまま」に生きた者の言葉には、独特の凄味と説得力が感じられるのではないでしょうか。  
 
例えば、日本を代表する文豪である夏目漱石は、50年でその生涯を終えました。彼はある時、まだ大学卒業前の弟子とも言えない弟子にあてて、自らの弱さをいかに扱うか、という問題について次のように手紙にしたためています。 
 
他人を決しておのれ以上遥かに卓越したものではない。また決しておのれ以下に遥かに劣ったものではない。特別の理由がない人には僕はこの心で対している。」  
 
君、弱い事をいってはいけない。僕も弱い男だが弱いなりに死ぬまでやるのである。やりたくなったってやらなければならん。君もその通りである。」 
 
 「死ぬのもよい。しかし死ぬより美しい女の同情でも得て死ぬ気がなくなる方がよかろう」  
 
前年に『吾輩は猫である』を書き始めて作家として出発した漱石は、当時39歳。先の文言は、『猫』への大町桂月の悪口などにはめげないで書き続けるという宣言の後の一節でしたが、これぞまさに、おのれの弱さに悩みながらも、文句や愚痴を言ってへたれるのではなく、自分がしたいと思ったことを存分にやり切った漱石ならではの助言と言えます。 
 
結果的に、漱石はこの年『坊つちゃん』や『草枕』を書きあげているのですが、この手紙には既に後の代表作『こころ』にも通じていくような師弟関係の熱さがこもっているように感じられますし、人びとがじっくり手紙を書くことをしなくなって失われたものがいかに大きいかも気付かせてくれるように思います。 
 
今期のやぎ座もまた、いつの間にか自分が失っていたものがあるとしたら、それは何だろうかということを一つ考えてみるといいかも知れません。 


参考:三好行雄編『漱石書簡集』(岩波文庫)
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<プロフィール>
應義塾大学哲学科卒。卒業後は某ベンチャーにて営業職を経て、現在西洋占星術師として活躍。英国占星術協会所属。古代哲学の研究を基礎とし、独自にカスタマイズした緻密かつ論理的なリーディングが持ち味。
文/SUGAR イラスト/チヤキ