12星座全体の運勢

「最初の思い」 

年末が近づき、慌ただしさが増すとともに、華やかに街がにぎわうこの季節。そんな中、冬至直前の12月19日にふたご座27度(数えで28度)で今年最後の満月を迎えていきます。 

ふたご座28度のサビアンシンボルは「破産宣告を認められた男」。ここではもはや「優れた個人であることを証明する」という不毛な競争のフェーズが終わり、これまでどこかで違和感を感じていたアイデンティティやセルフイメージを不可逆的に壊していくことがテーマとなっていきます。 

ただ、それは本質的には必ずしもネガティブなものではなく、どんな人間もひとりで生きている訳ではない以上、自分がどんなコミュニティに属していて、いかなる仕方で持ちつ持たれつの網目の中にあるのかということを改めて可視化していく通過儀礼であると同時に、救われたい、誰かに、ないし社会に良いことをしたい、と心から最初の思いを発揮しなおしていく大きな節目ともなっていくように思います。 

ちょうど、この時期には「南天」が鮮やかな赤い実をつけますが、実に咳止めの薬効があり、葉にも腐敗防止の作用があるとされ、何より「難を転じる」という語呂合わせから、古来より縁起がいいとされてきました。 

今期のあなたもまた、みずからの未熟さ、つたなさを念頭に初心にかえり、これから自分は何をしていきたいのか、という「最初の思い」を真っ白な紙の上に書き出してみるといいでしょう。 
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双子座(ふたご座)

今期のふたご座のキーワードは、「追創造」。

ふたご座のイラスト
時流にかなって売れたい、勝ち馬に乗りたい、できるだけリスキーな勝負は避けたいというのは、ある意味で普遍的な人間の心理ですが、最近ではそうした「時流」や「勝ち馬」、「安パイ」というイメージもまた広告代理店やメディアによってでっち上げられた幻想に過ぎないということも、エンタメ業界を中心にだいぶ広く知られてきたように思います。 
 
例えば「音楽史」で言えば、「正統派」と言うといつだってクラシック中心、バッハやベートーヴェン、ブラームスやモーツァルトを輩出したドイツ中心、そして器楽中心というイメージがありますが、そうしたイメージに反旗を翻してみせたのが、石井宏の『反音楽史』であり、そこで石井は正統から排除されてきた声楽や、イタリア・オペラを取り上げて音楽史を書き換えつつも、読者に次のような問いを投げかけています。 
 
こうした差別と偏見―クラシックは高級で、ポップスは低級、クラシックの演奏家は芸術家だがポップスの演奏家は流行歌手やバンドマンに過ぎない―それはいまもはびこっていて、世界的に信じられている。しかし、ほんとうに音楽には高級と低級の差があるのだろうか。ほんとうに美空ひばりは低級なのだろうか。ベートーヴェンを聴かずにひばりばかり聴いている人間はほんとうに低俗な人間であるのだろうか」 
 
むろんその答えは「否」である訳ですが、石井は何よりも弾き手(歌い手)がいて、聴き手がいて、音楽が成り立つという考え方に立ち戻るべきであり、いまのクラシック界にはそれがないと批判しています。例えば、「悲しい酒」は美空ひばりのために書かれた曲ではなく、最初は別の男性歌手がレコードに吹き込んだのですが、それはヒットせず、のちに美空ひばりの絶唱によって世に出て初めて百万人の愛唱歌となったのです。 
 
つまり、紙に書かれた譜面だけが音楽ではないということなのである。演奏者という存在があって、それが音になったとき、音楽は初めて音楽になるのである。譜面とはあくまで台本であり、台本だけでは芝居にならない。そこに役者という存在があっての芝居なのである。くり返せば音楽は演奏する(歌う)人がいて譜面から音を再生するときに音楽となるのだが、その際演奏する(歌う)人の行為は追創造と呼ばれ、一種の創造行為である。この追創造する人の良し悪しによって原曲が左右されることは右の「悲しい酒」の例にみたとおりである。」 
 
その意味で、自分自身の星座であるふたご座で満月を迎えていく今期のあなたもまた、ひとりの追創造者として、自分は何を弾き、歌い、演奏したいのか、問うてみるといいでしょう。 
 
 
参考:石井宏『反音楽史―さらば、ベートーヴェン』(新潮文庫)
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<プロフィール>
應義塾大学哲学科卒。卒業後は某ベンチャーにて営業職を経て、現在西洋占星術師として活躍。英国占星術協会所属。古代哲学の研究を基礎とし、独自にカスタマイズした緻密かつ論理的なリーディングが持ち味。
文/SUGAR イラスト/チヤキ