20代の「投資のお悩み」相談所

20代が気になる投資のアレコレ。悩みや疑問を人気ファイナンシャルプランナーの高山一恵さんに聞いてみた! NISAとiDeCoの最新情報から老後資金の目安まで、投資初心者が参考にしたい情報をまとめてお届けします。

教えてくれるのは……

ファイナンシャルプランナー
高山一恵さん

女性向けFPオフィスを立ち上げ後、現在は『Money&You』の取締役を務める。女性の人生に不可欠なお金の知識を幅広いメディアで発信。女性誌のマネー企画にも引っぱりだこな、人気ファイナンシャルプランナー

NISAとiDeCoのお悩みにアンサー

Q. NISAとiDeCoのメリット、デメリットを教えてください

NISAは運用益に税金がかからないお手軽投資。iDeCoは収入の手取りがアップ!
NISAのメリットは、本来投資の運用益にかかるはずの20.315%の税金が非課税になること。生涯の投資枠は1人1800万円。売却した投資枠は元本ベースで翌年には復活し、また投資できます。デメリットは、複数の口座で出た損益を合わせたり、損失を翌年以降の利益から差し引くことができない点。一方のiDeCoは運用益に税金がかからないだけでなく、払った額が所得控除の対象になり、翌年の税金が安くなるメリットが。デメリットは60歳にならないと引き出せないこと、口座管理などに手数料がかかることが挙げられます」

 NISAのメリット 
・運用益非課税
・クレカ投資ができる
・口座開設・管理手数料がない
・いつでも売却できる
・運用しながら取り崩せる
・100円から投資できる

 NISAのデメリット 
・損益通算、繰越控除ができない
・スイッチングができない
・海外で利用しづらい

 iDeCoのメリット 
・所得控除ができる
・運用益が非課税
・強制的に老後資金が貯まる
・元本確保型の選択肢がある

 iDeCoのデメリット 
・60歳まで引き出せない
・口座開設・管理に手数料がかかる
・損益通算、繰越控除ができない
・最低投資金額が高い
・払い出しに課税

Q. 20代はNISAとiDeCoのどちらを優先して始めるべき?

NISAとiDECOで悩む女性のイラスト

20代は引き出し制限のないNISAから。余裕がある人はNISAとiDeCoの併用もアリ
「NISAとiDeCo、どちらを優先するかの判断は、まず年齢で考えるのがいちばん。海外への留学や結婚、出産などライフイベントが控えている可能性がある20〜30代であれば、お金が必要になったらすぐに引き出せるNISAを優先しましょう。iDeCoは60歳まで引き出せませんが節税効果は抜群。40代以降になったらスタートして、老後資金を貯めるのが理想。とはいえ20〜30代でも年収が高く、投資に回せる資金が月5万円を超えている場合は、iDeCoの併用も考えましょう」

Q. NISAで積立投資をしています。お金が必要になったらいつでも引き出していいのでしょうか?

もちろんOK。定期的に引き出して投資のお得感を実感するのも賢い方法!
「せっかく積み立てたのに使っていいの? と心配する人も多いのですが、いつ引き出しても大丈夫。60歳まで引き出せないiDeCoと違ってお金が固定されないため、大きなお金が必要な時も対応できます。ただ長く持つほど増える効果があるので、なるべく少額にとどめたいところ。年に一回、利益分の10万円程度を引き出して、旅行や家電購入に使う人も。投資の楽しみが増す賢いアイデアです」

Q. NISAの「つみたて投資枠」と「成長投資枠」のどちらを使えばいいかわかりません

まずは長期・積立・分散の「つみたて投資枠」。+αで興味がある会社の株を買っても◎
まずは『つみたて投資枠』から始めましょう。投資できるのは金融庁の一定の基準を満たした投資信託やETF(上場投資信託)のみで、長期、積立、分散でコツコツ増やせます。ただ『成長投資枠』も使わない手はないですよね。『つみたて投資枠』の対象外となっている投資信託や個別株など、幅広い金融商品に投資ができ、自分で調べて株を買うことでマネーセンスを磨く勉強にもなるはず。1株から買えるところもあるので、気になる会社から買ってみるのもおすすめ」

Q. 30歳の時にNISAでどれだけ貯めているとよいかの目標金額の目安はありますか?

20代が抱える“投資のギモン”に人気FPの画像_2

ライフイベントにかかる費用は「日本FP協会」の公式サイトでCHECK!
jafp.or.jp/

まずは年収分を目標に投資にチャレンジを。ライフイベントに合わせて金額を決めても
「30歳であれば、まずは年収分を目指したいところです。手取りの2割を5年間貯めると年収分が貯まります。新卒で会社に入って、最初はお給料も控えめなので貯めづらいかもしれませんが、30歳くらいまでには年収分になる頃。1年分の収入があれば、さまざまなことに対応できます。そのほか、結婚費用として100万円を貯めたいなど、ライフイベントに合わせた目標金額を設定するのも建設的。人生でかかる金額の目安を関連サイトで調べておくと参考になります」

Q. 昨年夏の暴落時に怖くなりNISAをすべて売却してしまいました。慌てずに投資を続けるうえで必要なことを教えてください

闇の時代は長くは続かない! 市場はいつも回復してきたことを知っておきましょう
「リーマンショックやコロナショックのように、株価が暴落した時はどのくらいの期間で復活したかを知っておくことが重要。長くても6年、ウクライナ侵攻による影響は1年、コロナショックは半年くらいで回復しています。国も企業も学んできているので、回復までの期間が短くなってきている印象が。過去の事例から闇の時代はそう長く続かないと知っておくと、慌てずにすむようになるはず」

Q. 企業型DC(企業型確定拠出年金)はNISAに比べて魅力的な銘柄が少ない印象です。それでも拠出したほうがいいですか?

「iDeCoナビ」サイト画面

詳しく知るには「iDeCoナビ」でリサーチ
dcnenkin.jp/

会社が手数料を代わりに払ってくれるお得な投資
「企業型確定拠出年金とは、会社が毎月一定の金額で掛け金を積み立て、従業員の年金を運用する制度。マッチング拠出であれば個人からの拠出も可能です。企業型DCの大きな魅力は、毎月の手数料を自分で払わなくてよい点。会社が代わりに払ってくれます。積み立てて運用したお金は、定年退職を迎える60歳以降に、退職金や年金の形で受け取れて、老後資金を増やすことができます。勤務先で取り入れていればぜひ挑戦したい、お得な制度」

Q. 昨年12月のiDeCoの制度改正ではどんなことが変わったのでしょうか?

公務員や、企業型DCを利用している人の掛け金の上限がアップ
「昨年12月の制度改正では、公務員や企業型DCに加入している人のiDeCoの掛け金の上限額が、月額1万2000円から月額2万円に増えました。ただ全員の上限が増えるわけではないので、厚生労働省や「iDeCoナビ」などの公式サイトで自分の拠出可能な金額を確認しましょう。そのほか、加入可能年齢の引き上げや、退職所得控除のルールの変更も。今後も制度の変更が生じると予測されるので、制度改正のニュースは逐一チェックしておくと安心です」

Q. iDeCoで自分の拠出可能な金額を知るためにはどこで調べればいいですか?

会社員の場合、職場の担当部署に直接確認するのが確実な方法
「iDeCoで拠出可能な金額は人によって異なります。まずは厚生労働省の公式サイトで確認しましょう。フリーランスの場合は月額6万8000円、専業主婦(夫)の場合は月額2万3000円と額が固定されていてわかりやすいのですが、会社員の場合、企業型DCがあるかどうかなどによって掛け金の条件が違ってきます。自分で調べてもよくわからない場合は、勤務先の担当部署に直接聞いてみるとよいでしょう」

投資のお悩みなんでもQ&A

Q.周りに「投資を始めないと損」と言われ焦っています。20代は投資をしたほうがいいのでしょうか?

複利の力

A. 早いうちに始めたほうが複利効果で資産が増えます
「若いうちから投資を始めたほうがいい一番の理由は、インフレで物価が上昇した時に対応できるから。近い将来、現金の価値が減っていくことへの対策として、投資は必要不可欠です。また、利息が利息を生んでさらに増える複利効果は、投資する期間が長くなればなるほど高まります。3カ月分の生活費が貯まったら、少額からでも始めてみましょう」

Q.毎月手取りの何割を投資に回すのがいいでしょうか?

A. 数千円程度から始めて手取りの2割を目指して
「3カ月〜半年分の貯金を手もとに残した状態であれば、手取りの2割を投資に回すのが理想です。ただ20代であれば、複利効果で資産を大きく増やせる可能性が高いNISAを、早いうちにスタートすることに意義があるので、月数千円、1万円程度でも十分。慣れてきて余裕が出てきたら額を増やしていきましょう」

Q.将来、年金が支給されるか不安です。老後のためにいくらお金があるといいですか?

A. ひとり1080万円必要。プラスαで余裕のある暮らしに
国が破綻しない限り、年金はもらえます。2017年の試算では老後資金はひとり2000万円必要、と言われていましたが、2025年現在の試算では若干減り、持ち家前提でひとり1080万円必要と言われています。ただこの額には介護費用は入っていません。追加でひとり500万円ほど用意すると安心

Q.産休育休や転職活動で一時的に収入が減ったタイミングでも投資を続けたほうがいいですか?

NISA ……翌月から変更可能
iDeCo ……1年に1回変更可能。運用のみも可能

A. NISAは少額でも継続、iDeCoは運用のみに変更
NISAは積立金額を減らしたり、ストップすることも可能。少額で続けても複利効果が維持できるので、無理のない金額で続けてもよいでしょう。iDeCoは掛け金を変えられるのが年1回。運用指図者になれば、掛け金の払込みはストップして、運用だけできるように。ただ休んでいる間も毎月の手数料などがかかることには注意しましょう」

Q.個人向け国債はリスクの少ない投資だと耳にしました。20代にもメリットのある投資ですか?

A. 5年以内に使う資金を貯めるのにうってつけ!
「個人向け国債は国が発行している債券で、信頼度が高い投資。発行から1年たてば元本割れせずに引き出せて使い勝手も◎。5年以内の使い道が決まっている資金用にも向いています。金利が上がってきている今なら、半年に一度利率が見直される変動10年がおすすめ。郵便局や銀行、証券会社で気軽に始められます」

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Illustration : CONYA Text : Emi Takamizawa ※MORE2025年春号掲載