ロバートキャンベルさんに聞く、同性婚のこと。「仕事や住まいを選ぶように、結婚だって自由に選べたほうがいい」
プライド月間の今こそ考えたい、同性婚のこと。
大切なパートナーと人生をともにしたいと思っても、法律的に「結婚」を認められない人たちがいる。自由に、そして平等に、結婚する・しないを「選べる」社会をつくるには……? LGBTQ+の権利を啓発する“プライド月間”の6月こそ、みんなで考えてみよう。
当事者が今考えていること。感じていることは?
現場ではどんなことが起こっていて、どんな悩みがあるの? 当事者たちに、“本当のこと”を教えてもらいました。
するかしないか選べる。それが人権の認められた社会
ニューヨーク市生まれ。日本文学研究者で専門は近世・近代日本文学。国文学研究資料館前館長や東京大学名誉教授を務め、テレビやラジオなど、さまざまなメディアでも活躍中
2017年に長く同棲していた同性パートナーとアメリカで結婚し、2018年に公表したキャンベルさんにとって、結婚とはどんなもの?
結婚が認められないと、社会の“部外者”になる現実
「結婚を決意したのは、幼い頃に別れた実父に再会したのがきっかけ。父が住むニューヨークでは12年前に同性婚が認められており、パートナーを紹介したところ、自然と結婚するようにすすめられました。日本に住む私たちは最初、『海外で結婚してもあまり意味がない』と思っていました。しかし、ある意味親孝行の気持ちで結婚を決めたんです。
結婚パーティーは父の家の大きな庭で。旧友、家族が集まり、テントやケーキを持ち寄る小さな会でしたが、とても美しい光景でした。何より、父や妹が喜んでくれたことがとてもうれしかった。そのあと、彼と結婚したことを公表すると、みんながすっと受け入れてくれ、関係性の曖昧さがなくなっていったんです。同性婚が認められていない社会で生きていると、いくら大切なパートナーや家族がいても“部外者”になってしまうことが多くあります。その結果、ほかの夫婦の話に共感を示すことがためらわれたり、思っても伝えられないことができてしまう。結婚を公表したことで、そのモヤモヤから解放されたのは、自分の人生においてかなり大きなトピックでした。またパートナーと法的に結ばれたことは、自分の心を少し強くしてくれました。それは、私が最近通っているピラティスに似ています。目に見えた効果はなくても、徐々にインナーマッスルが鍛えられ、ほかのスポーツや立ち仕事など意外な場面で支えになるのです。
同性婚が社会的に認められることは、当事者たちが人生のさまざまな困難に耐えるための基礎体力になると思っています。とはいえ、“結婚=幸せ”だと言いたいわけではありません。チョイスできないことが問題なのです。それぞれが自分にフィットする仕事や住まいを選ぶように、結婚だって自由に選べたほうがいい。選択可能なことこそ、人権が認められた状態だと考えています」
撮影/つぼいひろこ 取材・原文/衛藤理絵 ※MORE2023年7月号掲載