12星座全体の運勢

「見通しを立てる」 

春の山笑う季節から徐々に初夏の緑したたる季節へと移り変わりゆく「穀雨(こくう)」を迎えていく直前の4月17日には、てんびん座26度(数えで27度)で満月を形成していきます。 

そんな今回の満月のサビアンシンボルは、「明るく澄んだ空を高く飛ぶ飛行機」。すなわち、この世の向こう側から、この世この生を見つめ直していくこと。 

とくに、「死と再生」を司る冥王星と「伝統と秩序」を司る土星を巻き込む形で形成される今回の満月では、自分の置かれた状況の整理し、合意的現実や幻想から自らの意志で抜け出ていく準備をしていくだけではなく、その全体像やあらましを俯瞰し、今起きている危機や変化がどのようなものか、あらためて対象化し、見極めていくことが目指されます。 

ちょうど今回の満月が起きる頃合いを、日本の七十二候では「虹始見(にじはじめてみる)」といい、まだ淡く、すぐに消えてしまう春の虹が空に大きくかかっているのを見ることができるようになってきます。 

今期はいわば、そうした虹の視点からこの世を振り返るようにして、今自分が演じている「人生というお芝居を客観視していくこと」がテーマとなっていくでしょう。 

その際、自分はどんなプロットやストーリーを生きていて、起承転結のうちどのフェーズにいるのか、そしてそこで過去の世代の取り組みや努力、他の人たちとの協力にいかに支えられているか。また、重要な共演者は誰で、どのような関係性にあるのか、そして劇において重要な役割をはたす舞台装置は何か、といったことをよくよく確かめていくことで、人間の問題に対する新しいパースペクティブを手に入れていくことができるはず。 
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天秤座(てんびん座)

今期のてんびん座のキーワードは、「ゾミア的な人たち」。

天秤座のイラスト
春分を過ぎて最初の満月は毎年必ずてんびん座で起こる訳ですが、それはてんびん座の人たちにとって、長い冬をくぐり抜け、生き延びた証しを手にするタイミングであると同時に、半年後のおひつじ座での満月へ向けて次なる仕込みを開始すべく、再び“外部”への志向性が強まって、流動性が高まっていくタイミングであります。 
 
それは喩えるなら、定住化させられていた移動民がふたたび遊牧民となっていくことにも重ねられると思いますが、その際に一つの指針となるのが「ゾミア的人たち」です。 
 
「ゾミア」とは、中国西南部から東南アジア大陸部を経てインド北東部に広がる丘陵地帯にすむ焼畑農耕民のことを指すのですが、アメリカの人類学者ジェームズ・C・スコットは、2009年に刊行された『ゾミア』(邦訳は2013年)において、これまでは単に文明的に遅れた人たちと見られていた彼らが、実は国家の管理から逃れるために自主的に定住農耕を放棄したのだという見方を提示しました。 
 
ゾミアの核心部はミャンマーのシャン州というところで、ここは実際に国家の管理下に入ったことがないのだそうです。その州内州であるワ州にいるワ人というのはいわゆる首狩り族で、周りの民族は危険視して近づかなかったそうですが、今もミャンマーの一部ということにはなっているけれど、ワ州連合軍という武装勢力が実効支配しています。 
 
そして驚くことに、彼らは中国語をしゃべる人たちで、中国からきたならず者だったり商売人だったりが集まってきて、勝手に州を運営している。むろん、中国の国籍からは離脱しています。そこに住んでいる純粋なワ人はもともとワ州で生まれてワ語を話す人たちなのですが、州運営の上層部に食い込んでいる人たちはみんな中国語を話すのだそうです。彼らは基本的に部族社会、厳密には家族よりも大きく部族よりも小さい血縁的な集団を意味する「氏族社会」で、これは近代的な国家とはあまり相性がよくない。こういう人たちが、いわゆる「ゾミア的な人たち」と言える訳です。 
 
これは結局、「文明やその象徴としての都市というのは誰のものか?」という問いかけとも深く関連してくるでしょう。すなわち、今日一般には文明とは国家のものというのが常識ですが、ゾミアの人たちはそうした常識を簡単には受け入れず、国家も文明を必要としなかった。むしろ、搾取を必然的に孕んでしまう国家と適切に距離をとり、対等に渡りあっていくための知恵や戦略を、粘り強く養っては実際にそれを行使してきたのです。 
 
4月17日に自分自身の星座であるてんびん座で満月を迎えていく今期のあなたもまた、この機会に何とどのように距離を取るべきか、改めて思案を巡らせてみるといいでしょう。 
 
 
参考:ジェームズ・C・スコット、佐藤仁監訳『ゾミア脱国家の世界史』(みすず書房) 
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<プロフィール>
慶應義塾大学哲学科卒。卒業後は某ベンチャーにて営業職を経て、現在西洋占星術師として活躍。英国占星術協会所属。古代哲学の研究を基礎とし、独自にカスタマイズした緻密かつ論理的なリーディングが持ち味。
文/SUGAR イラスト/チヤキ