12星座全体の運勢

「最初の思い」 

年末が近づき、慌ただしさが増すとともに、華やかに街がにぎわうこの季節。そんな中、冬至直前の12月19日にふたご座27度(数えで28度)で今年最後の満月を迎えていきます。 

ふたご座28度のサビアンシンボルは「破産宣告を認められた男」。ここではもはや「優れた個人であることを証明する」という不毛な競争のフェーズが終わり、これまでどこかで違和感を感じていたアイデンティティやセルフイメージを不可逆的に壊していくことがテーマとなっていきます。 

ただ、それは本質的には必ずしもネガティブなものではなく、どんな人間もひとりで生きている訳ではない以上、自分がどんなコミュニティに属していて、いかなる仕方で持ちつ持たれつの網目の中にあるのかということを改めて可視化していく通過儀礼であると同時に、救われたい、誰かに、ないし社会に良いことをしたい、と心から最初の思いを発揮しなおしていく大きな節目ともなっていくように思います。 

ちょうど、この時期には「南天」が鮮やかな赤い実をつけますが、実に咳止めの薬効があり、葉にも腐敗防止の作用があるとされ、何より「難を転じる」という語呂合わせから、古来より縁起がいいとされてきました。 

今期のあなたもまた、みずからの未熟さ、つたなさを念頭に初心にかえり、これから自分は何をしていきたいのか、という「最初の思い」を真っ白な紙の上に書き出してみるといいでしょう。 
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蟹座(かに座)

今期のかに座のキーワードは、「noon a purple glow」。

蟹座のイラスト
一声聴いて、こんなにうつくしいことはあるだろうか、と思った詩の一つに、イェイツの「湖の島イニスフリー」があります。 
 
さあ、立って行こう、イニスフリーの島へ行こう、 
あの島で、枝を編み、泥壁を塗り、小さな小屋を建て、 
九つの豆のうねりを耕そう。それに蜜蜂の巣箱を一つ。 
そうして蜂の羽音響く森の空地に一人で暮らそう。」 
 
冒頭のI will arise and go now,いますぐ立ち上がって、私は行こう、という句からして、人生からしっかり失われてしまった部分にあらためて足を踏み入れる、あらたな出発の宣言として、完ぺきではないかと。 
 
あそこなら心もいくらかは安らぐか。安らぎはゆっくりと 
朝の帷(とばり)からこおろぎ鳴くところに滴り落ちる。 
あそこでは真夜中は瞬く微光にあふれ、真昼は紫に輝き、 
夕暮れは紅ひらの羽音に満ち満ちる。」 
 
「真昼は紫に輝き」という部分は原文ではnoon a purple glowですが、このglowとは燃えてない光の輝きであり、身体のほてりや高まり、心地よい満悦感をあらわす言葉で、真昼なのに夕暮れのようなむらさき色にまで紅潮しているというのは、いったいどんな景色を指しているんだろうと考えを巡らせずにはいられません。 
 
編者の高松雄一さんの脚注によれば、晩年のイェイツはみずから「紫のヒースの花が湖水に映えて輝くのをこう歌ったのではないか」と推測していたそうですが、この詩の最後の一節にあるように、イェイツはこの詩を舗装されたロンドンの灰色の街路にたたずんで、つくづく故郷を想いながら歌ってみせたのです。 
 
ただ、個人的にはその最後の一節は蛇足でしょう。というのも、もういい今度こそ故郷にかえるんだ、という詩人の決心そのものが虚構に過ぎなかったから。本当に都会の喧噪が嫌だったら、詩などつくる前にとっくに帰っていただろうし、アイルランドの文芸復興だなんてややこしいことに首を突っ込んだりしなかったのではないでしょうか。 
 
かに座から数えて「喪失」を意味する12番目のふたご座で満月を迎えていく今期のあなたもまた、故郷から引き裂かれつつ都会に生きたイェイツのように、かけがえのないものの実感を他ならぬ自身の心の中にゆっくりと宿らせてみるといいでしょう。 
 
 
参考:高松雄一編『対訳 イェイツ詩集』(岩波文庫) 
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<プロフィール>
應義塾大学哲学科卒。卒業後は某ベンチャーにて営業職を経て、現在西洋占星術師として活躍。英国占星術協会所属。古代哲学の研究を基礎とし、独自にカスタマイズした緻密かつ論理的なリーディングが持ち味。
文/SUGAR イラスト/チヤキ