大人の発達障害 。友人に裏切られ借金、20代男性がわかった向き合い方【モア・ボイス17・後編】
1980年──、いまから約40年前。女性の「性」の本音を語る「モア・リポート」が誕生し、延べ1万2千人を超える女性たちの性を見つめてきました。
そして多様性社会を生きる今、「モア・リポート」と並行して性別を問わずジェンダーレスに20・30代の体験談を取材し、彼らの恋愛やセックスの本音に迫る「モア・ボイス」の連載をお届けします!
大人になって気づいた発達障害。さまざまな体験を経た当事者がおすすめしたいこと
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ーDATAー
原田さん(仮名)28歳 /会社員/未婚/男性
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女性経験ゼロで、周囲から「童貞いじり」をされたことで、恋愛コンプレックスを抱えていた原田さん。24歳の時に、発達障害(自閉症スペクトラム障害)の診断を受けます。その後、恋活をはじめた原田さんですが、学生時代の友人に紹介された恋愛セミナーで借金を抱えることに……。
恋愛セミナーからビジネスの話に。
数少ない友人である彼の存在は、僕にとって心の支えでした。恋愛コンプレックスを抱えていることを話すと、彼は「実は僕も発達障害があるんだ」と打ち明けてくれてたんです。すっかり彼を信用した僕は、彼の紹介する恋愛セミナーに入りました。
――恋愛セミナーとはどんなものだったのですか?
友人に紹介された男性が主催する“モテるための極意”などを学ぶセミナーです。最初は無料でしたが、ある時男性から「もっと学ぶためには数十万円が必要だ」と言われたんです。
――高額な恋愛セミナーは怪しいですね。
僕もさすがに怪しいと思い、断りました。すると次は、友人からビジネスを一緒にしないかと話を持ち掛けられたんです。
――恋愛セミナーから、ビジネスの話に変わった?
そうです。客観的に見ればこの時点で「怪しいな」と思うのかもしれませんが、僕は彼を信用しきっていて、将来にも不安があったので、彼の話にのってしまいました。彼から言われるがままに、保険に加入したり、貴金属を購入したりしました。
それがすべて詐欺であることに気づいた時、数百万の借金を抱えていました。
――どうやって詐欺だと気づいたのですか?
ある時、母親が僕の不審な行動に気づき「それは詐欺よ」と、すぐに僕にやめるように言いました。
でも、その時にはすでに友人と連絡がつかず、彼から「後で返ってくる」と言われたお金は戻っていません。弁護士などの専門家に相談するも、証明する書類などがなかったため、泣き寝入りするしかないようでした。
結局残った借金は自身で返すことができなくて、母親に返済してもらうことになりました。本当に申し訳なかったです。
さらに同時期、マッチングアプリでもかなり課金していたんです……。恋愛に焦るがあまり、家族に迷惑をかけることになってしまいました。
支援センターに通うように
――その後、どうなりましたか?
自分には支援が必要だと考えて、発達障害者支援センターに通うことにしました。そこで、日常生活や仕事、人間関係などの支援を受けながら、今は生活しています。
――センターではどのような支援が受けられるのでしょうか。
専門の支援員さんから相談支援や就労支援などが受けられます。仕事に対して、人間関係はもちろん、何より続くかどうかが不安、といった僕の悩みにも寄り添ってくれています。金銭管理についての相談もしています。
――変化はありましたか?
ありました。専門的な支援を受けることで、自身の気持ちや行動にも変化が現れました。支援員の方は、仕事だけではなく、プライベートな悩みにも親身になって話を聞いてくださるので助かっています。
これがきっかけで、同じような障害を持つ方があつまるコミュニティにも積極的に参加するようになり、人間関係も広がりました。
実は、そこで出会った女性と昨年からおつきあいしているんです。
大切なのは、ありのままの自分を自分で受け入れること
――恋人ができたのですね!
はい。彼女にも発達障害があります。お互いの悩みを共有しながら、いい関係を築いています。今は彼女のことが好きすぎて、しょうがないです。
でも、今までのようにひとりよがりの気持ちが暴走しないように。週一ペースで会うようにしています。距離感を大切に、つきあいをつづけています。
――これからどうしていきたいですか?
今まで僕は、恋愛コンプレックスに悩んできました。発達障害と診断された後も、自身の障害を受け入れられず、マッチングアプリでは、発達障害であることを隠して、外見やプロフィールを取り繕っていました。恋愛セミナーで学んだのは、小手先の恋愛テクニックだけ。
一番大切なのは、ありのままの自分を自分で受け入れること、そして受け入れてくれる人の存在だと思います。
――今はありのままの自分で恋愛ができているんですね。
そうですね。今でこそ発達障害は広く認知されるようになりましたが、充分な支援や理解が得られず、悩んでいる人も多いと思います。悩んだら、早めに専門家に相談することをおすすめします。
僕を受け入れてくれた彼女とは今後もいいおつきあいをしていきたいです。
取材・文/毒島サチコ