12星座全体の運勢

「二元論的枠組みからの脱却」 

天文学には春の始まりであり、占星術的に一年の始まりである特別な節目の「春分」をいよいよ直前に控えた3月18日に、おとめ座27度(数えで28度)で満月を迎えていきます。 

前回3月3日のうお座新月は、冥王星(パワーへの飽くなき欲求)と火星(アクション)が重なる日でもあり、現在の緊迫した世界情勢がどちらへ傾いていくのかを占う上でも非常に大切な節目でしたが、18日の満月はそんな冥王星を緩和させる形で配置されており、「二元論の否定」ということがテーマとなってきます。 

すなわち、善か悪か、光か闇か、神か悪魔かという二元性の世界にどっぷり没入して、「〇〇〇〇が悪い」「こっちが良くて、あっちはダメ」「制裁、消去」と単純に決めつけていくのではなく、そうした二者択一的/二元論的な枠組みそのものから脱却するべく、否定できない真実をえぐり出していくのです。 

もちろんそれは「言うは易く行うは難し」ではありますが、ちょうど春分をはさんだ七日間を春の「お彼岸」といい、中日である春分が煩悩に満ちたこの世界(此岸)を超えた極楽浄土(彼岸)に最も近づける日だとされてきたように、混迷にみちた現在のこの世において、見失ってはいけないポイントを自分なりに見出し、感じ入っていくには今回の満月前後がもってこいのタイミングなのだとも言えるでしょう。  

その際、春の陽気をぞんぶんに取り入れて、できるだけ世の中や自分自身に対して冷笑的にならないよう努めることが大切であるように思います。世間一般からすれば些細なこと、つまらないことでもいい。自分にとって、これだけは忘れないでおこうと思える何かを見つけ出していきたいところ。 
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獅子座(しし座)

今期のしし座のキーワードは、「「罪の経済」の克服」。

獅子座のイラスト
資本主義か社会主義か、という二者択一でこの先の未来のあるべき姿を考える人はもはやごく少数派で、イギリスの批評家マーク・フィッシャーが指摘していたように、今や資本主義こそが唯一の存続可能な政治・経済的制度であるばかりか、その代替物を想像することすら不可能だという意識が日本でもコロナ以上に蔓延しているように思います。 
 
しかし、こうした資本主義について、思想史家の関曠野は2016年に刊行された『なぜヨーロッパで資本主義が生まれたか』のなかで「資本主義に普遍的世界史な必然性などありません」と断じた上で次のように述べています。 
 
近代日本が極東の国でありながら近代化していわゆる経済大国になったことが、資本主義は普遍的な現象という錯覚を生んでいるのかもしれません。しかし、この日本でさえペリーの黒船など欧米列強の軍事的脅威なしには西洋化することはなかった。現在の世界では、中国さえ一見資本主義化していますが、どうみてもその実態はハリボテなのです。」 
 
関はその論拠として、いくら資源やテクノロジーが潤沢にあってもそれだけでは資本主義は成立せず、その真の成立のためには「罪の経済」という精神が必要なのだといいます。 
 
すなわち、アダムとイブが原罪を犯して楽園を追放されたというキリスト教の原罪論が、のちに「人間の神に対する負債、罪滅ぼしとしての労働」という観念と結びついて、いわば魂の救済を金で買うという発想が近代のアングロサクソンにおいて資本主義と適合したエトスとなったのであり、関はこれこそがヨーロッパ文明の特徴なのだと述べています。 
 
そして、経済成長をやめなければ人類の存続が危うくなることがはっきりしているのに、果てしない経済成長を求める資本主義から脱却できないのは、それが「宗教のかたちをした神経症」だからであり、「資本主義は貧困とか搾取ということよりも精神病理で人間を不幸にする」し、逆に言えば「精神病のない資本主義はありえない」のだというたいへん重要な指摘もしています。 
 
当然、日本人の心性は「罪の経済」という精神を受け入れていませんし、そもそも神道と仏教の国である日本には本来そうした精神に付き合う必要はありませんから、日本の伝統的な宗教性に立ち返ることで、資本主義でない経済、かつての社会主義とも異なる別の脱資本主義の経済が考えられるのではないでしょうか。 
 
自分の星座から数えて「経済観念」を意味する2番目のおとめ座で満月が起きていく今期のしし座もまた、どうしたら「宗教のかたちをした神経症」を克服していけるかということが大きなテーマとなっていくでしょう。 
 
 
参考:関曠野『なぜヨーロッパで資本主義が生まれたか』(NTT出版) 
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<プロフィール>
慶應義塾大学哲学科卒。卒業後は某ベンチャーにて営業職を経て、現在西洋占星術師として活躍。英国占星術協会所属。古代哲学の研究を基礎とし、独自にカスタマイズした緻密かつ論理的なリーディングが持ち味。
文/SUGAR イラスト/チヤキ