12星座全体の運勢

「最初の思い」 

年末が近づき、慌ただしさが増すとともに、華やかに街がにぎわうこの季節。そんな中、冬至直前の12月19日にふたご座27度(数えで28度)で今年最後の満月を迎えていきます。 

ふたご座28度のサビアンシンボルは「破産宣告を認められた男」。ここではもはや「優れた個人であることを証明する」という不毛な競争のフェーズが終わり、これまでどこかで違和感を感じていたアイデンティティやセルフイメージを不可逆的に壊していくことがテーマとなっていきます。 

ただ、それは本質的には必ずしもネガティブなものではなく、どんな人間もひとりで生きている訳ではない以上、自分がどんなコミュニティに属していて、いかなる仕方で持ちつ持たれつの網目の中にあるのかということを改めて可視化していく通過儀礼であると同時に、救われたい、誰かに、ないし社会に良いことをしたい、と心から最初の思いを発揮しなおしていく大きな節目ともなっていくように思います。 

ちょうど、この時期には「南天」が鮮やかな赤い実をつけますが、実に咳止めの薬効があり、葉にも腐敗防止の作用があるとされ、何より「難を転じる」という語呂合わせから、古来より縁起がいいとされてきました。 

今期のあなたもまた、みずからの未熟さ、つたなさを念頭に初心にかえり、これから自分は何をしていきたいのか、という「最初の思い」を真っ白な紙の上に書き出してみるといいでしょう。 
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牡牛座(おうし座)

今期のおうし座のキーワードは、「火星の人類学者」。

牡牛座のイラスト
私たちは親子であれ夫婦であれ友人であれ、当然のようにお互いのことを分かり合えているかのように暮らしていますが、そうした“ふり”はもういっそ止めてしまってもいいのではないでしょうか。一読してそう思わせてくれるのがアメリカの精神科医オリヴァー・サックスの『火星の人類学者』であり、その中にアスペルガー症候群のテンプル・グランディンという女性の生活を描いた同名のエッセイがあります。 
 
彼女は動物学の博士号をとってコロラド州立大学の教授としてごく通常の生活を営んでおり、一見したところ世間にたいへんうまく適応しているような印象を与えるのだそうです。 
これは周囲とのやり取りが苦手なアスペルガー症には珍しいケースですが、にも関わらず、彼女自身はみずからを称して「私は火星に来た人類学者のようなものだ」と著者にその心情を告白するのです。 
 
『ロミオとジュリエット』には首をひねったし(「いったい彼らはなにをしているのか、 さっぱりわかりませんでした」)『ハムレット』となると、話が行ったり来たりするのでわけがわからなかった。それを彼女は、「前後関係のむずかしさ」と言ったが、それよりも登場人物に共感できず、込みいった動機や意図が理解できないせいではないかと思われた。「単純で力強く、普遍的な」感情なら理解できるが、複雑な感情やだましあいとなるとお手上げだという。「そういうとき、わたしは自分が火星の人類学者のような気がし ます」と彼女は言った。」 
 
フィールドに出向いた研究者というのは、得てして孤独な存在です。ふつう、現地には単独でおもむくものですし、最初は相手の話す言葉もまるっきりわからないことも稀ではありません。まして相手が何を考えているかなど、及びもつかないわけで、そういう状況の極限に到達したのが、もし火星人がいるとして、そこへ出向いた地球人研究者の置かれた立場であり、彼女も自分はそれにきわめて近いのだと言いたかったのでしょう。実際、著者は先の引用部分のあとに、「そういう女の声には、苦痛とあきらめ、決意、そして容認がないまぜになっているように思われた」と付け加えています。 
 
こうしたアスペルガー症の人たちはマイノリティではありますが、確実に存在しますし、そこまで極端とまではいかなくても、大なり小なり人の気持ちを汲み取ったり、自然に付き合ったりするのが不得手な人というのは想像以上に多いのではないでしょうか。 
 
その意味で、おうし座から数えて「充足」を意味する2番目のふたご座で満月を迎えていく今期のあなたもまた、他者のことは分からない前提で、自分はこの世界で何を感じ、存分に味おうとしているのか、改めてみずからに問うてみるといいかも知れません。 
 
 
参考:オリヴァー・サックス、吉田利子訳『火星の人類学者―脳神経科医と7人の奇妙な患者』(ハヤカワ文庫NF) 
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<プロフィール>
應義塾大学哲学科卒。卒業後は某ベンチャーにて営業職を経て、現在西洋占星術師として活躍。英国占星術協会所属。古代哲学の研究を基礎とし、独自にカスタマイズした緻密かつ論理的なリーディングが持ち味。
文/SUGAR イラスト/チヤキ