12星座全体の運勢

「大きな物語に取り込まれていく」

6月21日の夏至の日の夕方16~18時にかけて、蟹座1度で部分日食(新月)が起こり、晴れていれば日本全国で欠けていく太陽が観測できます。これは日食と新月、そして一年のうち最も日が長くなる夏至が重なる特別なタイミングであり、時代の移り変わりの上でもひとつの節目となっていきそうです。そのキーワードは、「大きな物語」。これは例えば「むかしむかし、あるところに……」といった語りで始まる昔話のように、歴史ないし共同体のもつ空間的・時間的射程の中に自らを位置づけ直していくことで、個人として好き勝手に振る舞う自由を失う代わりに、手で触れられる夢のような生々しい物語の中へと取りこまれていく。今季はそんな"クラい”感覚の極致をぜひ味わっていきたいところです。

山羊座(やぎ座)

今週のやぎ座のキーワードは、「縁の不思議」。

山羊座のイラスト
粘菌類の研究で知られる自然科学者にして、民俗学の著作を無数に持ち、柳田國男から「日本人の可能性の極限」と称された南方熊楠(みなかたくまぐす)は、生涯にわたり在野の人であり、何より独学の人でしたが、彼には自分の思想上の問題を全力で遠慮なく投げかけ合える相手が一人だけいました。

それが熊楠が27歳の時にロンドンで出会った真言僧の土宜法龍(ときほうりゅう)であり、彼は明治期における最も開明的な仏教学者にして、後に高野山管長も務めた大人物でした。

彼らは科学と宗教という立場や分野の違いも超え(ついでに歳も土宜が13歳年上)、じつに死が二人を分つまでの30年間にわたって膨大な量の書簡を定期的に送り合い、そのどれもが大論文のごとき長さと密度であったそうで、その様子について、熊楠はのちにこう書いています。

小生は件の土岐師への状を認むる(したたむる)ためには、一状に昼夜兼ねて眠りを省き二週間もかかりしことあり。何を書いたか今は覚えねど、これがために自分の学問、灼然と上達しおり候

熊楠は人智を超えた不思議や縁の論理についてこそ、いま学問をやる人は研究せねばならないとも手紙に書いていましたが、純粋な意味でのパートナーシップや何かに自分を全力でぶつけていくことがテーマとなっている今季のやぎ座にとって、彼らの姿を追うことは何よりの励みになるのではないでしょうか。


参考:中沢新一/編『南方マンダラ』(河出文庫)
12星座占い<6/14〜6/27>まとめはこちら
<プロフィール>
慶大哲学科卒。学生時代にユング心理学、新プラトン主義思想に出会い、2009年より占星術家として活動。現在はサビアンなど詩的占星術に関心がある。
文/SUGAR イラスト/チヤキ