12星座全体の運勢

「最初の思い」 

年末が近づき、慌ただしさが増すとともに、華やかに街がにぎわうこの季節。そんな中、冬至直前の12月19日にふたご座27度(数えで28度)で今年最後の満月を迎えていきます。 

ふたご座28度のサビアンシンボルは「破産宣告を認められた男」。ここではもはや「優れた個人であることを証明する」という不毛な競争のフェーズが終わり、これまでどこかで違和感を感じていたアイデンティティやセルフイメージを不可逆的に壊していくことがテーマとなっていきます。 

ただ、それは本質的には必ずしもネガティブなものではなく、どんな人間もひとりで生きている訳ではない以上、自分がどんなコミュニティに属していて、いかなる仕方で持ちつ持たれつの網目の中にあるのかということを改めて可視化していく通過儀礼であると同時に、救われたい、誰かに、ないし社会に良いことをしたい、と心から最初の思いを発揮しなおしていく大きな節目ともなっていくように思います。 

ちょうど、この時期には「南天」が鮮やかな赤い実をつけますが、実に咳止めの薬効があり、葉にも腐敗防止の作用があるとされ、何より「難を転じる」という語呂合わせから、古来より縁起がいいとされてきました。 

今期のあなたもまた、みずからの未熟さ、つたなさを念頭に初心にかえり、これから自分は何をしていきたいのか、という「最初の思い」を真っ白な紙の上に書き出してみるといいでしょう。 
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牡羊座(おひつじ座)

今期のおひつじ座のキーワードは、「径路」。

牡羊座のイラスト
生活に窮した書けない作家が故郷に帰り、妻子と再起をはかろうとするもうまくいかず、八方塞がりになっていく話を描いた葛西善蔵の『贋物』に、次のような一節があります。 
 
どうせ俺のような能なし者には、妻子四人という家族を背負って都会生活の出来ようはずがない。田舎へ帰って来たのは当然の径路というもんだろう。」 
 
この「径路(けいろ)」という言葉は、物事がたどってきた筋道、手順のことで、単に「ルート」と置き換えてしまいがちな言葉なのですが、実はそこには深い意味が込められているのです。 
 
「径路」の「径」はもともと機織りの様子をあらわした漢字であり、縦糸と横糸を組み合わせて機で織りあげていくさまから、「径」の字には、何かを成し遂げる、作り上げるという意味になりました。 
 
縦糸と横糸がひたすら織り込まれ、つながっていくからこそ一つの形になるのであって、どんな理由があろうと、それを途中で断ち切るということは、それまでの苦労もよき営みもすべて無駄になるということです。 
 
それほどまでに、「径」とは成し遂げるべき大切な何かをあらわす字なのであり、作中で主人公が発した「当然の径路というもんだろう」という言葉には、意識しようがしまいがそれだけの重みがあったのです。 
 
おひつじ座から数えて「道行き」を意味する3番目のふたご座で満月を迎えていく今期のあなたもまた、自分が成し遂げていかなければならないものは何か、またそのために通していくべき筋とは何か、ということを改めてみずからに問うてみるといいでしょう。 
 
 
参考:葛西善蔵『贋物・父の葬式』(講談社文芸文庫) 
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<プロフィール>
應義塾大学哲学科卒。卒業後は某ベンチャーにて営業職を経て、現在西洋占星術師として活躍。英国占星術協会所属。古代哲学の研究を基礎とし、独自にカスタマイズした緻密かつ論理的なリーディングが持ち味。
文/SUGAR イラスト/チヤキ