12星座全体の運勢

「あえて空気を読まない」 

落葉の季節である「小雪」をいよいよ迎えていこうかという11月19日に、今年2回目の月食満月がおうし座27度(数えでは28度)で起きていきます。 

そんな今回の満月のテーマは「逆張りによる自己解放」。それは与えられる幸せや恵みをただ素朴に受け取り、自然な流れとして黙って従っていくのではなく、むしろ世の中の「普通」やこれまでの自分だったら「当然」と感じるような展開に思い切って反することで、人生に対する新しい見方・考え方を抱くことをみずから可能にしていくということに他なりません。 

つまり、迷ったらあえて大変そうだな、とか普通ならこうしないな、という方を選んでいくということで、これは変に豊かな経験にとらわれた愚かさから脱却し、結果的に心からの「若返り」を図っていくということでもあります。 

たとえば、今でこそ本来の季節以外でも手に入る花が増えましたが、昔は冬には花は咲かないのが普通でした。そんな中でキンセンカの花は歳時記では春の季語ですが、花期がひときわ長いために、「時不知(ときしらず)」と呼ばれ、冬でも咲いています。 

しかし本来、おそらく一番の時不知は私たち人間でしょう。ときに時間の流れや法則さえも超えてしまうことこそが人間の自然な本質でもあり、年齢や性別、社会的立ち位置などに囚われず、行動していくことは人間的な愉しみの原点でもあるように思います。その意味で、今期のあなたもまた、そんな「時不知」のひとつとなって、狂い咲いていくことになるかも知れません。 
>>星座別の運勢を見る

天秤座(てんびん座)

今期のてんびん座のキーワードは、「偶然を飼い馴らさない」。

天秤座のイラスト
なにか「あっ!」と驚くことが起きた時、私たちはしばらくのあいだ自分の身に起こったことをどう捉えていいのか分からず、困惑してしまうことがあります。そして、そうした混乱状態に我慢がきかずに、目の前の事態をさっさと「単なる偶然」か「起こるべく起きた必然」のどちらかに帰着させようとしてしまいがちではないでしょうか。 
 
前者の連続は精神に非常にストレスになりますから、どうしても私たちは後者として判断しがちであり、結果的に「最近何も変わったことが起きない」という心理へと結びついていったり、それが集積して「いつまでも政治が変わらない」という話になったりしていく。 
 
こういう話を見聞きしたとき、いつも思い出す一節があります。それは「たまたま」や「ふと」という事態について真剣に取り組んだ稀有な哲学者のひとりである九鬼周造の『偶然性の問題』の次のようなくだり。 
 
偶然性に等価する感情はいかなる感情か。「奇遇」「奇縁」などの語の存在が示すごとく、偶然性の感情等価は驚異の情緒である。必然性が平穏という沈静的感情を有つのは、問題が分析的明晰をもって「既に」解決されているからである。それに反して偶然性が驚異という興奮的感情をそそるのは問題が未解決のままに「眼前に」投出されるからである。驚異の情緒は偶然性の時間性格たる現在性に基いている。要するに、必然はその過去的決定的確証性のために、弛緩および沈静の静的な弱い感情より有たないが、可能および偶然は問題性のために、緊張および興奮の動的な強い感情をもたらすのである。」 
 
ここで「驚異の情緒は偶然性の時間性格たる現在性に基いている」と書いているのが、先の「あっ!」にあたる訳ですが、九鬼がここで言わんとしているのは、偶然と必然というのは本来まったく対立する概念ではないということ。 
 
ただ、偶然はつねに「現在性」という時制に基づいて「驚異という興奮的感情」をもたらす一方で、必然はそれを「過去」という時制に基づいて、「既に解決済み」の出来事として取り扱おうとするだけで、私たちはいつも偶然を必然に読み替えていこうとしているし、それがうまく成功したとき、新しい「物語」が発生し、それを「運命」と感じるのです。 
 
その意味で、今期のてんびん座は、そうした「読み替え」が自然に起きてくるまで、「偶然」やそれがもたらす「驚異」ないし「困惑」を、下手に飼い馴らそうとせず、あえて放置していくだけの我慢強さが問われていくことでしょう。 
 
 
参考:九鬼周造『偶然性の問題』(岩波文庫)
12星座占い<11/14~11/27>まとめはこちら
<プロフィール>
應義塾大学哲学科卒。卒業後は某ベンチャーにて営業職を経て、現在西洋占星術師として活躍。英国占星術協会所属。古代哲学の研究を基礎とし、独自にカスタマイズした緻密かつ論理的なリーディングが持ち味。
文/SUGAR イラスト/チヤキ