12星座全体の運勢

「最初の思い」 

年末が近づき、慌ただしさが増すとともに、華やかに街がにぎわうこの季節。そんな中、冬至直前の12月19日にふたご座27度(数えで28度)で今年最後の満月を迎えていきます。 

ふたご座28度のサビアンシンボルは「破産宣告を認められた男」。ここではもはや「優れた個人であることを証明する」という不毛な競争のフェーズが終わり、これまでどこかで違和感を感じていたアイデンティティやセルフイメージを不可逆的に壊していくことがテーマとなっていきます。 

ただ、それは本質的には必ずしもネガティブなものではなく、どんな人間もひとりで生きている訳ではない以上、自分がどんなコミュニティに属していて、いかなる仕方で持ちつ持たれつの網目の中にあるのかということを改めて可視化していく通過儀礼であると同時に、救われたい、誰かに、ないし社会に良いことをしたい、と心から最初の思いを発揮しなおしていく大きな節目ともなっていくように思います。 

ちょうど、この時期には「南天」が鮮やかな赤い実をつけますが、実に咳止めの薬効があり、葉にも腐敗防止の作用があるとされ、何より「難を転じる」という語呂合わせから、古来より縁起がいいとされてきました。 

今期のあなたもまた、みずからの未熟さ、つたなさを念頭に初心にかえり、これから自分は何をしていきたいのか、という「最初の思い」を真っ白な紙の上に書き出してみるといいでしょう。 
>>星座別の運勢を見る

獅子座(しし座)

今期のしし座のキーワードは、「世にしたがわねば、いっそ楽」。

獅子座のイラスト
この世の無常と草庵での簡素な暮らしについて綴った鴨長明の『方丈記』は、中世を代表する随筆として、何より「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず」という冒頭の書きだしと共に知られています。しかし作家の堀田善衛が『方丈私記』書いているように長明の生きた時代は、戦乱で、どろぼうをしなければ生きられない、あるいは人を傷つけなければ生きられなかった恐るべき生活難の時代でした。 
 
つまり、「無常」というのは観念の遊びでも何でもなく、実際的な問題としてその時代に生きる者にすべからく突き付けられていた、ありのままの現実だったのです。長明はそうした当時の人々の暮らしの実情について、 
 
世にしたがへば、身くるし。したがはねば、狂せるに似たり。いづれの所を占めて、いかなるわざをしてか、しばしもこの身に宿し、たまゆらも心を休むべき。」 
 
と書いていましたが、堀田によればそれでも甘く、「実状として、したがはねば、ではなくて、したがへばしたがふほど、狂せるに似たり、だった」のであり、「世にしたがへば、狂せるに似たり。したがはねば、身くるし」と言いかえてもよいほどのものだったそうです。この場合の、「世にしたがう」とは自分たちに当然の権利主張を行っていくこと。なお、詩人の蜂飼耳は先の原文を次のように現代語訳しています。 
 
世間の常識に従えば、苦しくなる。従わなければ、まともではないと思われてしまう。どんな場に身をおいて、どんなことをして生きれば、しばらくの間だけでも、この身とこの心を安らかにさせておくことができるのだろうか。」 
 
長明が晩年に、「世にしたがわねば、いっそ楽」という境地に突き抜け、それを身をもって示すまでにも、やはりこうした世俗のくるしみに翻弄された長い日々があったのであり、無常とか無常観といったことも、いきなり一足飛びにそこに行き着いたのでは決してなかった訳です。 
 
その意味で、しし座から数えて「中長期的なビジョン」を意味する11番目のふたご座で満月を迎えていく今期のあなたもまた、「狂せる世に狂いまわるのではなく、大原にこもって理性を立ててみる」という長明がじつに五十歳にしてようやく到達した境地を、ひとつ自身の参考にしてみるといいでしょう。 
 
 
参考:堀田善衛『方丈私記』(ちくま文庫)、鴨長明、蜂飼耳・訳『方丈記』(光文社古典新訳文庫) 
12星座占い<12/12~12/25>まとめはこちら
<プロフィール>
應義塾大学哲学科卒。卒業後は某ベンチャーにて営業職を経て、現在西洋占星術師として活躍。英国占星術協会所属。古代哲学の研究を基礎とし、独自にカスタマイズした緻密かつ論理的なリーディングが持ち味。
文/SUGAR イラスト/チヤキ