12星座全体の運勢

「先見の営み」 

暦の上では春となり、旧暦では一年の始まりとされた「立春」直前の2月1日には、新たなスタートを先がけるようにみずがめ座12度(数えで13度)で新月を迎えていきます。 

秩序と権威を司る土星と重なり、変革と逸脱を司る天王星と鋭い角度でぶつかりあう今回の新月のテーマは、「先見」。すなわち、近い将来へのプランニングです。 

動物は秋口になると、冬の厳しさに応じて毛皮が厚くなるものですが、そうした近い将来へ向けた準備と計画が可能なのは、未来の可能性がすでに現在において作動しているからに他なりません。それと同様、今回の新月においてもいかに時代の流れがどこへ向かって変化しつつあるのか、そして、今の自分は新しい流れと古い流れのどちらに属しているのかといったことをきちんと見極め、ごまかさずに認識していけるかどうかが問われていくはず。 

例えば、この時期の季語に「明告鳥(あけつげどり)」というものがあり、これは早朝に夜明けを知らせるように大きな声で鳴くニワトリの異名ですが、これは毎日必ず東から朝日が昇るという周期的プロセスを認識すること、誰よりも早く夜明けの兆しに気付くこと、それから気付いたことを周囲に分かるように伝える手段を持っていることという、三つの条件がそろって初めて成立している先見の営みの好例と言えます。 

今期の私たちもまた、夜明けの到来だけでなく、どんなにかすかでも未来へ通じる兆しをいち早く感じ取り、その見通しを知らせるニワトリとなって、希望を広げる一助となっていきたいところ。 
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牡羊座(おひつじ座)

今期のおひつじ座のキーワードは、「クセノスの目」。

牡羊座のイラスト
かつて哲学者のメルロ・ポンティは「ほんとうの哲学とは、この世をみる見方を学びなおすこと」(『知覚の現象学』)なのだと述べましたが、新聞がもはや世論のバロメーターの役割を果たさなくなりつつある昨今では、「この世をみる」ことがますます難しくなってきたように感じます。 
 
それは古代ギリシャ風に言うならば「クセノス(異邦人・異星人)のような目」を持つことと言い換えることができますが、地球人の目が異星人のそれに変わるのは、自身の運命にまつわる予定調和に無視できない乱れや、危険な兆候を捉えることができた時に他ならないのです。 
 
例えば、哲学者のハンナ・アレントは『人間の条件』において人間生活の営みを「労働」「仕事」「活動」の三つに分類し、最初の二つが「台所とタイプライター」に象徴されるのに対し、「活動」の例に「笛吹き」をあげ、耐久性という点ではもっともはかなく、その生産物は「演技」に他ならないと説明しつつ、かつては「活動―仕事―労働」の順に並んでいたヒエラルキーが、次第に「仕事―活動―労働」へととって代わり、さらに近代化の過程で「労働―仕事ー活動」へと完全に逆転したのだと述べています。 
 
つまり、人間の営みの中で「労働」が最も高く評価され、「仕事」や「活動」が「労働」の観点から、すなわち「それでおまんが食えるのか」「衣食住は満たされるのか」という基準で眺められるようになった訳です。彼女はそれを次のような仕方で描写しています。 
 
遠く離れた宇宙の一点から眺めると、人間の活力はどれも、もはやどんな活動力にも見えず、ただ一つの過程としか見えない。したがって、ある科学者が最近述べたように、現代のモータリゼーションは、人間の肉体が徐々に鋼鉄製の甲羅で覆い始めるというような生物学的突然変異の過程のように見えるだろう」 
 
これは世界が消費の対象となってしまったことへの彼女なりの警告です。いわば、アレントは3つの営みのヒエラルキーの変化を時系列で眺めていくことによって、人々が現に負っているリスクや将来負うことになるだろうリスクを明らかにしている訳です。

今期のおひつじ座もまた、そうした自身の周りや社会で起きつつある変異について、どれだけクセノスの目を持ち込むことができるかが問われていくのだと言えるでしょう。 
 
 
参考:ハンナ・アレント、志水速雄訳『人間の条件』(ちくま学芸文庫) 
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<プロフィール>
慶應義塾大学哲学科卒。卒業後は某ベンチャーにて営業職を経て、現在西洋占星術師として活躍。英国占星術協会所属。古代哲学の研究を基礎とし、独自にカスタマイズした緻密かつ論理的なリーディングが持ち味。
文/SUGAR イラスト/チヤキ