12星座全体の運勢

「闇への畏敬を取り戻す」 

今年も残すところあと約一か月。占星術的には太陽がいて座に移ると、冬も深まり冷え込み厳しくなる仲冬に入ったのだと感じますが、そんな中、12月4日にいて座12度(数えで13度)で新月を迎えていきます。 

今回の新月のテーマは「新しいサイクルの到来と過去のカルマの噴出」。これはヒット作に恵まれて一躍売れっ子になったスターが、若い頃の苦労話や子供の頃のエピソードを掘り起こされて、波乱万丈ストーリーが作りあげられていくのに似ています。そうして、後者が前者に取り込まれるようなかたちで、壮大な叙事詩を織りなしていこうとするのです。 

例えば、詩人の高橋睦郎はかつて21世紀の第二年を迎える年頭に際して書いたエッセイの中で、「前世紀への反省をこめての今世紀の第一の課題は、光への過信に対する闇への畏敬ではないだろうか」と書いていました。 

ここで「光」と言っているのは、人類の進歩への無邪気な信頼であると同時に、尽きることのない人類の傲慢な欲望のこと。そして、「闇」とは人間がどうしたって暴くことのできないこの世界の不可解さであり、そういう不可解さや、簡単には説明のできないことも、この世にはあるのだと受け入れ、判断を保留にしておくだけの余白を残しておくことこそ、先に述べたような叙事詩的な感性の要となるのではないでしょうか。 

今季のあなたもまた、華やかに賑わい始める街の光景のかたわらで、冬ならではの鮮やかさで心に浮かび上がってくる数々の思い出とともに、闇の感覚を研ぎ澄ませてみるといいでしょう。 
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乙女座(おとめ座)

今期のおとめ座のキーワードは、「加害者像の構築」。

乙女座のイラスト
ここのところ京王線の事件など、社会的孤立や社会的なつながりの欠如によって生まれた「無敵の人」による犯罪が続き、大きな社会問題と化してきつつあります。 
 
「無敵の人」とは、恋人や友人関係が破綻していたり、職を失うなどして、他に失うものがない状態で犯罪を実行する者を指しますが、先に問題と言ったのは今の社会状況では「普通の人」がいつ何どき「無敵の人」になるか分からず、また逆に誰もが凶悪事件の被害者になりえる状況を生きているという事態に、まだ多くの人の認識や準備が追いついていないように見えるからです。 
 
例えば、現行の日本の法制度では、殺人事件の被害者の家族は、加害者との一切の接触を法的に禁じられており、資料を読むことでしか、加害者との接点を得ることができないようになっていますが、カウンセラーの信田さよ子は、『家族と国家は共謀する』のなかで、被害者となって大きな喪失と世界観の分裂・崩壊にまで至らしめられた人にとって、実質的に救済の糸口となるのは、加害者について深く知ることだけだと述べています。 
 
逆に、「いつまでも過去の経験にこだわっていないで、前向きの姿勢で、プラス思考で、未来を見つめつつ生きよう」といった、あまりにベタなアドバイスはほとんど効果を持ちません。 
 
信田は被害者が「どうしてまた?」「他でもないこの私に」このような信じがたい出来事が起きてしまったのか、という「なぜ」を解きたい衝動にようやくたどり着いた先で、やっと「自らの受けた被害・苦しみに「意味」を与える信念体系を再建」するという段階に入ることができるのだと強調した上で、その実際の中身は、どうしても加害者像の構築という「遠大でエネルギーを要する作業」となるしかなく、それはときに「グロテスクで哀れな行動をとることによってしか再び積み上げられることない」場合もあるのだとも述べています。 
 
おとめ座から数えて「心の支え」を意味する4番目のいて座で新月を迎える今期のあなたもまた、ケアという言葉から連想される甘やかな慰撫や優しさからはほど遠い、壊れたものの再建や支援のリアルについて思いを馳せてみるといいでしょう。 
 
 
参考:信田さよ子『家族と国家は共謀する』(角川新書)
12星座占い<11/28~12/11>まとめはこちら
<プロフィール>
應義塾大学哲学科卒。卒業後は某ベンチャーにて営業職を経て、現在西洋占星術師として活躍。英国占星術協会所属。古代哲学の研究を基礎とし、独自にカスタマイズした緻密かつ論理的なリーディングが持ち味。
文/SUGAR イラスト/チヤキ