12星座全体の運勢

「苦みは早春の味わい」 

一年のうちで最も寒さが厳しくなる「大寒」の直前にあたる1月18日には、2022年最初の満月をかに座27度(数えで28度)で迎えていきます。 

ちなみに大寒の始まりは七十二候で言うと「欵冬華(ふきのはなさく)」にあたります。「欵」には叩くという意味があるのですが、蕗(ふき)は冬に氷をたたき割るようにして地中から地表へ出てくることから、冬を叩き割ると書いて「欵冬(かんとう)」という異名がついたのだとか。 

同様に、変容の星である冥王星を巻き込んだ今回の満月のテーマは「とことん深い受容」。これまでのあなたの価値観や常識をバリバリと叩き壊し、心地よい日常へと闖入し、あなたを異世界へと連れ去ってしまうような“ストレンジャー(よそ者、流れもの、うさんくさいもの)”をいかにふところ深くに受け入れていくことができるか、そしてそれによってあなた自身の変容も感じとっていけるかどうかが問われていくでしょう。さながら、かつて70年代以降ネイティブアメリカンの文化に深く影響を受けていった現代アメリカの若者たちのように。 

うまくいけば、これまでのあなたならとても受け入れられなかったり、価値観や世界観を共存させることができなかったような異質な考えや経験の芽が、まるで蕗の薹のような何とも言えない苦味を伴ってあなたの心中に流れ込んでくるはず。 

それはやがてやってくる自然界の壮大な生まれ変わりの祭典である春の芽吹きを一足早く告げ知らせる、早春の味とも言えるかもしれません。 
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乙女座(おとめ座)

今期のおとめ座のキーワードは、「喉元に死者がいる」。

乙女座のイラスト
岸田首相の年頭の記者会見で、感染者が急増している新型コロナの変異株「オミクロン株」への対応をめぐり、陽性者全員を一律に入院させる現行の措置を見直し、重症度に応じて自宅療養で対応できるようにとの方針を示しましたが、会見内容を見ていてどこか3.11直後に「がんばろう」や「がんばれ」といった言葉が乱発されていたテレビ放送のことを思い出していました。 
 
狂ったように「がんばれ」と言い続けるのは、言葉をかける側が想像力を失い、また言葉を失っているからで、同様に、現在の政府や官邸周辺もまた未曽有の感染症に対してどう対応していいか分からないだけでなく、そこで生じる二人称の死というものをどう受け止めていいのか分からないがゆえに、ああいう指示の出し方や語り口になってしまうのではないか。そして、それは実は私たち国民の側も同じなのではないでしょうか。 
 
では、どうすればいいのか。例えば、近代日本思想を専門とする中島岳志は、『現代の超克』の中で、ヒンディー語の与格構文という構文に言及しつつ次のように述べています。 
 
ヒンディー語では、「私は、ヒンディー語を話すことができる」は、「私にヒンディー語がやってきてとどまっている」という言い方をするのです。「私」という主体が言語というものを能力によってマスターし、それによって私が主体的に言語を話しているのではないのです。「私」という器に言葉がやってきて私にとどまっている、という言い方をヒンディー語ではします。/では、言葉はどこからやってくるのか。それは、過去からであり、死者からです。過去や死者からやってきて、私にとどまり、そして私の中を風のように通過してこの口を伝って言葉が出てくる。そうとしか思えない、ということがヒンディー語の中に与格構文として組み込まれています。ヒンディー語を勉強し、そのことを知ったときに、さすがインドだなと思いました。」 
 
中島は、何かを話しているときに慄くときの感覚について「喉元に死者がいる」という言い方もしているのですが、慄くとともに「少しほっとする」のだとも言います。それは、自分がひとり単独の存在ではなく、死者や過去と言葉を通じてつながり、ともに生きていることを感じられたからでしょう。 
 
今期のおとめ座もまた、ふとしたときの言葉のあり方を通じて、そうした「喉元に死者がいる」という感覚や、死者とともに生き、彼らが紡いだ言葉を宿す器になるということがいかに可能なのか、見つめ直してみるべし。 
 
 
参考:中島岳志、若松英輔『近代の超克』(ミシマ社) 
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<プロフィール>
慶應義塾大学哲学科卒。卒業後は某ベンチャーにて営業職を経て、現在西洋占星術師として活躍。英国占星術協会所属。古代哲学の研究を基礎とし、独自にカスタマイズした緻密かつ論理的なリーディングが持ち味。
文/SUGAR イラスト/チヤキ