ハイスペック夫とセックスレスで離婚したMさんの話「幸せは相手にゆだねるものではない」【モア・リポート49後編】
1980年──、いまから約40年前。女性の「性」の本音を語る「モア・リポート」が誕生し、2017年までに延べ1万2千人を超える女性たちの性を見つめてきました。
そして、恋愛やセックスがいっそう多様化している現在。MORE世代の体験談を取材した新「モア・リポート」をお届けします!
“3高”男性とのハイスペ婚のリアル
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ーDATAー
水原さん(仮名)30代 /未婚/会社員
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高学歴・高収入・高身長、誰もが羨むハイスペックな男性と結婚した水原さん(30代/仮名)。しかし、結婚してすぐにセックスレスに悩み、次第に離婚を考えるようになります。▶︎▶︎前編はコチラ
結婚生活3年半で離婚を決意
友人たちが結婚、出産をしていたり、親から「孫の顔が見たい」と言われたり。そんな中、私はひとりベッドで眠りにつく。私が夫から女として求められることは一生ないかもしれないと、最終的に離婚を考えるようになったんです。(以下、水原さん)
――話し合いを重ねても溝は埋まらなかったのですね。
そうですね。最終的には夫に言いくるめられてしまうことが多かったです。もしかしたら私がたまに感情的になって、言い合いをすればよかったのかもと思います。
私はグッと自分の感情を飲み込んでしまう性格だったので、なかなか本音で話し合うことができなかったのかもしれません。
それに、はたから見れば私はハイスペ男性と結婚し幸せな生活を送っているように見えたと思います。周囲から「素敵な旦那さんでいいなあ」と言われるたび、本音を言えず、お酒に走ってしまうことも増えました。
大黒摩季さんの楽曲『別れましょう私から消えましょうあなたから』を聴いてひとり号泣することもありましたね。
最終的に、私から“離婚”の言葉を切り出しました。
すると、あっさり別れることが決まったんです。一度別れた時と同じで、夫は私を引き止めることはしませんでした。
結局好きだったのは私だけだったんじゃないか、とすごく悲しい気持ちになりましたね。
離婚が決まった日、家に帰って大号泣しました。夫の前でこんなに取り乱して泣いたのは、この日が最初で最後だったと思います。
この時、29歳。しばらく落ち込む日々が続きましたが、「次こそ素敵な結婚をするぞ!」と心に決めて婚活を開始しました。
時間の余裕もできたので、仕事にも今まで以上に力を入れるようになりましたね。
離婚後の婚活で大変だったこと
――婚活はどのようにはじめたのですか?
マッチングアプリです。
離婚しているからモテない、ということはなかったです。むしろびっくりするくらい色々な人からアプローチがあり、ありがたかったですね。
――結婚生活の経験が婚活でも生かされたのですね。
そうですね。家事も完璧にこなせるようになっていたし、いつも元夫の話を聞く側だったので、会話を盛り上げることもできたんです。そういうところは元夫に感謝しています(笑)。
アプリを始めてすぐ、交際を申し込まれることが何度かありましたが、すぐに別れるケースも多かったですね。
――それはなぜですか?
多分、私の恋愛経験が少なかったからだと思います。
私は元夫に20代すべてを捧げていたので、男性を見る目がなかったのかもしれません。最初はなぜか、自然と元夫に似た人を好きになる傾向にありました。
4ヶ月同棲した男性がいて、彼の年収は2000万ほどありました。この人もいわゆる“ハイスペ”だと思うのですが、同棲してから夫と同じような一面が垣間見えました。
友人に彼の話をすると「その彼、あなたの元夫と一緒でモラハラだよ」と言われたんです。それまで、自分ではその彼も元夫もモラハラだと思ったことはありませんでした。
――婚活をする中で、男性を見る目も培っていったのですね。
そうかもしれません。婚活をする中で自分の男性のタイプも変化していきましたね。
離婚の原因をいうと「性欲の強い人」だと決めつけられる
――離婚後の婚活で大変なことはありましたか?
あります。仲良くなった男性に「離婚した原因は何なの?」と聞かれることがあって。嘘をつくのは嫌なので「一番の原因はセックスレスかな」と正直に答えていたんです。
するとどういうことが起きるかというと、すぐにホテルや家に誘われるんです。
私は性欲よりも愛情表現としてのセックスを大切にしているのに、男性にセックスレスの話をする=性欲の強い女性、というイメージを持たれがちでした。
そんな単純なものじゃないんだよなと思いつつ、自身の離婚理由については言うタイミングを悩むようになりましたね。
29歳から32歳までに、50人以上の男性と会ったと思います。
ハイスペ婚からの離婚を振り返って思うこと
――“ハイスペ婚”に憧れる女性も多いと思います。自身の経験から結婚についてどう考えますか?
ハイスペ夫との離婚・その後の婚活を経験したことで、今の私は男性の年収やスペックなどに全く興味がなくなりました。
ハイスペだから「おごってくれるだろう」「贅沢をさせてくれるだろう」というのは幻想だと思います。もちろん最初はそうやって優しくしてくれるかもしれないけれど。
お金を持っていても、私のように生活費を完全に6:4に分けるとしたら、多くの女性が思い描いている“ハイスペ婚”とは大きくかけ離れていると思います。
結婚した時、私は周囲から「あんなハイスペと結婚して幸せだね!」「羨ましい!」と言われることは多かったのですが、私は全然幸せじゃなかった。
だから、相手のスペックで自分の幸せが決まることは絶対にないと思います。
――自分の幸せを人にゆだねるのは危険ということですね。
そうですね。25歳で彼と結婚したいと考えていた時は、仕事を辞めたい=結婚するしかない、と思っていたので、結婚=逃げだったんだと思います。
もしあの時、仕事をやめて結婚していたら私は夫と離婚できていなかったかもしれない。そう考えると、あの時転職したのは正解だったなと思います。
――現在の生活はどうですか?
今は”自分のやりたいこと”を精一杯楽しんでいます。
仕事も順調で、業務で求められることも増えました。趣味の絵にも力を入れるようになって、いつか個展を開きたいという夢もあります。
そんな中、今の彼に出会いました。元夫とは真逆の、穏やかで私の夢を応援してくれる人です。
幸せは相手にゆだねるものではなく、自分の中にあると思います。
今、とても幸せです。
取材・文/毒島サチコ