12星座全体の運勢

「こじらせた私との和解と解放」 

前回の9月7日のおとめ座新月のテーマは「プライドの置きどころ」でした。そして9月23日の「秋分」の直前には、9月21日にうお座28度(数えで29度)で満月が形成されていきます。 

そんな7日のおとめ座新月から21日のうお座満月までの期間をあえてテーマ化するとすれば、それは「かつて否定した自分自身との和解」ということになるのだと言えるかも知れません。 

長期化したコロナのもたらす深い沈鬱のなかで、私たちはいつしか以前はごく当たり前に肯定していた衝動や実感を我慢したり、殺したり、埋めていくことを余儀なくされるようになっていました。しかし、今回の満月ではそうしてかつて自分のなかで抑え込んだり、なかったことにしていた個人的実感や衝動をみだりに否定せず、あらためて受け入れた上で、いかにそれが自分にとって大切で、切り離せないものであるかを洞察していくという流れが、自然に起きていきやすいのだと言えます。 

満月というのは、自分の中に潜在していた思いや願いにスポットライトが当たっていきやすいタイミングですが、今回は「そうそう、こういう変なところも自分なんだよね」とか、「他人と比べて苦しんできたけど、これも自分なのかも知れない」といったように、どこかでプライドをこじらせ、長いあいだ囚われていた考えから少しだけ解放されていくことができるはず。 

その意味で今期は、自分の中の、どんな部分を否定して影にしてきたのか、あらためて思いを巡らせてみるといいでしょう。 
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双子座(ふたご座)

今期のふたご座のキーワードは、「時代の子」。

ふたご座のイラスト
すべての個人は、並外れた個性の体現者であると同時に、時代の子である――。こうしたテーゼを批評家の安藤礼二は、三島由紀夫をして「昭和文学のもつとも微妙な花の一つ」と言わしめた作家の稲垣足穂に向け、『光の曼荼羅』に収録された「未来の記憶――稲垣足穂『弥勒』論」において「1900年という象徴的な年に生まれた足穂は人生においても、またその作品世界においても、自らの個性を可能にした条件について」決定的な認識を持っていたのだとして、稲垣足穂自身の記述を引用しています。 
 
「マックス=プランクが、「近世」を絶縁する量子常数「h」を発表した同じ年の、同じ十二月の終りに、私は大阪船場に生まれた。この明治三十三年の十月には、ドイツのツェペリン伯の第一号飛行船がコンスタンツ湖上の空に浮かんだ。八月には、デイトンの自動車製造業者ライト兄弟が、彼らの最初のグライダーを北カロライナ州の海岸に運び出している。以来、年末ごとに彼等はキッティフォークに出向いて、とうとう四年目の1903年12月17日に、複葉滑翔機を機械力によって空気の座布団の上に載っけたのだった。大阪には、博覧会、メリーゴーラウンド、ウォーターシュート、大阪ホテル、ビヤホール、活動写真、ルナパーク等などが相次いで現われた」(「随筆イタ・マキニカリス」) 
 
さらに安藤は、この同じ年の象徴的出来事として、フロイトの『夢判断』の刊行、すなわち意識の深層に広がる「無意識世界」の発見を挙げて次のように述べています。 
 
無意識の世界においては、日常の時間秩序は覆り、崩壊してしまう。過去と現在が共存し、両者のあいだに判然とした区別がなくなってしまう。そして、その夢の世界でもっとも力を発揮するのは、うつろいやすい現在ではなく、不滅の時間を象徴する過去の方なのである。」 
 
はじめて生命をもった原初の物質が、死(タナトス)と生(エロス)という二つの方向に引き裂かれながら積み重ねてきた大いなる生命進化の歴史。それが夢の世界、すなわち人間に新たな共同主観性を与える可能性をもった「無意識世界」に、堆積されていったのである。「無意識」の発見は、不滅の時間について夢想することを、多くの人々に、より現実的に可能にさせた。現代芸術を成り立たせている、あらゆるイメージの源泉はここにある。」 
 
足穂にとっての未来とは、「人間の世界が、その外部と内部からともに拡大していく」ことで、「物質の世界もまた徹底的に刷新される」その先にはじめて立ち現れてくるものだったのです。 
 
今期のふたご座もまた、自身の未来を展望していくためにも、自分がどんな象徴的な年に生まれ、いかなる時代の子であるのかということについて、改めて認識を深めてみるといいでしょう。 


参考:安藤礼二『光の曼荼羅 日本文学論』(講談社文芸文庫)
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<プロフィール>
應義塾大学哲学科卒。卒業後は某ベンチャーにて営業職を経て、現在西洋占星術師として活躍。英国占星術協会所属。古代哲学の研究を基礎とし、独自にカスタマイズした緻密かつ論理的なリーディングが持ち味。
文/SUGAR イラスト/チヤキ