1980年──、いまから約40年前。女性の「性」の本音を語る「モア・リポート」が誕生し、2017年までに延べ1万2千人を超える女性たちの性を見つめてきました。

そして、恋愛やセックスがいっそう多様化している現在。20代、30代の体験談を取材した新「モア・リポート」をお届けします!

推しはシチュ別にいるといい!? 「分散推し活」のススメ

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ーDATAー

後藤さん(仮名)30歳 / 職業:会社員

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30歳独身女子の夢女子遍歴

夢女子歴15年。現実の彼氏とうまくいくのの画像_1

――中学生から夢女子だった?(※夢女子:二次元キャラクターに恋をし、対象との恋愛関係を夢見て妄想する女性のこと。三次元の人物が対象となる場合もある)


はい。初恋はサッカー選手の三次元スタートです。夢小説も書いていました。(以下、後藤さん)


――夢小説とは何ですか?

「もし〇〇(推し)と付き合ったら……」といった妄想小説です。私が中学生だった当時、ケータイ小説が流行っていて、その波にのって自分も書いていました。小説内に自分の名前を入れることができるので、自分が物語の主人公になれるんです。

当時の私は男子と付き合った経験がなかったので「こういうデートがしたいな」という完全妄想で小説を書いていましたね。夢小説はホームページに掲載し、女友達と一緒に運営していました。


――どのようないきさつでサッカー選手に恋をしたのですか?

ホームページを一緒に運営していた女友達の影響です。元々サッカーに興味がなかったのですが、その子と会話したいがためにワールドカップを見るようになりました。ある時、ある選手をみて「うわー! かっこいい!」とひと目惚れ。

それからその選手が出ている新聞や雑誌を全部買って、ファイリングするようになりました。



――クラスメイトの男子には興味はなかった?

気になる男子はいました。でも、サッカー選手に対する圧倒的な好きと憧れに比べたら、全然気持ちの入り方が違いました。自分はモテるタイプではなかったし、「サッカー選手ともし付き合ったら……」と妄想しているほうがずっと楽しかったんです。



――その後のリアルな恋愛はどうでしたか?

大学に入ってから、付き合っていないけれど、もうすぐ付き合うだろうな……みたいな関係の人ができました。人間的にも信用していた男性だったのですが、その人とダメになってしまったんです。



――失恋してしまったのですね。

はい。人生初めての失恋でした。何も手につかない状況になって、恋愛に対してトラウマを抱えてしまいました。

大学時代の恋愛のトラウマから男性アイドルにハマって

夢女子歴15年。現実の彼氏とうまくいくのの画像_2

――失恋後、どうなりましたか?

サッカー選手を一緒に追いかけていた女友達が励ましてくれました。
そして、失恋の傷を癒すべく、「アイドルはいいぞ」と、次は某有名アイドル事務所をおススメされたんです。最初は「とうとう男性アイドルにいくのか……」と抵抗感もありましたが、友人の影響もありハマりました。



――誰が好きだったのですか?


タイプの違う3人のアイドルです。私は恋愛のトラウマから、ひとりにだけのめり込まないよう、推しを3人作っていました。あえて、推しを分散させていたんです。



――どのように分散させていたのですか?

たとえば、おしゃべりでダンスがうまいアイドル、知的でクールなアイドル、甘えん坊な年下アイドル、といった感じでキャラの違う推しを3人作ります。そうすることで、そのうちのひとりがいなくなったとしても、同じようなキャラの別のタレントを補充すればいい、という気持ちになれます(笑)。自分が傷つかないような推し方をしていましたね。



――それぞれ、まったく違うタイプのアイドルを推すのはなぜですか?

アイドルを自分の憧れた恋愛シチュエーションにあてはめて妄想したかったからです。夢小説を書いていた時のように、舞台が学校なら「このアイドルが先生だったら」「このアイドルが後輩だったら」と妄想したい。舞台が会社になったら「この人が会社の先輩だったら」「取引先だったら」と。さまざまなシチュエーションで妄想をしたいと望んでいたら、自然と推しの年齢や性格はばらけていました。

30歳、妄想が楽しい!

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――現在も、3人のアイドルを推しているのですか?

そうですね。夢女子は、サッカー選手の頃から換算して、かれこれ15年しています(笑)。友達と一緒なので、楽しいです。



――リアルな恋愛はしていますか?

最近になって、職場で出会った人と付き合うことになりました。



――その恋人にも、夢小説のようなデートを求めますか?

いいえ、夢女子としての自分と、リアルの自分は区別しています。推しは妄想するだけ。妄想の中だったら、めちゃくちゃ面倒くさいメンヘラ女子になることもできるし、ワガママも言いたい放題。でも現実でそれをしちゃったら、関係が破綻してしまいますから。



――では、恋人にはワガママは言わないのですか?

あまり言わないですね。恋人に不満もなくて、関係が良好なんです。それは私が妄想の中で、恋愛における“面倒な自分”を発散しているからかもしれないと、最近は思いますね。


――恋人はアイドルの追っかけをしていることを知っていますか?

はい。でも、私がここまで妄想していることは知らないと思います(笑)。


――今後も夢女子を続けていきますか?

もちろんです。女友達とは15年来の夢女子仲間でお互い30歳になりました。
今後ライフスタイルが変化しても、毎年推しのコンサートに行って、前泊のホテルのエレベーターで「推しが乗ってきたらどうする!? キャー!」なんて妄想をし続けたいですね。

恋人や推しはいなくなるかもしれないけれど、女友達は一生ものですから。

取材・文/毒島サチコ

ライター・インタビュアー
毒島サチコ

MORE世代の体験談を取材した「モア・リポート」担当のライター・インタビュアー。

現代を生きる女性のリアルな恋愛観やその背景にひそむ社会的な問題など、多角的な視点から“恋愛”を考察する。