12星座全体の運勢

「一石を投じる」 

暦の上で冬に入る「立冬」直前の11月5日、いよいよ紅葉も深まって、冬支度を急いでいくなか、さそり座の12度(数えで13度)で新月を形成していきます。 

「危機と変革」を司る天王星へと思いっきり飛び込んでいく形で迎える今回の新月のテーマは、「リスクを引き受ける力」。 

それはすなわち、普通に日常生活を送っている分にはまず見つからないような可能性を徹底的に追求し、そのために必要な材料をかき集め、まだ誰も試みていないことに手を出してみる勇気であったり、たとえそれがその界隈のタブーを破る行為であったり、厄介な相手に睨まれることになったとしても、ある種の「賭け」に出ていく姿勢に他なりません。 

私たちの心の深層に潜んでいる集合的な変革衝動というのは、社会や現実の屋台骨を担う恒常性(ホメオスタシス)を維持したいという欲求にかならず切断・阻止・妨害される運命にある訳ですが、その意味で今期はこうした葛藤や対立に伴う緊張をヒリヒリと感じつつも、ひょんなことから「不満を大きく」したり、「自分を黙らせておけなくなって」、「もっとよりよくなるはず」という誘惑がどうにもできないほどに強烈なものなっていきやすいのだと言えるでしょう。 

ギリシャ神話では、トロイア戦争に参加した女神エリスが「戦いの兆し」を持って軍船の上に立って雄叫びを上げると、兵士たちは闘争心と不屈の気力が湧き、戦いを好むようになったとされていますが、今期の私たちもまた、そうしたこれまでの膠着状態を破るための「一石を投じる」行動や企てが促されていくはずです。 
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魚座(うお座)

今期のうお座のキーワードは、「禅機」。

魚座のイラスト
瞬間的・直観的に修行者に与えられるある種の気付きや、それが起こるプロセスのことを、禅宗では「禅機」と呼びますが、それは何も特別なことではなく、眠くなったときにスッと眠りに入って、そこで日中に削られたなにかが回復する、というある種のバランス感覚であり、私たち日本人はそうしたはたらきを例えば「わび・さび」という言葉でも表現してきたんではないでしょうか。 
 
編集者の赤田祐一は、『spectator』の「わび・さび」特集号で、「“わび・さび”は「見つける」ものというより「見つかってしまう」ものであり、知識や理屈ではなく、むしろそこからはずれてしまうということのようだ」と書きながら、頻繁に旅行に出かけては岩や森にシャッターを切りまくっていた漫画家の水木しげるの言葉を引用しています。 
 
「わたしは賢いんです。見るところがなくても、自然の中にいるとね、岩や樹が勝手に妖怪の造形を造ってくれるんです」 
 
つまり、どうやら水木写真と「わび・さび」はとても似ているということらしいのですが、いくつかの旅行に同行していた作家の荒俣宏は次のようにも書いています。 
 
「日本では心霊写真と称して、曖昧な陰翳を霊の姿と解釈することが流行している。基本はあれと同じ、偶然に生まれたロールシャッハテストみたいなものだが、水木大先生は霊の顔などというあたり前なイメージを見つけ出すのではない。もっと、根源的で力強い自然の精(エロス)のようなものを写真に撮られるのだ」 
 
ここにさらに、実験音楽家のジョン・ケージが80年代に雑誌『遊』に残した言葉を引用しておきたいと思います。 
 
ポットの音―できれば鉄瓶の方がのぞましいけれど―が湧いた瞬間だっていい。寿司の肴の色が変わるか変わらないかの分かれ目だっていい。広重の雨がポツンと降ってきた矢先だっていい。そこに禅機があり、音楽がある。日本人はそんな禅機を禅以外にもたくさんもっている。俳句もそのひとつだ。」 
 
今期のうお座もまた、写真や詩であれ、散歩やただぼーっとすることであれ、そうした禅機と戯れたり、誘われたりする時間を大切にしてみるといいかもしれません。 
 
 
参考:エディトリアル・デパートメント『スペクテイター〈43号〉 わび・さび』(幻冬舎) 
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<プロフィール>
應義塾大学哲学科卒。卒業後は某ベンチャーにて営業職を経て、現在西洋占星術師として活躍。英国占星術協会所属。古代哲学の研究を基礎とし、独自にカスタマイズした緻密かつ論理的なリーディングが持ち味。
文/SUGAR イラスト/チヤキ