12星座全体の運勢

「いっそヒラリと宙返り」 

夏のじめじめとした暑さと梅雨の不安定な天候との合わせ技で、服装選びに悩む衣替えの時期に入った5月30日には、ふたご座9度(数えで10度)で新月を迎えていきます。 

サビアンシンボルは「アクロバット飛行」であり、これは自然のもっとも基本的な働きである"重力”に逆らう力を象徴化した度数です。 

すなわち、年齢を重ねるごとに身体は老化し、体力は落ち、新しいことに挑戦する気概も失せ、心身ともに昔とった杵柄にすがりつき、なるべく現状を維持することに心血を注ごうとする傾向にあり、こうした“重力”はしばしば呪縛ともなってしまう訳ですが、今回の新月ではそうした当たり前のように人生にふりかかってくる呪縛を、いかに解き放っていけるかがテーマになっていくのだと言えます。 

さながら、梅雨の不快な空気感を吹き飛ばす「青嵐(あおあらし、せいらん)」という季語が、青葉を吹きわたる清らかな空気を意味するように、「この年齢ならば」「この立場ならば」こうなって、こうして当然という流れに反するようなアクションやチャレンジを取り入れ、停滞した人生状況に風穴をあけてみるのもアリでしょう。 

いずれにせよ、分かりやすいしがらみから思い切って離れ、地図にない未知の領域へと飛び込んでみることで得られる見晴らしは、あなたの人生をよりエキサイティングなものにしてくれるはず。 

とりわけ、剣の上を渡るとき、氷の上を行くときは。そぞろ歩きを諦めて、いっそヒラリと宙返り。今期はそんなアクロバットを決めていけるかどうかが問われていくでしょう。 
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獅子座(しし座)

今期のしし座のキーワードは、「偶然の共同体」。

獅子座のイラスト
一度でもネットで炎上した経験や、いわれなき非難の集中砲火を浴びたことのある人であれば分かると思うのですが、そうして「世間」や「みんな」から追放された者にとって、最も支えとなり、したがって、大事にしようと思うようになる存在は家族なのではないでしょうか。 
 
というより、いったん社会がその攻撃的・暴力的側面を露わにすると、ほとんどの関係性は切れてしまい、逆に切ろうにも簡単には切れずに残ってしまうのが家族でもある訳ですが、一方で家族というと、現代ではむしろ旧来的な制度の象徴として「古臭いもの」、「面倒なしがらみ」として語られることの方が多いように思います。 
 
これは逆に言えば、現代社会においては、最も身近な他者としての「家族」をいかに傷つけず、それでいてこちらも我慢しない絶妙な塩梅で関わっていけるか、ということがますます問われてきているのだとも言えるのではないでしょうか。ここで、そうした「家族」ということについて大変ラジカルな議論をしている東浩紀と高橋源一郎の対談の一部を引用してみたいと思います。 
 
高橋 東さんは「家族」の本質を偶有性に置いています。男女が出会うのはもちろん、子どもが生まれることも偶然にすぎない。養子やLGBTのような同性カップルも含めれば、偶然性はさらに広がる。ところが東さんは同時に、家族はそうした偶然なものでありながら、愛というエモーションで結ばれ、持続性を持っているとも語っています。(……)つまり東さんは家族を「新しい組織論」として提出しているのだと思います。ただ、その具体的なあり方がいまいち見えないのですが、どんなものを想像しているのでしょう。 
東 (……)いまなら是枝裕和監督の『万引き家族』(2018)を思い浮べるとわかりやすいと思います。『万引き家族』の六人について、観客は彼らを感覚的に「家族」と呼びたくなります。けれどもこの六人を結びつける根拠は、じつは偶然いっしょにいたということ以外にない。こうした偶然の共同体に可能性があると思っています。 
 そこで鍵になるのは「類似性」です。『万引き家族』の六人が家族に見えるのは、ひとことで言えば彼らがどこか「たがいに似ている」からです。そのような類似性について、『観光客の哲学』では、ウィトゲンシュタインの「家族的類似性」という言葉で説明しています。この表現で重要なのは、家族が類似性にもとづいているというよりも、むしろわれわれが、類似そのものを家族の比喩でしか捉えられないということのほうです。「なにかとなにかが似ている」というのは、とてもふしぎな直感的な判断です。それはときに論理を超えることがある。そしてそういうとき、人間はそれを「家族」と捉える。ぼくはそこに注目しています。「似ている」という基準はあいまいで、いくらでも柔軟に拡張でき、ひとはどんどんそれに対応していくことができる。だからその性質を利用して共同体をつくればいい。」 
 
その意味で、5月30日にしし座から数えて「ネットワーク」を意味する11番目のふたご座で新月を迎えていく今期のあなたもまた、「家族」という概念をいかにアップデートしていけるかどうか問われていくことになりそうです。 
 
 
参考:東浩紀ほか『新対話篇』(株式会社ゲンロン) 
12星座占い<5/29~6/11>まとめはこちら
<プロフィール>
慶應義塾大学哲学科卒。卒業後は某ベンチャーにて営業職を経て、現在西洋占星術師として活躍。英国占星術協会所属。古代哲学の研究を基礎とし、独自にカスタマイズした緻密かつ論理的なリーディングが持ち味。
文/SUGAR イラスト/チヤキ