12星座全体の運勢

「最初の思い」 

年末が近づき、慌ただしさが増すとともに、華やかに街がにぎわうこの季節。そんな中、冬至直前の12月19日にふたご座27度(数えで28度)で今年最後の満月を迎えていきます。 

ふたご座28度のサビアンシンボルは「破産宣告を認められた男」。ここではもはや「優れた個人であることを証明する」という不毛な競争のフェーズが終わり、これまでどこかで違和感を感じていたアイデンティティやセルフイメージを不可逆的に壊していくことがテーマとなっていきます。 

ただ、それは本質的には必ずしもネガティブなものではなく、どんな人間もひとりで生きている訳ではない以上、自分がどんなコミュニティに属していて、いかなる仕方で持ちつ持たれつの網目の中にあるのかということを改めて可視化していく通過儀礼であると同時に、救われたい、誰かに、ないし社会に良いことをしたい、と心から最初の思いを発揮しなおしていく大きな節目ともなっていくように思います。 

ちょうど、この時期には「南天」が鮮やかな赤い実をつけますが、実に咳止めの薬効があり、葉にも腐敗防止の作用があるとされ、何より「難を転じる」という語呂合わせから、古来より縁起がいいとされてきました。 

今期のあなたもまた、みずからの未熟さ、つたなさを念頭に初心にかえり、これから自分は何をしていきたいのか、という「最初の思い」を真っ白な紙の上に書き出してみるといいでしょう。 
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山羊座(やぎ座)

今期のやぎ座のキーワードは、「多孔的な自己」。

山羊座のイラスト
中学生のとき、国語の授業で「自殺はなぜ悪いか」というテーマが話題になったことがありました。その時にそれが良いか悪いかは別として「自殺とは想像力の断絶ではないか」という言葉が出てきたのを、今でもたまに思い出すことがあります。 
 
その後、主に社会人として働いていたときに、睡眠時間の減少がいかに人間の判断能力や想像力を低下させるかということを痛感させられたのですが、それはとりもなおさず、自分自身を大切にすることを疎かにしていけば、必然的に自滅に追い込まれていく、ということを再確認させられた経験でもあった訳です。 
 
なぜ人はそうなってしまうのかということを、自分の経験にひきつけて考えてみれば、それはどこかで自身を過信したからであり、もっと言えば、その根底には誤ったセルフイメージへの固執があったからではないかと考えています。 
 
ただ、ここでセルフイメージと言っているのは、個々に振り分けられた「個性」や「キャラ」というよりも、もっと根本的な自己の在り方のようなものなのですが、それについて例えば英文学者の小川公代は『ケアの倫理とエンパワーメント』のなかで、カナダの政治哲学者チャールズ・テイラーにならう形で、近代社会における対照的な自己像として「緩衝材で覆われた自己」と「多孔的な自己」という二つのモデルを取り上げています。 
 
前者は、「「自立した個」とも正義論の自己像ともいえる「緩衝材で覆われた」イメージであり、「自分自身を決して脆弱ではない存在者として、つまり、自らを事物の意味の所有者であると理解することができる(『世俗の時代』)」というもので、これはサラリーマン時代の勤め先もそうであったコンクリートで出来た高層ビルや、いつからか成功者のアイコンとなったタワマンをどこか連想させます。一方で、小川はそれと対照的な自己モデルとしての後者について次のように言及しています。 
 
「多孔的な自己」は、より緩やかな輪郭をもつ、近代では希薄になっている「多孔的な存在としての自己である。つまり、「多孔的な自己」とは、一個の主体としてではなく、自己がつねに霊性を帯び、それが内的世界と外的世界とを行き来するような通気性のよい自己である。」 
 
はじめてこの一節を読んだとき、なんとなく猫バスを連想したのを覚えています。同様に、やぎ座から数えて「ケアすること」を意味する6番目のふたご座で満月を迎えていく今期のあなたもまた、どうしたらそうした「通気性のよい自己」や、そうあれるような暮らしが成立していくのかということについて、改めて想像を膨らませてみるといいでしょう。 
 
 
参考:小川公代『ケアの倫理とエンパワーメント』(講談社) 
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<プロフィール>
應義塾大学哲学科卒。卒業後は某ベンチャーにて営業職を経て、現在西洋占星術師として活躍。英国占星術協会所属。古代哲学の研究を基礎とし、独自にカスタマイズした緻密かつ論理的なリーディングが持ち味。
文/SUGAR イラスト/チヤキ