12星座全体の運勢

「苦みは早春の味わい」 

一年のうちで最も寒さが厳しくなる「大寒」の直前にあたる1月18日には、2022年最初の満月をかに座27度(数えで28度)で迎えていきます。 

ちなみに大寒の始まりは七十二候で言うと「欵冬華(ふきのはなさく)」にあたります。「欵」には叩くという意味があるのですが、蕗(ふき)は冬に氷をたたき割るようにして地中から地表へ出てくることから、冬を叩き割ると書いて「欵冬(かんとう)」という異名がついたのだとか。 

同様に、変容の星である冥王星を巻き込んだ今回の満月のテーマは「とことん深い受容」。これまでのあなたの価値観や常識をバリバリと叩き壊し、心地よい日常へと闖入し、あなたを異世界へと連れ去ってしまうような“ストレンジャー(よそ者、流れもの、うさんくさいもの)”をいかにふところ深くに受け入れていくことができるか、そしてそれによってあなた自身の変容も感じとっていけるかどうかが問われていくでしょう。さながら、かつて70年代以降ネイティブアメリカンの文化に深く影響を受けていった現代アメリカの若者たちのように。 

うまくいけば、これまでのあなたならとても受け入れられなかったり、価値観や世界観を共存させることができなかったような異質な考えや経験の芽が、まるで蕗の薹のような何とも言えない苦味を伴ってあなたの心中に流れ込んでくるはず。 

それはやがてやってくる自然界の壮大な生まれ変わりの祭典である春の芽吹きを一足早く告げ知らせる、早春の味とも言えるかもしれません。 
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山羊座(やぎ座)

今期のやぎ座のキーワードは、「猥褻」。

山羊座のイラスト
いまや社会で生きていく上で資本主義の影響を否定する人間はほとんどいないでしょう。というより、私たちは資本主義こそが唯一の存続可能な政治・経済的制度であるということを疑いもしないどころか、その代わりになるような代替物を想像することさえ不可能になってしまっているように思います。 
 
そう考えると、資本主義というのは、いつまでたっても解けない呪いのようでもありますが、少なくともその起源となった時代を思い返していくことは可能であるはずです。日本の場合、それは戦後の高度経済成長期がひとつの大きな転換期になった訳ですが、例えば三島由紀夫は高度経済成長期に一歩踏み出し始めた1954年からの二年間を舞台にした小説『鏡子の家』を書いており、この作品について「時代を描こうと思った」と述べています。 
 
主人公である資産家の令嬢・鏡子は夫と別居し、8歳の娘と実家の財産を切り崩しながら自由気ままに暮らすまだ三十女ですが、彼女の家には年下の四人の若者が日々集まり、いずれもそれぞれの仕方で時代の「壁」のようなものに直面していると感じて、どこかに虚無感を抱えています。 
 
4人はその後まさに栄枯盛衰を地でいく波乱万丈な人生を歩んでいくのですが、ここではその詳細は省くとして、最後にすっかり財産を使い尽くし、夫が帰ってくることになったところで、「人生という邪教」を生きる覚悟をあらためて固めた鏡子の選択を象徴するようなセリフをひとつ引用しておきたいと思います。 
 
神聖なものほど猥褻だ。だから恋愛より結婚のほうがずっと猥褻だ。」 
 
猥褻というのは、みだらな想いで心がかき乱れ、汚れて穢れていることを表す言葉ですが、この一文は何よりも、昭和二十年代の戦後の焼け跡や廃墟の光景を、暴力的なまでの圧力で葬り去り、自身の内面や記憶までも否応なく塗り替えて行こうとしていた日本人に向けられた、三島なりの痛烈な批判だったのではないでしょうか。 
 
今期のやぎ座は、そんなかつての日本人の心の動きとそれに向けられた三島の批判の両方に、いまの自分自身の状況を重ねてみるといいかも知れません。 
 
 
参考:三島由紀夫『鏡子の家』(新潮文庫)
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<プロフィール>
慶應義塾大学哲学科卒。卒業後は某ベンチャーにて営業職を経て、現在西洋占星術師として活躍。英国占星術協会所属。古代哲学の研究を基礎とし、独自にカスタマイズした緻密かつ論理的なリーディングが持ち味。
文/SUGAR イラスト/チヤキ