1980年──、いまから約40年前。女性の「性」の本音を語る「モア・リポート」が誕生し、2017年までに延べ1万2千人を超える女性たちの性を見つめてきました。

そして、恋愛やセックスがいっそう多様化している現在。20代、30代の体験談を取材した新「モア・リポート」をお届けします!

「お腹を痛めてこそ母になる」の声。無痛分娩は甘え?

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ーDATAー

片山さん(仮名) /31歳/会社員

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無痛分娩で出産した30代女性

無痛分娩はワガママ!? 実母から反対の声の画像_1

――先日お子さんを無痛分娩で出産した?

はい。無痛(和痛)分娩と呼ばれる方法で出産しました。無痛と言っても、痛みを完全に取り除くのではなく、痛みを和らげる麻酔を使った分娩方法です。(以下、片山さん)


――なぜ、無痛分娩を選択したのですか?

仲のいい友人が無痛分娩で出産していたからです。それに無痛分娩は産後の回復が早いと聞き、産後すぐにはじまる育児のための体力を取っておきたいなと思いました。あとは正直、痛みが怖い……という気持ちもありましたね。


――経験された友人の影響が大きかったのですね。

そうですね。当初、無痛分娩はひとつしかないと思っていたんですけど、調べると無痛分娩には、主に計画無痛分娩と、和痛分娩があることを知りました。

私の友人の分娩方法は計画無痛分娩と言って、あらかじめ分娩する日を決めて、人工的にお産を始める分娩方法だったようで、私が選択した痛みをやわらげる和痛分娩とは方法が異なりました。

出産費用は100万円。都内での出産は費用のハードルが高かった

無痛分娩はワガママ!? 実母から反対の声の画像_2

――なぜ片山さんは無痛(和痛)分娩を選択したのですか?

それしか選択肢がなかったんです。私は東京在住ですが、地元での里帰り出産を希望していました。
しかし、私の地元では、計画無痛分娩ができる産院がなく、さらに無痛(和痛)分娩ができるところも車で30分ほどいったところにやっと一件あるのみという状況だったんです。


――東京での出産は考えなかったのですか?

一度東京での出産も検討して、東京で計画無痛分娩をしている施設を調べてみると、近所に入院中は完全個室の評判のいい産院がありました。

でも、費用を見てみると、100万円前後することがわかって……。出産一時金として国から50万円程度の補助があったとしても、自費で支払わなければいけない金額が多くてびっくりしましたね。


――地元のほうが出産費用の負担は少なかったのですか?

そうです。地元は、無痛(和痛)分娩しかありませんでしたが、一時金でほとんどまかなえる金額でした。出産費用にこんなに地域差があることを知らなくて、驚きましたね。最終的にやっぱり地元で出産しようと、里帰りの日取りを決めて家族に報告しました。

無痛分娩に反対。「お腹を痛めてこそ母になる」の声

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――里帰りを報告した時、家族はどのような反応でしたか?

母は妊娠を喜んでくれました。でも私が「無痛分娩で産むんだ」というと、顔をしかめて。「お腹を痛めてこそ母になるのよ。無痛分娩は甘えだし危険」と言われました。


――その時、どう思いましたか?

親世代には、まだまだ無痛分娩への抵抗があるんだと感じましたね。



――どうやって納得してもらったのですか?

「産むのは私だし!」という思いがあったので、納得してもらうというより自分で決めて勝手に進めた感じです。家族には友人が無痛分娩で産んだ話もしました。


――家族以外の周囲の反応はどうでしたか?

母に反対された時、友人たちに相談したんです。ほとんどが無痛分娩に対して「いいじゃん」という反応でしたが、友人のひとりは「無痛分娩は、子どものことを考えてないような気がして私はしたくない」という意見。それを聞いた時は「無痛分娩を選択するのは、母親のワガママなのかな」と少し悩みましたね。


――どういうところが「ワガママ」だと感じたのですか?

リスクがあるのに、無痛を選択することです。事前に産院の先生から副作用のことや、麻酔の影響で分娩時間が長くなることなどの説明がありました。分娩時間が長くなるということは、それだけ赤ちゃんに負担がかかるということですよね。

母や友人の言葉が頭をよぎり、少し悩みました。でも、やはり産後のことを考えて、私は無痛分娩を選択したんです。



――出産はどうでしたか?

無痛分娩といっても、まったく痛みがなくなるわけではなく、やっぱり陣痛は痛かったです。そして、無痛分娩のメリット・デメリットの両方を経験することになりました。

後編へ続く。無痛分娩のメリット・デメリット「リスクもあるけど、選択してよかった」

取材・文/毒島サチコ

ライター・インタビュアー
毒島サチコ

MORE世代の体験談を取材した「モア・リポート」担当のライター・インタビュアー。

現代を生きる女性のリアルな恋愛観やその背景にひそむ社会的な問題など、多角的な視点から“恋愛”を考察する。