12星座全体の運勢

「見通しを立てる」 

春の山笑う季節から徐々に初夏の緑したたる季節へと移り変わりゆく「穀雨(こくう)」を迎えていく直前の4月17日には、てんびん座26度(数えで27度)で満月を形成していきます。 

そんな今回の満月のサビアンシンボルは、「明るく澄んだ空を高く飛ぶ飛行機」。すなわち、この世の向こう側から、この世この生を見つめ直していくこと。 

とくに、「死と再生」を司る冥王星と「伝統と秩序」を司る土星を巻き込む形で形成される今回の満月では、自分の置かれた状況の整理し、合意的現実や幻想から自らの意志で抜け出ていく準備をしていくだけではなく、その全体像やあらましを俯瞰し、今起きている危機や変化がどのようなものか、あらためて対象化し、見極めていくことが目指されます。 

ちょうど今回の満月が起きる頃合いを、日本の七十二候では「虹始見(にじはじめてみる)」といい、まだ淡く、すぐに消えてしまう春の虹が空に大きくかかっているのを見ることができるようになってきます。 

今期はいわば、そうした虹の視点からこの世を振り返るようにして、今自分が演じている「人生というお芝居を客観視していくこと」がテーマとなっていくでしょう。 

その際、自分はどんなプロットやストーリーを生きていて、起承転結のうちどのフェーズにいるのか、そしてそこで過去の世代の取り組みや努力、他の人たちとの協力にいかに支えられているか。また、重要な共演者は誰で、どのような関係性にあるのか、そして劇において重要な役割をはたす舞台装置は何か、といったことをよくよく確かめていくことで、人間の問題に対する新しいパースペクティブを手に入れていくことができるはず。 
>>星座別の運勢を見る

獅子座(しし座)

今期のしし座のキーワードは、「ちょっと待てよ」。

獅子座のイラスト
ふだんは無宗教ながら、時おり聖書を開いてみると、そこには人間が嘘を重ね、みずからの責任を他人になすりつけていく過程が描かれています。 
 
例えば、創世記の「蛇の誘惑」の箇所にしても、最も知恵者であった蛇がしたのは、誘惑ではなく、あくまで「善悪の知識の樹の実を食べると必ず死んでしまう」と神様に禁止されたと言ったエバに対して、自分の見解(園の中央に生える善悪の知識の樹の実を食べても死にはしない、善悪を知るようになることを神様はご存じのはずだ)を述べただけであって、エバは自分の自由意志によって言葉を付け足していたのです。 
 
また、エバと一緒になって知識の実を食べ恐ろしくなり隠れていたアダムもまた、神様に「どこにいるのか」と尋ねられたとき、「ここにいます」とだけ答えればいいものを、エバのせいにし、ひいては神様のせいにして責任回避してしまう。このように、人間の元祖であるはずのアダムとエバからして悪が備わっているということを、聖書は執拗なまでに描き出すのです。 
 
そうすると、2500年あまりたっても、人間の本質は何も変わっていないということになる訳ですが、幸いなことに、その間人間は何もしていなかった訳ではなく、上記のような「内在的な悪」をいかに克服することができるかという処方箋を数多くの人が残しています。なかでも、今回取り上げたいのは、ソ連による共産主義体制下において、宗教書や思想書に対する厳しい検閲が行われていたチェコスロバキアで1958年に刊行された『人間への途上にある福音』という本です。この中で、著者である神学者のフロマートカは、上記のような悪の構造とその克服の鍵について、次のように述べています。 
 
悪の深さは、私たちが個人的な嘘と不正、欺瞞と詐欺、内面的および外面的な汚さ、不誠実と卑怯な行為の現場を押さえられたときに完全にわかる。悪は常に完全に具体的な個人の輪郭をとるのだ。「罪」という言葉は、個人を名指ししない何か一般的な気分の表現では決してない。「罪」という言葉は、私たちが義務や使命に逆らったときにあなたと私を指し示す。他者を助ける機会を与えられながら無視するなら罪を犯したことになる。嘘をついたとき、相手のためではなく自分のために利己的に人間関係を利用したとき、心の中または外で夫婦、家族、友人の義務を守らなかったなら罪を犯したことになる。」 
 
私たちは毎日自分に無数の嘘をつきながら生きていますが、それでも「他者を助ける機会を与えられながら無視するなら、罪を犯したことになる」というリアリティを持つことは、仕事でも家庭でも、ちょっとした人間関係でも、ふいに「ちょっと待てよ」という、一瞬のすきま風のような声をきっかけに感じることがあるはずです。 
 
4月17日にしし座から数えて「自己内対話」を意味する3番目のてんびん座で満月を迎えていく今期のあなたもまた、そうしたふと聞こえてくる声(召命)を無視するのか、それをきっかけに隣人を発見していくのか、選んでいくことになるでしょう。 
 
 
参考:フロマートカ、平野清美訳、佐藤優監訳『人間への途上にある福音』(新教出版社) 
12星座占い<4/3~4/16>まとめはこちら
<プロフィール>
慶應義塾大学哲学科卒。卒業後は某ベンチャーにて営業職を経て、現在西洋占星術師として活躍。英国占星術協会所属。古代哲学の研究を基礎とし、独自にカスタマイズした緻密かつ論理的なリーディングが持ち味。
文/SUGAR イラスト/チヤキ