12星座全体の運勢

「先見の営み」 

暦の上では春となり、旧暦では一年の始まりとされた「立春」直前の2月1日には、新たなスタートを先がけるようにみずがめ座12度(数えで13度)で新月を迎えていきます。 

秩序と権威を司る土星と重なり、変革と逸脱を司る天王星と鋭い角度でぶつかりあう今回の新月のテーマは、「先見」。すなわち、近い将来へのプランニングです。 

動物は秋口になると、冬の厳しさに応じて毛皮が厚くなるものですが、そうした近い将来へ向けた準備と計画が可能なのは、未来の可能性がすでに現在において作動しているからに他なりません。それと同様、今回の新月においてもいかに時代の流れがどこへ向かって変化しつつあるのか、そして、今の自分は新しい流れと古い流れのどちらに属しているのかといったことをきちんと見極め、ごまかさずに認識していけるかどうかが問われていくはず。 

例えば、この時期の季語に「明告鳥(あけつげどり)」というものがあり、これは早朝に夜明けを知らせるように大きな声で鳴くニワトリの異名ですが、これは毎日必ず東から朝日が昇るという周期的プロセスを認識すること、誰よりも早く夜明けの兆しに気付くこと、それから気付いたことを周囲に分かるように伝える手段を持っていることという、三つの条件がそろって初めて成立している先見の営みの好例と言えます。 

今期の私たちもまた、夜明けの到来だけでなく、どんなにかすかでも未来へ通じる兆しをいち早く感じ取り、その見通しを知らせるニワトリとなって、希望を広げる一助となっていきたいところ。 
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牡牛座(おうし座)

今期のおうし座のキーワードは、「友愛による経済」。

牡牛座のイラスト
「資本主義の終わりより、世界の終わりを想像するほうがたやすい」と言ったのはスロベニア出身の哲学者スラヴォイ・ジジェクでしたが、自由な市場での競争を原理とする資本主義経済のもたらす現実は、近年ますます人と人とを分断させるエゴイズムを増大させており、その“生きづらさ”はもはや我慢できないレベルに達しつつあるように思います。 
 
その意味で、「資本主義の終わり」を想像することは本当にできないのか、現行の資本主義以外のオルタナティブは構想不可能なのか、という問いの切実さは非常に高まっている訳ですが、その格好の参照先のひとりにミヒャエル・エンデが挙げられます。 
 
エンデは『モモ』や『はてしない物語』などの本格的なファンタジー小説の書き手として知られる人物ですが、同時に、長年にわたってお金について追究し続けた思想家でもあり、そのラストインタビューで、現代社会の混迷の原因について次のように述べていました。 
 
人間は三つの異なる社会的レベルのなかで生きています。誰もが国家、法のもとの生活に属しています。生産し、消費する点では経済生活のなかで生きています。そして美術館も音楽会も文化生活の一部ですから文化生活も誰もが行っていることです。この三つの生の領域は本質的にまったく異なるレベルです。今日の政治や社会が抱えてる大きな問題は、この三つがいっしょにされ、別のレベルの理想が混乱して語られることです。(…)フランス革命のスローガンである「自由・平等・友愛」は革命前からある言葉で、もとはフリーメーソンのスローガンにほかなりません。この三つの概念は、いま話した三つのレベルに相応します。すなわち、自由は精神と文化、平等は法と政治、そして今日ではまったく奇異に聞こえるのですが、友愛は経済生活です。」 
 
この「経済が友愛で成り立つべき」という主張は一見すると子どもじみたユートピア思想にも聞こえますが、分業体制という生産方式がしばしば他人を踏みにじったり、踏みにじられたりといった苦々しいものになっているのは、「所得と職業、報酬と労働が一つになってしまっている」からだというエンドの指摘の正鵠(せいこく)さを鑑みると、さまざまな意味で歪んだ現代社会をとらえかえす可能性のあるものという気がしてきます。 
 
今期のおうし座もまた、仕事の収益を自分の当然の権利として要求したり、収益をできる限り私有しようとすること、自分の業績ばかり気にすることがどれだけ物心の貧しさをもたらすか、また、どうしたら共に働くことでもたらされる癒しが大きくなるか、ということについて、じっくりと考えてみるといいでしょう。 
 
 
参考:河邑厚徳+グループ現代『エンデの遺言』(NHK出版)
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<プロフィール>
慶應義塾大学哲学科卒。卒業後は某ベンチャーにて営業職を経て、現在西洋占星術師として活躍。英国占星術協会所属。古代哲学の研究を基礎とし、独自にカスタマイズした緻密かつ論理的なリーディングが持ち味。
文/SUGAR イラスト/チヤキ