12星座全体の運勢

「闇への畏敬を取り戻す」 

今年も残すところあと約一か月。占星術的には太陽がいて座に移ると、冬も深まり冷え込み厳しくなる仲冬に入ったのだと感じますが、そんな中、12月4日にいて座12度(数えで13度)で新月を迎えていきます。 

今回の新月のテーマは「新しいサイクルの到来と過去のカルマの噴出」。これはヒット作に恵まれて一躍売れっ子になったスターが、若い頃の苦労話や子供の頃のエピソードを掘り起こされて、波乱万丈ストーリーが作りあげられていくのに似ています。そうして、後者が前者に取り込まれるようなかたちで、壮大な叙事詩を織りなしていこうとするのです。 

例えば、詩人の高橋睦郎はかつて21世紀の第二年を迎える年頭に際して書いたエッセイの中で、「前世紀への反省をこめての今世紀の第一の課題は、光への過信に対する闇への畏敬ではないだろうか」と書いていました。 

ここで「光」と言っているのは、人類の進歩への無邪気な信頼であると同時に、尽きることのない人類の傲慢な欲望のこと。そして、「闇」とは人間がどうしたって暴くことのできないこの世界の不可解さであり、そういう不可解さや、簡単には説明のできないことも、この世にはあるのだと受け入れ、判断を保留にしておくだけの余白を残しておくことこそ、先に述べたような叙事詩的な感性の要となるのではないでしょうか。 

今季のあなたもまた、華やかに賑わい始める街の光景のかたわらで、冬ならではの鮮やかさで心に浮かび上がってくる数々の思い出とともに、闇の感覚を研ぎ澄ませてみるといいでしょう。 
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牡牛座(おうし座)

今期のおうし座のキーワードは、「受け止める」。

牡牛座のイラスト
現代社会はインターネットや書籍などから得られる情報が人類史上でも比較にならないくらい格段に増えた一方で、自身の直接的な体験や五感を通した素の体験が極端に希薄化してしまいました。 
 
その影響は例えば人間関係の希薄化ということとも相関関係があるように思うのですが、そうしたことと関連して思い出されるのが、「素の体験」を重視した精神科臨床医の塚崎直樹氏が実際に体験した患者のエピソードです。 
 
氏はある女性の患者さんを受け持ったとき、症状が安定せず、入退院を繰り返していたため、家族に来てもらって治療の仕方について相談したいと思ったが、家が遠方で来院が難しいということだったので、家を訪問することを申し出たのだといいます。 
 
患者さんは気乗りしない様子でしたが、最後には了解して、電車とバスと徒歩あわせて2時間あまりかけて山の中の部落内にあった患者さんの家を訪ねたが、いくら声を出してもなしのつぶてで、物陰から見られている気配はあったもののついぞ反応なく、帰ってきた。 
ところが、それからその患者さんは氏の顔を見る度に「気持ち悪い奴」「泥棒」「乞食」などと罵声を浴びせるようになり、関係が悪化したため担当医を交代したものの、病院の廊下などで激しい叫び声とともに罵声を浴びせられる理不尽な日々が2年間も続き、ある日突然それが終わったのだそうです。 
 
あの2年間が何であったかは、ついに説明がなかった。反省の声を聞くこともなかった。始まったのも唐突で、終わるのも思いがけなかった。(中略)いろいろ予想することは可能だが、詳細はわからない。無理にわかろうとすると、逆に事態を悪化させるように思える。私は、このことがあってから、わからないことを、そのまま引き受けていくことが医者の仕事だと思うようになった。医者がこういう考えを持っていることは、たぶん患者の側からはわからないだろう。」 
 
おうし座から数えて「受容」を意味する8番目のいて座で新月を迎える今期のあなたもまた、人と人との間にもこうした根源的な「闇」の入り込む余地があるのだということを思い出してみるといいでしょう。 
 
 
参考:塚崎直樹『虹の断片』(新泉社) 
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<プロフィール>
應義塾大学哲学科卒。卒業後は某ベンチャーにて営業職を経て、現在西洋占星術師として活躍。英国占星術協会所属。古代哲学の研究を基礎とし、独自にカスタマイズした緻密かつ論理的なリーディングが持ち味。
文/SUGAR イラスト/チヤキ