12星座全体の運勢

「苦みは早春の味わい」 

一年のうちで最も寒さが厳しくなる「大寒」の直前にあたる1月18日には、2022年最初の満月をかに座27度(数えで28度)で迎えていきます。 

ちなみに大寒の始まりは七十二候で言うと「欵冬華(ふきのはなさく)」にあたります。「欵」には叩くという意味があるのですが、蕗(ふき)は冬に氷をたたき割るようにして地中から地表へ出てくることから、冬を叩き割ると書いて「欵冬(かんとう)」という異名がついたのだとか。 

同様に、変容の星である冥王星を巻き込んだ今回の満月のテーマは「とことん深い受容」。これまでのあなたの価値観や常識をバリバリと叩き壊し、心地よい日常へと闖入し、あなたを異世界へと連れ去ってしまうような“ストレンジャー(よそ者、流れもの、うさんくさいもの)”をいかにふところ深くに受け入れていくことができるか、そしてそれによってあなた自身の変容も感じとっていけるかどうかが問われていくでしょう。さながら、かつて70年代以降ネイティブアメリカンの文化に深く影響を受けていった現代アメリカの若者たちのように。 

うまくいけば、これまでのあなたならとても受け入れられなかったり、価値観や世界観を共存させることができなかったような異質な考えや経験の芽が、まるで蕗の薹のような何とも言えない苦味を伴ってあなたの心中に流れ込んでくるはず。 

それはやがてやってくる自然界の壮大な生まれ変わりの祭典である春の芽吹きを一足早く告げ知らせる、早春の味とも言えるかもしれません。 
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射手座(いて座)

今期のいて座のキーワードは、「悪のリアリティ」。

射手座のイラスト
いまの時代はアカデミズムを始めとして、人びとがますます近代実証主義の枠から外れたことを扱うのが苦手になってしまっていて、そうすると人間の体験知のごく一部が守備範囲になりますから、良くも悪くも超越的なものに遭遇したり、目に見えない世界に接することに無自覚になってしまったように思います。 
 
そうした現代社会が陥っている傾向について、作家の佐藤優と美学者の高橋巌は二人の対談本である『なぜ私たちは生きているのか』のなかで、「悪のリアリティに鈍感になっている」という言い方で指摘していました。それは個人の内面だけでなく、宇宙全体のなかにも悪の要素というのは働いていて、それが出会いや縁など人間関係にも作用しているということなのですが、これは具体的な文脈でないとなかなか伝わらないでしょう。以下に二人のやりとりを少し引用してみましょう。 
 
佐藤 ちょっとした会話から悪が生まれ、それによって人間が変わってしまう。言葉というのは怖いものなのです。聖書にも、何を食べたら罪になるかを心配している弟子に、イエスが食べ物は心配ない、口から出るものが問題だと伝える場面があります。悪は言葉から出てくるけれど、人間は言葉なくして生きていくことができない。でも善も、言葉から生まれてくるわけです。キリスト教的には「なぜあなたは生きているのか」という問いには「神の言葉によって生きている」という答えになる。最終的には言葉の問題です。 
高橋 悪を通して善を実現することは、私にとっての大問題なのです。(…)「悪を通して」を「限界状況を通して」とも言えるのではないでしょうか。いずれにしても、最終的には言葉の問題だということはよくわかります。この言葉の問題は召命でもあるのですね。 
佐藤 そうです。突然やってくる召命に対して応えるか拒否するか、言葉で対応するしかありませんから。ただ言葉を重視するというのは、西側の考え方ではあるのです。言語ではないやり方では瞑想というのがありますが、自意識が肥大化している状態であるのに悟りを得たと勘違いしてしまう危険性があります。これでは、言語化しても私的言語になってしまう。ヴィトゲンシュタインが言ったように、私的言語では成立しません。二人以上の人がいて、一定の共同主観性のあるなかでしか言語は成立しえないですから。 
高橋 言葉は共同主観性のなかでしか成立しない、つまり共同体がなければ成立しないということを大切にしたいと思います。ヨハネ福音書の冒頭に、「言(ことば)のうちに命があった」とありますね。命のなかには善だけでなく悪が入っている。だから言葉によって神が現われたり、悪魔が現われたりもする。」 
 
つまり、困難で命がけの状況になればなるほど、自分ひとりでいるのではなく、他者と共にいるということが重要になり、他者との関係性の中にこそ悪があり、逆に言えば神様がいるのだということ。これは今期のいて座にとっても大切な留意点となっていくはずです。 
 
 
参考:佐藤優、高橋巌『なぜ私たちは生きているのか』(平凡社新書) 
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<プロフィール>
慶應義塾大学哲学科卒。卒業後は某ベンチャーにて営業職を経て、現在西洋占星術師として活躍。英国占星術協会所属。古代哲学の研究を基礎とし、独自にカスタマイズした緻密かつ論理的なリーディングが持ち味。
文/SUGAR イラスト/チヤキ