1980年──、いまから約40年前。女性の「性」の本音を語る「モア・リポート」が誕生し、2017年までに延べ1万2千人を超える女性たちの性を見つめてきました。

そして、恋愛やセックスがいっそう多様化している現在。20代、30代の体験談を取材した新「モア・リポート」をお届けします!

恋人を追いかけて知らない土地へ引っ越し……後からわかった豹変ぶり

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ーDATAー

森田さん(仮名)25歳 /会社員/既婚

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「好きな人がいる」実家を飛び出して恋人のもとへ

優しい恋人がお酒を飲むと豹変。心身ともにの画像_1

――恋人を追いかけて実家を飛び出した経験がある?

はい、大学卒業とともに東京の実家を飛び出し、兵庫に住むヨウスケ(仮名/37歳)のもとへ行きました。(森田さん、以下同)

――家族は反対しなかったのですか?

大反対でしたね。「ヨウスケと結婚したいから大阪へ行く!」と言ったのですが、親はなかなか納得してくれませんでした。テレビ電話でヨウスケを紹介したりもしたのですが......。

最終的にしぶしぶ送り出してくれた、という感じでした。

15歳年上の彼に「大人の男性っていいなぁ」と思った

優しい恋人がお酒を飲むと豹変。心身ともにの画像_2

――ヨウスケさんと森田さんはどうやって出会ったのでしょうか?

私は大学生の時、私はニコ生(※ニコニコ生放送)をやっていて。私の配信をヨウスケが頻繁に見にきてくれたんです。当時私は22歳。ヨウスケは36歳。年齢差があったけど、彼と配信で話すうちに「人生経験も豊富で大人の男性っていいなぁ」と思うようになりました。

それからしばらくたった大学4年生の春、ヨウスケから「兵庫に遊びきて!」と言われたんです。それまで私はひとりで旅行をしたこともなかったんですけど、ヨウスケに会いたくて、ひとりで夜行バスに乗って大阪に行きました。

実際にヨウスケに会って話してみると、想像通りの素敵な人でした。すぐに意気投合して、その日のうちに付き合い始めたんです。


――遠距離恋愛のはじまりですね。

そうですね。ヨウスケに会うために、夜行バスで東京と兵庫を行ったり来たりしていました。当時の私は、特にやりたい仕事もなかったので「とにかくヨウスケの近くにいる」ということが人生の目的になりました。

親に「自立したいから!」とたんかを切って実家を飛び出しましたが、今考えたら、全く自立しているとは言えないですね(笑)。


――兵庫でヨウスケさんと一緒に住むようになったのですか?

いいえ。ヨウスケは実家暮らしだったので、私は彼の家から20〜30分くらいのところに部屋を借りました。普段の彼はめちゃくちゃ優しかったです。私をまるで娘みたいに可愛がってくれましたね。

すぐに半同棲状態になり、「やっぱりこの人と結婚したいな」という思いが日に日に強くなりました。

就職も決まり、仕事も恋も、順風満帆な新生活をスタートさせたんです。

いつもは優しい。でもお酒で豹変する

でも幸せな生活は長くは続きませんでした。

――何かきっかけになる出来事が起きたのですか?

ある日、会社の新入生歓迎会があったのですが、うっかり終電を逃してしまいました。飲酒しない先輩社員が車で来ていたので、私を含め終電を逃した数名を送ってくれました。時間は12時半くらいだったと思います。

帰宅途中、ヨウスケに連絡をするのを忘れていたのを思い出し、スマホを開きました。そしたら、ヨウスケからの不在着信が50件入っていたんです。

慌てて「終電逃しちゃったけど、上司に送ってもらってるから心配しないでね!」とLINEを打ちましたが、返信はなく。寝たのかなと思っていたのですが、帰宅すると、ヨウスケはまだ起きていました。

私が玄関のドアを開けた瞬間、お酒のにおいが部屋に充満していて、そこらじゅうに缶チューハイが転がっていました。

ヨウスケは部屋の中心に座っていて。私を見るなり「お前。そこに座れ」とドスの効いた声で言ったんです。

――それからどうなったんですか?

そこから3時間説教されました。次の日も仕事だったのですが、寝かせてくれなくて。でも終電を逃した私が悪いと思い、ひたすら謝っていましたね。

次の日になると、ヨウスケのほうから「昨日は言いすぎてごめんね」と謝ってきてくれました。

彼はお酒が入ると、人格が変わるのだと、この時はじめて気づいたんです。

優しい恋人がお酒を飲むと豹変。心身ともにの画像_3

24歳、彼との関係に悩む日々

――その後も、ヨウスケさんの酒癖の悪さは続いたのですか?

そうですね。お酒を飲むと、暴言を吐くことが増えるんです。それもあって私はずっと寝不足でした。

――ヨウスケさんは何かストレスを抱えていたのでしょうか?

当時ヨウスケは、フリーのシステムエンジニアの仕事をしていました。派遣でいくつかの会社で働いていて、自分より年下の社員に指図されるのがストレスだ、というのはよく言っていましたね。

でも仕事だから我慢するしかない。そのストレスを発散するためにお酒を飲んで、私に八つ当たりをする、という負のループができていたような気がします。

私は次第に「ヨウスケと離れなきゃ」という気持ちになっていきました。でも、離れるのは難しく。

――離れられなかったのはなぜですか?

「自立したいから!」と言って家を飛び出した手前、家族を頼ることもできなかったんです。同時に東京から遠く離れた土地で「彼がいなくなったら私ひとりになっちゃう」とも思っていました。

何より、別れを切り出したら、ヨウスケは激怒するんじゃないかと怖くて。

――その後も、付き合い続けた?

はい。「このままじゃいけない」と思いながらも別れられず、そこから1年付き合いましたが、心身ともに限界に近づいてきていて。別れるきっかけを探していました。

突然、彼が「家を買った」と言い出して……!?

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そんなある日、ヨウスケが突然「家を買った」と言い出しました。

――ふたりで住むための家を買ったのですか?

そうなんです。何も聞いていなかったので、めちゃくちゃ驚きました。部屋は、古い木造アパートのような感じでしたね。ヨウスケは当然のように「そろそろ正式に実家を出ようと思っているんだよね」と。これはまずい! と思って、その時やっと別れを切り出したんです。

――彼はどんな反応でしたか?

案の定「家はどうするの!?」と彼は激怒しました。「私は欲しいとも言っていないし、相談もされてないよ」と言ったら「お前に人生狂わされた!」と。

でも、その後「分かった」と電話を切ったので、理解してくれたんだなと思ったんです。

それから深夜になって、泥酔した彼から「俺の実家にある荷物を今すぐ取りに来い!」と、電話がありました。その時のヨウスケがあまりに怖かったので、友達と電話をつなげたまま、彼の実家に向かいました。玄関の前につくと、ヨウスケはいませんでした。

玄関に敷き詰められた私の荷物を片付けながら「やっと終わった」と、どこかほっとした気持ちになりました。

――壮絶な別れでしたね。

そうですね。でも翌朝起きたら、30件くらい不在着信が入っていたんです。


――ヨウスケさんからですか?

いいえ、母からです。びっくりして折り返したら「大丈夫!? 今どこ!?」と焦った様子でした。

ヨウスケは母親宛に長文のメールを送り、そこには私に対する罵詈雑言が並んでいました。


――なぜヨウスケさんは森田さんの母親の連絡先を知っていたのですか?

一度母親が私を心配して兵庫に来たことがあって。その時にヨウスケに挨拶をして、連絡先を交換していたんです。だけどまさかこんなことになるとは思いもしませんでした。

壮絶な恋愛経験が今の結婚生活に生きている

――その後、どうなったのですか?

ヨウスケとはそれっきり関係を絶ち、会うことはなくなりました。今振り返ってみると、本当に壮絶な体験だったなと思います。

私はその後も兵庫で働き続け、職場で出会った今の夫と結婚しました。夫はこの話を知っていて「いつか自伝書きなよ~」なんて言ってきます(笑)。

――今のパートナーはどんな方ですか?

ヨウスケとは真逆の性格です。酒癖も悪くないし、とても穏やかな人。

20代前半の壮絶な体験は今の幸せにつながっているのかもしれません。

取材・文/毒島サチコ

ライター・インタビュアー
毒島サチコ

MORE世代の体験談を取材した「モア・リポート」担当のライター・インタビュアー。

現代を生きる女性のリアルな恋愛観やその背景にひそむ社会的な問題など、多角的な視点から“恋愛”を考察する。